恐竜・翼竜ガイド(7)鳥と恐竜の関係は?
○はじめに
様々な化石が発掘され、その研究が進んだことにより、近年では鳥類が恐竜から分化したものであろうことは、だいたい定説になってきました。しかし、なぜ鳥類が恐竜から分化したと言えるのでしょうか?今回は、改めて鳥類と恐竜の関係について、ご紹介したいと思います。
○最初から疑われていた関係
恐竜と鳥の関係が注目されたのは、始祖鳥の発見からです。始祖鳥は羽毛を持ちながら、爬虫類のような歯をもち、全体的にも恐竜のような骨格を持っています。このことに注目したトマス・ヘンリー・ハクスリー(1825〜95年)は、鳥の恐竜起源説を唱えていました。始祖鳥(アーケオプテリクス)
始祖鳥(アーケオプテリクス)復元モデル
しかしその後、「当時発見されていた」恐竜は鳥類のような鎖骨がないということから、鳥は恐竜の子孫ではないとされていきます。
ちなみに、このハクスリーという人物、ダーヴィンの進化論が発表された際に熱烈に擁護した人物で、「ダーウィンのブルドック」の異名を持っています。恐竜と鳥をつなげたのも、進化論の証拠として、進化過程の生物として始祖鳥をみなしていたからでしょう。
○鳥類、恐竜の息子になる
鳥類は恐竜から進化したという説が息を吹き返したのは、ジョン・オストロム(1928〜2005年)が1973年に、ドロマエオサウルス類のような鎖骨をもつ恐竜がいることを明らかにした時点です。ちなみに、ジョン・オストロムは、一部の恐竜は恒温性で活発な動物であったと結論付けた初めての研究者であり、恐竜観の変化に絶大な影響を与えた研究者の一人です。ウネンラギア
ドロマエオサウルス科に属し、学名は不完全な鳥という意味。
そして研究が進むと、恐竜の中でもドロマエオサウルス類と、鳥類との間に、以下のような共通項(共通の特徴)があることが明らかになりました。簡単にまとめると、こんな感じです。
@二足歩行 A三つ以上の仙骨を持つ (※腰のところにある背骨)
B左右がつながったV字型の鎖骨をもつ
C羽毛を持つ
D手は第一指〜第三指
※かつて鳥類の手は、第二指〜第四指であるとされてきましたが、東北大学教授田村氏のグループの研究により、第一指〜第三指であることがわかりました。
E手根骨(手首の骨)が半月形。手首を回転させることが出来る。
F恥骨が後方にのび、坐骨と並行になっている(※恐竜の中でも竜盤類との共通項)
G気嚢(きのう)と思われる、中空の骨が存在する(特にトロオドンと鳥類は頭骨にある)
さらに近年、中国より鳥類の祖先や親戚となるような羽毛恐竜が数多く発見され、鳥類は恐竜の子孫であるとほぼ認められるようになりました。分類の仕方(近年主流な分岐学的な分類だと)によっては、鳥類は恐竜の1グループとなります。
シノルニトサウルス
シノルニトサウルス復元モデル
○現在の鳥類の中には、恐竜とは無関係に鳥類に進化したものは無いのか?
では、多くの鳥類は恐竜の子孫だとしても、恐竜とは無関係に進化した鳥類はいるのでしょうか?
・・・答えは、Noです。
まず、生物は必ず、その祖先が持つ由来(特徴)を持ちます。
たとえば、人間でいえば、実は尾の跡が未だに残っています。この生物の形態というのは、進化の歴史を反映しています。さらに人間はそれを認識することができます。たとえば、同じヒレでも、クジラのヒレと魚のヒレは異なります。
人間は祖先である陸上脊椎動物の手のような骨があるのに対し、魚にはありません。同じ環境(水中)に同じ方法(ひれ)で適応しても、形態には祖先により必ず差異ができるのです。普通は、おなじ形態にはなりません。
同じように、空中に適応した鳥類には独自の特徴、翼や肺の構造、体の基本的な構造など、独自の特徴をもちます。これらは、祖先である恐竜から進化する際に引き継いだものです。これらの共通する特徴をたくさん持つ以上、鳥類は一つの祖先から生まれたと考えるのが自然です。
○結果的に同じ進化に行き着くことはないのか?
この前提条件として、収斂進化(しゅうれんしんか)についてご紹介したいと思います。例えば、空を飛ぶ動物がいます。体をよほど軽くしないかぎり、飛ぶ方法というのは限られています。そのうちの一つが翼です。この場合、空に適応する生物というのは、それが羽であれ翅であれ、皮膜であれ、翼をもつことになります。このように、違う祖先から進化した違う生物が、同じ環境に適応した結果、同じような形をもつこと、これを収斂進化と呼びます。
さて、確かに収斂進化の結果、異なる先祖を持ちながら、同じように空に適応した動物もいます。
コウモリ、と鳥の関係なんかがそうですね。でも、コウモリは鳥類とは決定的に異なっています。
例えば、コウモリは鳥類のような肺の構造(気嚢とよばれる袋がついた構造)をもちませんし、翼も羽でなく皮膜でできています、体の基本的な構造も違います。違う祖先から生まれた結果、鳥類ではない生物となっているわけです。
というわけで、鳥類の一部が別の祖先から進化しているという事は、無いと考えられます。