381系特急形電車


2024(令和6)年の「やくも」定期運行終了を前に復刻された「緑やくも」塗装と国鉄色。
(写真:特急やくも 伯備線 方谷駅/撮影:裏辺金好)
     

●基本データ・運用区間

デビュー年:1972(昭和47)年
保有会社:JR西日本
元保有会社:国鉄、JR東海
最高速度:120km/h
元使用列車:くろしお、スーパーくろしお、こうのとり、きのさき、はしだて、まほろば、しらはま、スーパーやくも、やくも、はんわライナー、やまとじライナー
元運行区間:東海道本線、阪和線、紀勢本線、山陰本線、福知山線、北近畿タンゴ鉄道、山陽本線、伯備線、山陰本線など

○日本初の振り子式特急型電車

中央本線(名古屋口)の特急「しなの」の電車化と、特に曲線区間での乗り心地向上とスピードアップを目的として登場。乗り心地向上のためには自然振り子式というシステムを導入し、さらにスピードアップのために車体をアルミ化するなど徹底した軽量化、及び車体の重心低下を行っている。

 振り子式というのは、曲線区間で車体を傾けることによって、乗客が感じる遠心力を緩和し、乗り心地が向上するシステム。しかし、これでは曲線通過速度が遅くなってしまうため、クーラー等の機器も床下に置くなど低重心化を図り、加えて徹底した軽量化によって、車両に生じる遠心力による曲線通過速度を向上させた。さらに、ブレーキシステム等を大幅に強化し、国鉄の特急型電車としては最高の加減速性能を持つに至り、スピードアップを実現した。

 ところが、この自然振子式というシステムは、カーブ区間に入り振子作用で車体が傾くまでにタイムラグを発生せてしまい、かえって乗り心地が悪くなるという弊害を引き起こした。これはコロ(台車と車体の間にある車体傾斜のためのコロ)の抵抗力の調整によって問題が多少解決したが、抜本的な解決には至らなかった。

 「しなの」で運転を開始した381系は、紀勢本線の特急「くろしお」、山陰本線・伯備線の特急「やくも」に投入され、今に至る。当初、山陰本線の城崎電化の際にも「北近畿」用に投入する計画もあったが、危機的財政のため(381系自体の単価も高かったこともあり)実現しなかった。ただし2011年3月〜6月を中心に、北近畿の流れを汲む特急「こうのとり」として一時的に運用され、2012(平成24)年3月改正以降は、本格的に「こうのとり」「きのさき」「はしだて」として順次運転を開始している。

 JR東海では、後継車両の383系の登場で1996(平成8)年に定期運用を終了。長らく臨時「しなの」で運用されてきたが、最後まで現役だった編成が2008(平成20)年GWに運用されてすぐに廃車となった。

 また、JR西日本では2015(平成27)年10月30日を以て近畿圏の381系が全て引退。これに伴い、381系を使用する定期列車は特急「やくも」のみとなっていたが、2024(令和6)年6月15日に定期運行を終了した。

  なお、381系先頭車前面には、最初に登場した扉のついている貫通型と非貫通型があるが 、最初に登場した貫通型(JR東海のみ所属)は全車が引退し、トップナンバー先頭車がパノラマグリーン車と共に、リニア・鉄道館で保存されている。

○形態&塗装バリエーション一覧


 一番最初に登場した381系。貫通型で先頭車同士の併結が可能。基本的に特急「しなの」のみで運用され、そのまま引退した。現在もリニア・鉄道館で保存されており、その姿を見ることは可能。
(写真:リニア・鉄道館/撮影:裏辺金好)


非貫通型・国鉄色の381系。写真は2008年3月、特急「やくも」運用に就いた珍しい姿。
(写真:伯備線 黒坂〜根雨/撮影:リン)


国鉄色リバイバル編成。JNRマークも復刻されている。
(写真:伯備線 清音〜総社/撮影:裏辺金好)

JR東海が発足からほどなくして登場させたパノラマグリーン車。塗装変更はされず、国鉄色のイメージを継承したのも特徴。
(写真:山陽本線 金光駅/撮影:リン)

JR西日本が、1989(平成元)年7月22日に運転を開始した特急「スーパーくろしお」用に塗装を変更した381系。のちに通常の「くろしお」用ともども新色へ変更されている。
(写真:特急スーパーくろしお 白浜駅/撮影:haru様 禁転載)

特急「くろしお」用塗装。パノラマグリーン車を連結する方を「スーパーくろしお」として運用していたが、2012(平成24)年3月17日改正からは「くろしお」に愛称を一本化。
(写真:特急スーパーくろしお 紀勢本線 切目〜岩代/撮影:裏辺金好)

特急「くろしお」用塗装。
(写真:特急くろしお 浅香駅/撮影:デューク)

特急「スーパーやくも」用の塗装。「スーパーくろしお」同様パノラマグリーン車が存在し、側面には英語のレタリングが入る。なお、「スーパーやくも」の愛称は、2006年3月改正で「やくも」へ一本化され、「スーパー」関連のレタリングは消されている。
(写真:特急スーパーやくも 山陰本線 松江駅/撮影:デューク)

「スーパー」関連のレタリングが消された後の姿。
(写真:特急やくも 山陽本線 岡山駅/撮影:デューク)

こちらは非貫通型タイプの顔&特急「スーパーやくも」用の塗装。
(写真:特急スーパーやくも 山陰本線 松江駅/撮影:デューク)

2023年2月にリバイバルされた「スーパーやくも」塗装。
(写真:伯備線 黒坂〜根雨/撮影:リン)

「スーパーやくも」誕生後、一般の「やくも」も塗装が変更された。もっとも、厳格に運用が分かれているわけではなく、両方の塗装がごちゃ混ぜで運用されることもあった。のち、パノラマ編成共々「ゆったりやくも」塗装に一本化。
(写真:特急スーパーやくも 山陰本線 松江駅/撮影:デューク)

2023(令和5)年11月にリバイバルされた「緑やくも」色。
(写真:伯備線 備中高梁〜木野山/撮影:裏辺金好)

通称「ゆったりやくも」用塗装は、「くろしお」などと同系統のデザイン。車内の大幅なリニューアルが行われている。
(写真:伯備線 方谷〜井倉/撮影:リン)

通称「ゆったりやくも」用パノラマグリーン車。
(写真:伯備線 美袋〜日羽/撮影:リン)

○車内の様子


『くろしお』用381系の車内で。新宮寄りの先頭車は、グリーン車のクロ381−106。リニューアル化により1+2列のシート配置(283系同様)になっているが、パノラマ化されていない為に前面展望はできない。
(解説・撮影:うめ吉)

『くろしお』用381系(クロ381−106)グリーン車座席。
(撮影:うめ吉)

『くろしお』用381系の普通車。普通車の車内。なお、グリーン車・普通車ともに、車両の中央の一部(車両の構造上の理由?)に1+1列配置の部分が有るのも特徴的。
(解説・撮影:うめ吉)


JR西日本の381系「ゆったりやくも」仕様車両パノラマグリーン車の車内。
(撮影:裏辺金好)

JR西日本の381系「ゆったりやくも」仕様車両の普通車車内。
(撮影:鐵)

同じくJR西日本の381系「ゆったりやくも」仕様車両の座席。
(撮影:CH様 禁転載)

○細部


『くろしお』用381系の側面表示で、方向幕はJR西日本の標準式。○号車や指定・自由席の表示はサボ式になっている。
(解説・撮影:うめ吉)

LED化された「ゆったりやくも」行先表示機とロゴマーク。
(撮影:裏辺金好)

車両銘板など。
(撮影:鐵)


「緑やくも」色のロゴマーク。
(撮影:裏辺金好)

「スーパーやくも」色のロゴマーク。
(撮影:裏辺金好)

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