ドイツ語入門編(12) 序数、日付や時間の言い方

 今回は序数、つまり順番を表す形容詞のお話です。序数は順番を表すほか、日付を表すのにも使います。それで、序数だけではなく時間の言い方も合わせて説明することにします。

○序数

 序数とは、順番を表す数詞のことです。これに対して普通の、数量を表す数詞は基数といいます。基数については(8)を参照のこと。
 序数の作り方は以下の通りです。
(1)1〜19は、基数の語尾に-tをつけます。
(2)20以上では、基数の語尾に-stをつけます。
 ただし、1,3,8は不規則です。

数字基数序数数字基数序数
1eins インスerst アスト10zehn ツェーzehnt ツェーント
2zwei ツヴァzweit ツヴァイト20zwanzig ツヴァンツィヒzwanzigst ツヴァンツィヒスト
3drei ドdritt ドリッ30dreißig ドイスィヒdreißigst ドイスィヒスト
4vier フィーviert フィーアト40vierzig フィアツィヒvierzigst フィアツィヒスト
5fünf フュンフfünft フュンフト50fünfzig フュンフツィヒfünfzigst フュンフツィヒスト
6sechs クスsechst クスト60sechzig クツィヒsechzigst クツィヒスト
7sieben ズィーベンsieb(en)t ズィープト/ズィーベント70siebzig ズィープツィヒsiebzigst ズィープツィヒスト
8acht ハトacht ハト80achtzig ハツィヒachtzigst ハツィヒスト
9neun インneunt イント90neunzig インツィヒneunzigst インツィヒスト

 「7番目」はsiebentでもsiebtでもかまいません。

 ドイツ語では、一の位を十の位よりも先に言うのでした。これは序数でも同じです。つまり「67番目」はsiebundsechzigst ズィープウントクツィヒスト。「435番目」はvierhundertfünfuunddreißigst フィーンダートフュンフウントドィツィヒスト。

 アラビア数字で書くときは、数字の後にピリオドを打って序数であることを示します。つまり「435.」と書いてvierhundertfünfuunddreißigstと読むのです。

 序数は形容詞ですから、格変化をします。

 Sie ist das fünfte Kind. ズィー イスト ダス フュンフテ ント 彼女は5番目の子供です。


 人物名の「〜世」は、定冠詞+序数で表します。この時も定冠詞と序数は格変化をします。

 Karl IV. カール デア フィーアテ カール4世が


 IVの後の点はアラビア数字で書いたときと同様、序数であることを示しています。つまり、IV.はder vierteの略。カールは男性名ですからder -eです。
 なお、このIV.は、格変化を反映して読まなければなりません。

 Karl IV. カール デア フィーアテ カール4世が
 Karl IV. カール デス フィーアテン カール4世の
 Karl IV. カール デム フィーアテン カール4世に
 Karl IV. カール デン フィーアテン カール4世を


 女性の場合も、女性の格変化をしなければなりません。

 Elisabeth I. エリーザベト ディ アステ エリザベス1世が
 Elisabeth I. エリーザベト デア アステン エリザベス1世の
 Elisabeth I. エリーザベト デア アステン エリザベス1世に
 Elisabeth I. エリーザベト ディ アステ エリザベス1世を

発音規則20-1.[th]

 thはtと同じ発音をします。

○分数

 分数は、分子を基数で表し(ただし1はeinsではなくein)、分母は序数に-elをつけて作ります。分子を先に読みます。

 ein Drittel イン ドリッテル 1/3
 vier (und) drei Fünftel フィーア ウント ドイ フュンフテル 4と3/5

 1/2はein Zweitel イン ツヴァイテルでもかまいませんが、(ein)halb (アイン)ルプ「半分」を使う方が普通です。
 なお、分母は大文字で書かれることも小文字で書かれることもあります。

○時間の言い方

 時間は、ちょうど00分の時には、基数で時を言い、Uhr「時」を添えます。

 Es ist drei Uhr. エス スト ドイ ウーア 3時です。
 Es ist elf Uhr. エス スト ルフ ウーア 11時です。


 30分はhalb「半分」、15分はein Viertel「四分の一」、45分はdrei Viertelを使います。これらは時間の前に言います。そして、時間は次に来る時間を言います。

 Es ist halb drei. エス スト ルプ ドイ 2時半です。
 Es ist drei Viertel zehn. エス スト ドイ フィアテル ツェーン 9時45分です。

 それぞれ3時半、10時45分ではないことに注意してください。次に来るのが3時、10時なのですから、2時半、9時45分です。


 前置詞nach「〜を過ぎて」、vor「〜の前」を使って表すことも出来ます。

 Es ist halb nach drei. エス スト ルプ ナッハ ドイ (3時を過ぎて半時間です=)3時半です。
 Es ist ein Viertel vor zehn. エス スト イン フィアテル フォア ツェーン (10時の四分の一時間前です=)9時45分です。


 00分、15分、30分、45分以外の細かい時間を言うときには、基数とMinute「分」を使います。また、午前はvormittag、午後はnachmittagです。

 Es ist elf Minute nach sechs nachmittag. エス スト ルフ ミヌーテ ナッハ クス ナッハミットターク
 午後6時11分です。
 Es ist zwanzig Minute vor acht vormittag. エス スト ツヴァンツィヒ ミヌーテ フォア ハト フォアミットターク
 午前(8時の20分前=)7時40分です。


 数字をそのまま読む読み方もあります。時間+Uhr+分、という順番です。時刻表など、主に正式な場ではこちらの言い方を使います。

 3:17 drei Uhr siebzehn ドイ ウーア ズィープツェーン
 8:43 acht Uhr dreiundvierzig ハト ウーア ドイウントフィアツィヒ

○日付の言い方

 年の言い方は(8)で既に扱いました。ここでは日付と曜日の言い方を扱います。
 まず、月の名前を挙げましょう。


ドイツ語名意味
1月Januar ヌアール門の神ヤヌスの月
2月Februar フェーブルアール清めの月
3月März ルツ戦争の神マルスの月
4月April プリル不明
5月Mai 大地の女神マーイアの月
6月Juni ユー神々の女王ユーノーの月
7月Juli ユーユリウス・カエサルの月
8月August アウストアウグストゥス帝の月
9月September ゼプンバー7番目の月
10月Oktober オクトーバー8番目の月
11月November ノヴェンバー9番目の月
12月Dezember デツェンバー10番目の月


 月の名前は全てローマ帝国の言い方を継承しています。9月が7番目、10月が8番目、11月が9番目、12月が10番目という名前なのは、古代ローマにおいては農耕を行わない冬の間は暦がなく、3月に1年が始まっていたことに由来します。

 日付は序数を使います。

 Heute ist der 3. Dezember. イテ スト デア ドリッテ デツェンバー 今日は12月3日です。

 なお、副詞的に日付を使う場合、4格にします。これを時間の4格といいます。

 den 16. Februar デン クツェーンテン フェーブルアール 2月16日に

○曜日

 月の名前はローマ帝国の言い方を受け継いでいますが、曜日の名前は違います。曜日の名前はローマでは神の名前(正確にはそれぞれの神に相当する惑星の名前)を使っていましたが、ドイツ語ではゲルマン神話からそれぞれの神に相当する神を取ってきて使っています。


曜日ローマドイツ語
日曜日dies Solis太陽の日Sonntag ンターク太陽の日
月曜日dies Lunae月の日Montag モーンターク月の日
火曜日dies Martis軍神マルス(火星)の日Dienstag ディーンスターク剣の神テュールの日
水曜日dies Mercurii盗賊の神メルクリウス(水星)の日Mittwoch ミットヴォッフ週の真ん中の日
木曜日dies Jovis雷神ユピテル(木星)の日Donnerstag ナースターク雷神トールの日
金曜日dies Veneris美神ウェヌス(金星)の日Freitag フイターク美神フリーヤの日
土曜日dies Saturni時の神サトゥルヌス(土星)の日Samstag ムスタークサバト(ユダヤ教の安息日)


 なお、水曜日はドイツ語ではMittwochですが、これはもともとはOdinstag「知識神オーディンの日」でした。英語のWednesdayはOdinstagが変化したものです。ドイツ語では、オーディンへの敬意からかOdinstagと言うのを避けるようになり、代わりに「週の真ん中」という言い方が普通になったようです。

 また、方言によっては土曜日をSonnabend ンアーベント ということもあります。これは「日曜日の夕方」という意味です。昔は一日の始まりが日没で、(現在言うところの)土曜日の夜が(昔の)日曜日の夜だったことに由来します(Christabend、英語のChristmas Eve「クリスマス・イヴ」がクリスマスの夕べといいながらクリスマス前日を指すのと理屈は同じです)。


 さて次回。
次回はこれまで扱ってこなかった、不定冠詞と同じ変化だけど複数形のある冠詞のお話です。これで名詞類の変化は(形容詞の比較変化を除いて)おしまい。それからは動詞メインになります。動詞の変化のうちで未来形も次回に扱う予定です。

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