ドイツ語データ編(3) 前置詞表

○2格支配の前置詞

 2格支配の前置詞はたくさんあり、ほとんどが同じ形の名詞を持ちます。これはこういった前置詞が名詞から派生したためで、例えばanfangs dieses Jahres「今年初めに」だとder Anfang dieses Jahres「今年の初め」から来ているから名詞は2格を取るのです。
 2格支配の前置詞は文語的で、堅苦しさがつきまといます。あまり日常会話では使いません。
 なお、2格の代わりにvon+3格を使うこともできます。
 語源が前置詞+名詞の場合(例えばanhand)、前置詞と名詞を分かち書きすることも可能です(an Handのように)。


前置詞意味語源備考
abseits〜から遠く離れてAbseite(女)裏側
abzüglich〜抜きでAbzug(男)除外、控除
anfangs初めにAnfang(男)始まり
angesichts〜に直面してAngesicht(中)顔、表情
anhand〜に基づいてan Hand 〜という手を使って
anlässlich〜の機会にAnlass(男)動機、機会
anstatt〜の代わりにan Statt 立場で分かち書き不可
aufgrund〜という理由でauf Grund 〜の基礎の上で
ausschließlich〜抜きでausschließen 除外する
außerhalb〜の外側でaußer-halb 外側
beiderseits〜の両側でbeider-Seite 両側
betreffs〜に関してBetreff(男)関係
bezüglich〜に関してBezug(男)カバー、関連
diesseits〜のこちら側でdies-Seite こちら側
einschließlich〜を含めてeinschließen 含む
exklusive〜ぬきでexklusiv 排他的な
halber〜のためにhalber 途中で常に後置
hinsichtlich〜に関してHinsicht(女)関係、観点
infolge〜という理由でin Folge 〜という順番、結果で分かち書き不可
inklusive〜込みでinklusive 含めて後置されることもある
inmitten〜の真ん中でin Mitte 〜の真ん中で分かち書き不可
innerhalb〜の内側でinner-halb 内側
jenseits〜のむこう側でjen(e)-Seite むこう側
kraft〜の力で(in) Kraft 〜の力で
längs〜に沿ってLänge(女)長さ
laut〜の見方に依れば(nach dem) Laut 〜の声によれば
links〜の左岸でlink 左側の
mangels〜が不足しているためMangel(男)不足、欠乏
minus〜を引いてminus マイナス
mithilfe〜を使ってmit Hilfe 〜の助けを得て
mittels〜を用いてMittel(中)手段
namens〜の名でName(男)名前
nördlich〜の北でNord(男)北
ob〜が原因でob 上側で(古語、oberやauf、überの語源)
oberhalb〜の上流側でober-halb 上流側
östlich〜の東でOst(男)東
plus〜を加えてplus プラス
rechts〜の右岸でrecht 右側の
rücksichtlich〜を考慮してRücksicht(女)思いやり
seitens〜の側からSeite(女)側面
seitwärts〜の脇でseitwärts 脇へ、脇で
statt〜の代わりにStatt(女)場所
südlich〜の南でSüd(男)南
trotz〜にもかかわらずTrotz(男)反抗
um 〜 willen〜のためにum Willen 意志をめぐってumとwillenの間に2格の名詞を挟む
unbeschadet〜にもかかわらず後置されることもある
unfern〜から遠くないところでun-fern 遠くない
ungeachtet〜にもかかわらずachten 尊重する後置されることもある
unterhalb〜の下流側でunter-halb 下流側
unweit〜から遠くないところでun-weit 遠くない
vermittels〜に依ってVermitteln(中)媒介vermittelnは動詞の不定詞
vermöge〜のおかげで(nach) Vermögen 〜の力、財産によって
vonseiten〜としてvon Seite 〜という側面から
vorbehaltlich〜を条件にVorbehalt(男)留保、条件
wärend(期間)〜の間にwären 持続する
wegen〜のためにWeg(男)道、方法
westlich〜の西でWest(男)西
zugunsten〜に有利になるようにzu Gunsten 〜の利益のために
zulasten〜の負担でzu Lasten 〜の重荷に
zuseiten〜の傍らでzu Seite 〜の側で
zuungunsten〜に不利になるようにzu Ungunsten 〜の不利益のために
zuzüglich〜を含めてZuzug(男)移住、流入
zwecks〜の目的でZweck(男)目的

○3格支配の前置詞

 ここでは3格のみを支配する前置詞を挙げます。3格と4格の両方を支配する前置詞は3・4格支配の前置詞をご覧下さい。

前置詞意味備考
ab出発点、開始点〜から場所・時間ともに用いる
aus脱出〜の中から外へ内側から外へ離れる移動を表す
所属〜の〜の中から現れた、〜出身の、という意味から
素材〜から変化前の状態を表す
理由、根拠〜のため現象の発生元なので
außer除外〜以外に
追加〜の他に今挙げたもの以外にも、という意味から追加を表す
bei近接〜のそばで空間的に近いことを表す
範囲〜のところで、〜については抽象的に近いこと、あるいはある程度の広さのぼんやりした範囲を示す
同時〜頃に時間的に近いことを表す
機会〜の際に時間的にある程度の広さの範囲を示す
認容〜とはいえallを伴い、「全ての〜をふくんでも、それでも」という意味
binnen範囲〜以内に未来の期限を表す
dank授益〜のおかげで
entgegen反対〜に反して
entsprechend随伴〜に従って
fern遠距離〜から遠く離れて書き言葉
gegenüber向かい〜の向かいに空間的に向き合っていることを表す
比較対象〜と比べて向かい合わせて比較する感じ
対応〜に対して行為の対象を表す
gemäß随伴〜に従って書き言葉、後置が普通
getrau追従〜通りに後置も可能
gleich様態〜のように後置も可能
mit付随〜とともに従属物やともに行う人物を表す
手段〜を使って
付帯状況〜とともに文に付随して起こる状況、文の結果を表す。mitが訳に現れないことが多い
発生時〜のときに時間に転用
mitsamt随伴〜を連れて
nach方向〜へ向かう先を表す
後発〜のあとで目的の後に従うイメージから時間的に後であることを表す
基準〜に従って先にある基準の方に向かうように、という意味
根拠〜から考えれば先にある根拠に従って、という意味
nächst次発〜の次に書き言葉
nahe近隣〜の近くに書き言葉
nebst併存〜とともに書き言葉
samt付随〜とともに
seit開始点〜以来その時点から今まで、という意味
期間〜間時間を表す名詞を取り、今まで○○の期間という意味
von出発点〜から空間・時間ともに用いる
動作主〜によってその動作の起点となった人物を表す
原因〜のためにその動作の起点となった物事を表す
所有〜の出発点=出身地=所有主という考え方から。2格の代わりとして用いる
全体〜から話題となっている部分の発生する素となったので
話題〜について話の出てくる素を表す
離脱〜から離れて
依存元〜で支援の出発点を表す
zu行き先〜へ
到達点〜へ抽象的に行為の行き着く先を示す
時期〜(まで)に時期の限定を表すことが多いが、単に時点を表すこともある
比、相応〜に、〜に対し行為の相手や敵を表す
zufolge追従〜に従って、〜によれば後置されるのが普通
zuliebe恩恵〜のために後置する
zuwider反対〜に反して後置する

○4格支配の前置詞

 ここでは4格のみを支配する前置詞を挙げます。3格と4格の両方を支配する前置詞は3・4格支配の前置詞をご覧下さい。


前置詞意味備考
à単位〜あたりフランス語
bis終止点〜まで場所・時間ともに用いる
限界〜まで
durch貫通〜をとおって横断しきることを表す。空間・時間とともに用いる
縦横無尽〜じゅうを何度も言ったり来たりすることを意味する
道具・仲介〜を使って、〜を介して実行者だが責任は他(道具なら使った人、人物なら命令した人)にあることを示唆する
原因・理由〜のために
entlang〜に沿って後置。前置すると3格支配
für目的〜のために
対策〜のために用途を表すが、基本的に「〜を解消するために」という含意がある
受益者〜のために目的から「〜の利益のために」という意味を持つ
交換対象〜に換えて〜のために交換物を用意する
評価基準〜からすれば
理由〜のために
kontra反対〜に反対してラテン語
gegen対抗〜に対してぶつかる相手を表す
反応相手〜にとって主として良くない反応を示した人物を表す
比較対象〜にとって
時期〜頃におおよその時間を示す
ohne欠如〜なしにmitの反対
per手段〜を使って
単位〜あたり
期限〜付けで
pro単位〜あたり
um周囲〜の周りで
周回〜の周りをまわって
時間〜を過ぎると○時をまわったら、という日本語の表現と同じ
時期〜頃に周囲を回るという意味から、ぼんやりと時期を表すことも出来る
較差〜だけ比較したときの差を示すのに用いる
等価〜だけ比較したときの差から、ものの価値を表すのに用いる
話題〜をめぐって
via経由〜を経由して
wider反対〜に反して

○3・4格支配の前置詞

 3格と4格の両方を支配できる前置詞です。3格を支配したときと4格を支配したときで意味が異なり、3格は静止した地点を、4格はその地点へ向かう動きを表します。

前置詞意味備考
an3格近接〜に英語のon。接していることを表す
日付、時間〜に
手段〜でその手段に接することで、ということ
部分的処理〜を(……している)ずっと接していることを表す
所属〜で
〜について形容詞や動詞を修飾し、その度合いを表す
4格接近〜へ
auf3格上部近接〜の上に接して
地点(公共機関)〜で地点はinを使うが、公共機関などの場合はaufを用いる
4格上部近接への接近〜の上へと
目的地(公共機関)〜へ目的地にはinを使うが、公共機関などの場合はaufを用いる
目標〜へと
到達地〜に至るまで抽象的に程度を表す
予定時間〜までに
手段〜で
動機〜を受けて
単位〜あたり
hinter3格背後〜の後で
向こう〜を過ぎて向こう○○を後にして、という意味
不足〜を下回って
4格背後への移動〜の後へ
in3格内部〜の中で地理的にも時間的にも用いる
状態〜という状態で
4格内部への移動〜の中へ地理的にも時間的にも用いる
状態変化先〜という状態へ
neben3格並列〜と並んで、〜の隣に
比較〜と並べてみると
追加〜と並んで
4格並列へ〜の隣へ
über3格離れて上〜の上方に
超過〜を越えて
覆い〜を覆って
途中〜しているうちに
4格離れて上へ〜の上方へ
超過〜を越えて
覆い〜を覆うように、〜を伝って
全体〜の間中時間
向こう〜を横切って向こうへ
経由地〜を通って
仲介〜を用いて
話題〜について
感情の理由〜に対して
支配対象〜を
unter3格〜の下で
被覆〜の下に隠れて
以下〜以下
影響下〜のもとに
付随状況〜のもとで、〜を伴って
条件〜という条件の下で
混合〜に混じって
4格〜の下へ
被覆〜の下に隠れるように
以下〜以下に
影響下〜のもとへ
混合〜に混じるように
vor3格前方〜の前で、先に空間にも時間にも用いる
手前〜のこちら側で
原因〜のために生理反応や感情の理由を示す
4格前方〜の前へ空間
zwischen3格〜の間で空間的に2つ以上のものの間を表す
混在〜の中で不特定多数の「間」に紛れ込んでいることを表す
期間〜から〜までの間に時間的な「間」を表す
人間関係〜と〜の間で
数値帯〜と〜の間で二つの数値を挙げ、その間に含まれることを表す
4格〜の間へ空間的に2つ以上のものの間を表す
混在〜の中へ不特定多数の「間」に紛れ込むことを表す

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