特集 セミの羽化を観察してみよう

○はじめに


 それは私が夏休みで実家に帰省していたある日のこと。祖母が庭でアブラゼミの幼虫を見つけたと言って持ってきました。地上を歩いていたと言うことは、羽化直前。セミの羽化は田舎育ちの私でも見たことのない光景でした。ならば最初から最後までキッチリ撮影するしかあるまい!と、部屋の網戸で羽化させることにしました。とは言え、上手く最後まで行ってくれるのか?ヒヤヒヤものの観察です。
(解説&撮影:リン)   
 ※なお、夏休みの自由研究には写真を転用しないでくださいね!(by所長)

○では、観察です

 セミの羽化というのは夜、つまり暗い中で行われるもの。しかし部屋の中では電気がずっと点けっぱなしのため、昼と勘違いして羽化しないことが考えられました。

 そこで、カーテンを閉めて暗くし、撮影時のみLEDライトで照らして撮影する方法を取りました。カメラのフラッシュでも良かったのですが、マクロ撮影のためフラッシュを焚くとレンズの影が被るということでこのような状態でした。


18:30
網戸に取付完了。しばらく動いていましたが、やがて動かなくなりました。なお、一番上の写真を見ていただきたいのですが、土を掘るのに適した立派な前脚は成虫とは似ても似つかないものですが、既に羽となる部分は幼虫の段階で形成されています。

19:30
背中が割れ、白い体が見えてきました。

19:50
胸部に続いて頭部が出て来ました。腹部はまだ殻の中に残ったまま、上半身だけが出て来ます。

20:10
腹部で全体重を支え、のけ反るような体勢に。これは脚を乾燥させて固くするため。また、羽もくしゃくしゃの状態から次第に広がっていきます。

20:30
くしゃくしゃだった羽がまっすぐ伸びました。図鑑などで良く見られる、色の白い成虫といった状態です。ナマで見ると本当に綺麗です。

20:30
くしゃくしゃだった羽がまっすぐ伸びました。図鑑などで良く見られる、色の白い成虫といった状態です。ナマで見ると本当に綺麗です。

21:45
1時間もするとだんだんと色が着いてきました。

0:10
日付が変わった直後。羽化が始まってから5時間弱でほぼ成虫の姿になりました。ほんのちょっと色が薄いようですが…。

翌朝
室内の網戸から屋外のすだれに移動させられていました。もうすっかり完全な成虫です。このあとすぐに飛び去っていきました。羽化直後はオスメスとも鳴かないとのことでこの個体も静かに飛んでいきました。

そして残された抜け殻。

○おわりに

 昆虫の生態をこれほど眺めたのは小学校以来でしたが、なんとも神秘的な姿はいつ見ても感動モノです。よく夕方の神社の周りの木を調べると見つかる、とも言いますので夏休みの自由研究に困ったら探してみてはいかがでしょうか。

 なお、今回は拾ってきたというところから話が始まっていますが、そのような移動がもとで羽化に失敗することもあるらしいので可能なら見つけてもそっとしておいた方がいいとか。できることなら自然の姿で観察したいですしね。

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