生命三十六億年(3) 原生代〜真核生物の始まり〜

○長い長い原生代の時代

 始生代で生命が誕生してから現在のような目に見える複雑な生き物が誕生するには、約30億年の時間がかかりました。その間の時間の殆どは、今回取り上げる原生代と呼ばれます。なお、原生代の最後には2mを超えるような、大型の生命も誕生しています。そのような生命を生むための条件をそろえる時代であったとも言えるでしょう。

○真核生物の誕生

 大きな体を維持するためには、エネルギーがたくさん必要になります。そのエネルギー源となるのが、酸素です。この、酸素を利用し、さらに複雑な構造を持つ細胞が登場するようになるのが、原生代です。この複雑な細胞を持つ生物のことを、真核生物といい、膜で囲まれた核に、膜で囲まれた細胞小器官を持ち、その1つであるミトコンドリアによって酸素を利用します。

 この真核生物は、実は複数の生物が文字通り合体することによって出来た生き物だと考えられています。
 
 まず、膜で覆われた普通のバクテリアがいました。これは酸素を利用することが出来なかったのですが、酸素を利用するバクテリアを取り込むことによって、酸素を利用できるようになったものと考えられています。さらに、ほかの生き物を取り込んで、より複雑な真核生物になったものと考えられ、植物は光合成を行うバクテリアを取り込んだものです。

 これらの痕跡は今でもはっきりと残っています。例えばミトコンドリアの構造は、二重の膜となっています。膜の外側は、かつて宿主の外の膜が内側に入り込んだもの。内側の膜は、取り込まれたバクテリアがもともと持っていた膜というわけです。そして多細胞生物は、この真核生物が積み重なったようなものです。



細胞小器官の構造 (日本科学未来館にて)
細胞の様々な活動に必要なエネルギーのほとんどは、直接or間接的にミトコンドリアからATPの形で供給されます。
ATP=アデノシン三リン酸 (Adenosine TriPhosphate)

○多細胞生物

 この原生代は生物にとって大変厳しい時代でした。
 なんと、4回も地球全体が凍りつくことになったといわれる、いわゆるスノーボールアースに見舞われました。

 一方で、最初の超大陸であるヌーナが19億年前に出現し、さらに14億年前には超大陸ロディニアも形成され、この間に生物は様々な環境の変化に遭遇することになります。このような環境に影響されたのでしょうか。生物は真核生物がまず生まれ、さらにゆっくりとではありますが、多細胞生物が出現することになります。

 多細胞生物はその細胞の役割をそれぞれ機能によって変えていき、現代のような複雑な生物にどんどん近づいていきました。

○エディアカラ生物群

 さて1946年、オーストラリアの地質学者であるレッグ・スプリッグは、オーストラリア、アデレードの北方にあるエディアカラの丘陵(場所は下地図のあたり)で生物の化石を大量に発見しました。これは数少ない先カンブリア時代の生物の化石群と判明し、今でも大変重要な研究資料です。エディアカラ生物群によって、どのような生物が原生代にいたのか、その一端を知ることが出来ます。


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 研究の結果、原生代の終わり(新原生代エディアカラ紀 6億5000万年前〜)には多種多様な軟体動物がいたことがわかりました。これらの生物は目が無く、平べったい単純な形状をしています。また基本的には、身を守るようなものも持っておらず、堆積物や藻類を食べる大人しい生き物が多かったエディアカラ生物群ですが、エディアカラ紀後期には硬い殻を持つ生物が現れています。原生代の一番最後に、肉食動物が現れた証拠かもしれません。

 これらの生き物と現代の生き物の類縁関係は解っていません。


ディッキンソニア (国立科学博物館にて)
オーストラリアのエディアカラから発掘。海底に平べったく付着していたと考えられています。

カルニオディスクス (国立科学博物館にて)
チャルニオディスクスとも。オーストラリアのエディアカラから発掘。動物かどうかは解りません。
下の丸い部分を海底につけて、海藻のように立っていたものと考えられています。

○ドウシャントゥオ生物群

 中国湖北省のドウシャントゥオ層からは、藻類の葉状体(ようじょうたい)やアクリターク類(球状の微小生物)、そして発達途上の動物の胚化石たちが発掘されています(動物そのものは発掘されていません)。年代は5.7億年前で、エディアカラ生物群より古い化石として注目されています。
 

ディアオヤポリテス (国立科学博物館にて)

コングリンギフィトン (国立科学博物館にて)


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