城の見方ガイド(6) 堀にも色々な形状がある

○水堀と空堀


 殆どの城で欠かせない存在が、堀(ほり)。濠とも書きますが、敵や動物の侵入を防ぐために欠かせないもので、簡単に越えられることが無いように、深く掘られています。古くは吉野ヶ里遺跡でも見られ、その後は古墳や寺、豪族の館にも堀が設置されることがありました。

 今回は堀にも色々な形状がある、という分類の話ですが、形状云々以前に、上写真の佐倉城みたいに水を引き込んでいない堀を空堀(からぼり)といいます。中世の城の堀は大半が空堀で、近世でも山城を中心に空堀とすることがありました。


 一方、上写真の彦根城のように水を引き込んでいる堀を水堀(みずぼり)といいます。河川や湖、海水を引き込んでいることが多く、有事の際には飲料水として使うことも想定していました。

 では、引き続いて色々な堀の形を分類してみましょう。

○堀の底の形による分類


箱掘
堀の底が平らになっているのが特徴で、両側が高く、断面が箱型になることが名前の由来です。

毛抜掘
堀の底を半円形のように丸く掘ったもの。毛抜きの先のようにU字型であることから、この名前が付いています。

薬研堀(やげんぼり)
堀の底がV字型になっているのが特徴。落ちると登るのは一苦労します。

片薬研堀
薬研堀の片側を切り立った形にして、レの字型にしたもの。薬研堀より登りにくく、防御力が高い反面、崩れやすいという欠点もあります。このほか、両側が急斜面の諸薬研堀(もろやげんぼり) というのもあります。

○形態の違いによる分類


堀切(ほりきり)
尾根(おね)を直線的に、仕切るように作られたもの。

横堀(よこぼり)
曲輪(平坦部)の周に沿って造られたもの。これは現物を見た方が早いと思うので、写真で。このタイプの堀は近世城郭でも一般的で、空堀だけでなく水堀もあります。我々が目にするのは殆どこれではないでしょうか?

このほか、
 竪堀(たてぼり):山の上から下へ、縦に造られたもので、斜面をつたった移動を阻みます。
 →連続竪堀:複数の竪堀が横に連接
 →畝状竪堀(うねじょうたてぼり):3条以上の連続竪堀
 放射状竪堀:曲輪を中心にして放射状に配置
というのがあります。

 また堀の底の形に注目すると、単純に堀を掘るだけではなく、障子の形のように堀の底に土を残しておくこともあります。これを障子掘といい、敵の移動を阻害することができました。現在、特に解りやすく整備されているのは、下写真の後北條氏が整備した山中城(静岡県三島市)ですね。



 また、一定の間隔に連続した土塁状の障子がある堀を畝堀(うねぼり)と区別することもあります。こちらも山中城の事例が一番わかりやすいですね。



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