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戦略概論


○はじめに

  ここではまず戦略の存在について論じよう。

 論じるにあたり、その用例として、戦争を取り扱う。戦争遂行に当たり、成功への要素に『定まった戦略』、 『情報の解析』、『臨機応変な戦術』が存在する。 戦術と情報については他所を参照されたい。


○戦略とは何か?

 まず、これを証明するべきであろう。

 一般に戦術と戦略は同一視されがちの存在である。 これは、戦術、戦略、双方共に、その存在自体を構成する要素が、 重複しているからである。 その要素については、『戦術論』の方で触れたい。


 さて、戦略と戦術の決定的な差は、 その存在の及ぼす実効範囲の差であり、根本的目的の差である。戦略は戦争全体に影響するに止まらず、戦争の遂行そのものである。しかし、戦争遂行と戦略は同一のものではない。何故ならば、戦争の回避も戦略の内に含まれる要素であるからだ。つまり、戦略は戦争に至る経緯までと、至った後の方針を模索する思考手段であるに止まらず、より、政治的、経済的、或いは社会的な分野において、影響を示す存在であると言える。


 『戦争論』でも述べるが、 戦争とは政治上の外交手段の一つである。 ところが、戦略は戦争という領域に止まらず、外交そのものの基本案から、国内統治に至るまで、幅広い箇所において、影響を及ぼす存在である。

 戦略とは国家ないし、組織が運営する上での方針を模索する、 思考手段であり、その方法であると言える。 このことから、戦略が国策と同一の存在である事が解る。

 つまり、戦略は国家ないし、組織が利潤を得る為の、 或いは生存する為の根本を司る存在である事も解る。 したがって、戦略とは、すべてにおいてのマクロ的存在であり、 社会運用の方法をも模索する思考活動である。すなわち、戦争においては、戦略はその目的であり、遂行理由であり、作戦行動の原則である。

 戦争に限定した考えで言えば、 戦略は戦争の原因とも言える。 同時に、戦争遂行の要因でもある。 戦略がもたらす範囲は膨大であり、 選択する範囲もまた、膨大である。 こうした事から、戦術的要素がしばしば、 戦略的要素に置き換えられる場合がある。戦略という存在は、戦争に於いては、マクロ的分野を占め、しかし、それだけの存在ではないという事が明らかになったと思われる。

 換言すれば、国家方針が戦略であるとも言える

 しかしながら、 戦争に於ける準備や、遂行全体の基本案、或いは、継続と停止、 これらもまた、戦略が司る範囲である事も明記しなければいけない。そうなると、戦略とはすべてに於いて、或いは戦術に対して、『主』と『従』の関係で有るかのように思われるが、 そのどちらでもない。 何故ならば、戦略は戦術的原因等の外的要因によって、 構成されていくからである。

 すなわち、戦争においては、 複数の戦術的要素が戦略の方針を定めるし、 国策に於いては、複数の内外的要素によって、 戦略は構築されていく。これにより、戦略は行動を形作る上での思考活動、或いは、方法手段である事が証明できるのである。



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