ロンドン地下鉄150周年!開業時を再現して蒸気機関車が地下鉄を走行

 2013年1月13日と20日にロンドン地下鉄の開通150周年を記念して、蒸気機関車が牽引する特別列車が運行されました。ロンドン地下鉄の構想は1830年代に挙がり、混雑していた路面上の交通量を減らすために建設されたものです。そして1863年1月9日に開業し、翌日から一般客を乗せるようになりました。運行会社は「メトロポリタン鉄道」という名前で、東京メトロ、ソウルメトロやパリメトロ等を始めとする世界各国で地下鉄の俗称となる「メトロ」の語源となったんです。
 開業当時の路線はパディントンからキングズ・クロスを経由してファリンドンを結ぶもので、現在も3系統が運行される大動脈に変わりはありません。今回の記念列車もこのルートを通りました。
 まずはハイ・ストリート・ケンジントン駅で記念列車を牽引します。他の列車の運行の支障にならないよう記念列車が運行される時間のほとんどが夜遅くなので、日中に撮影できるのはこのチャンスのみでした。
(撮影&解説:秩父路号)


この時の記念列車の運行方向とは逆の順番に紹介していきます。
まずは今回の注目の的のメトロポリタン鉄道 Eクラス1号機、通称「Met Loco No.1」。ロンドン交通L.44号機と呼ばれることも。1898年に7機製造されたEクラスの唯一の生存機で、当時はベーカー・ストリートから郊外への列車を牽引していました。動輪の配置は0B2となっており、地下鉄での運行を想定されている分小ぶりな体系となっているんです。記念列車を運行する際「150 Underground Pioneer 1863-2013(地下鉄の先駆者)」というプレートをかがげていました。

奥がメトロポリタン鉄道の牛乳専用貨車、手前が同じくメトロポリタン鉄道のジュビリー客車353番です(1896年製造)。353番客車は最古の現役地下鉄用車両で1892年に製造されました。

こちらは1898年製造の「アッシュベリー客車」。旧メトロポリタン鉄道のチェシャム支線で運用されたことから「チェシャム客車」とも呼ばれています。1961年に引退した際にブルーベル鉄道が買い取り、以後動態保存されています。(ブルーベル鉄道はイギリス南部ある保存鉄道)

こちらも同じ。

今回はすっかり1号機の影に隠れてしまいましたが、こちらはそれと同じくらい貴重な旧メトロポリタン鉄道ヴィッカーズ電気機関車の12号機「セーラ・シドンズ」。1922年に製造され、Eクラスの蒸気機関車を置き換える形で登場し、2012年まで現役だったAクラス電車に置き換えられるまでロンドン地下鉄の主力の座を務めていました。詳しくは別ページのリバイバル運転にて記載してあります。

なお、ロンドン地下鉄で蒸気機関車を走らせる事自体は「Steam on the met」というイベントシリーズで数年に一回の頻度で行われていました。ただこの記念列車を運行するにあたって一番感動したのが開業当時の線区、つまり地下区間で蒸気機関車を走らせる事でした。

安全性の観点からも運行上の観点からも色々難点のある計画でしたが、ロンドン交通博物館とロンドン市交通局を筆頭とする団体が一致団結してこの計画を成し遂げた事はロンドン人の地下鉄に対する誇りを物語っていると思います。
さて、夜になりまた記念列車の運行が始まるのでベーカー・ストリート駅で迎撃します。ここはコナン・ドイル創作の探偵ホームズの舞台でも有名ですね。

今回は電気機関車が先頭の運用でしたが、後ろの1号機が豪快に煙を吐いてくれました。ちなみに被りそうになった地下鉄電車の運転手、撮影している方々に配慮して下さって記念列車が通過する際、駅の構外でしばし停車してくれました。運転手さんバンザーイ!

夜の運行区間は上記した通り開業当時の線区をなぞるルートで、ムーアゲート〜エッジウェア・ロード間を何回か往復します。夜間運行はカメラの性能の都合上まともな写真が撮れないので途中駅でビデオを撮影していましたが、一回エッジウェア・ロード駅で停車中の機関車を撮影しました。

上写真はエッジウェア・ロード駅で折り返し作業をする記念列車。機回しの必要がないように後ろに電気機関車がついています。

世代を超えて並ぶロンドンの地下鉄車両。

ロンドン地下鉄では珍しい大撮影会状態となっていました。
出発時の動画。
その後キングズ・クロスに行き、通過シーンを撮影しました。

今も昔も変わらずロンドン市民の足として活躍してきたロンドン地下鉄は150周年という節目の年を迎えました。当初は一本の路線で細々と乗客を運んでいましたが、度重なる新線開業と延伸を行い、今に至っては総長402kmにも及ぶ世界最大級の地下鉄路線網に発達しました。これからも新型車両の導入や新線開通でさらなる発展を遂げることになるでしょう。

現在開業当時の路線を走るCストック。今年から新型のS7ストックに置き換えられる予定なので、ついでに撮影できてよかったです。

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