旧居留地エリアの近代建築〜兵庫県神戸市中央区〜
横浜と並び港町の風景が非常に美しい神戸市。今回はその中でも、旧居留地を中心とした近代建築たちをご紹介します。このエリアは幕末である1868(慶応3)年の神戸開港に伴い、日本人との衝突を防ぐために、当時の兵庫の市街地から、3.5km東に離れ、砂地と畑地であった神戸村に外国人の住居や通商の場として整備が行われたもの。
イギリス人土木技師のJ.W.Hartが中心となって格子状街路、街路樹、公園、街灯、下水道などが建設され、整然と126区画に分割された敷地が現在も継承されています。1945(昭和20)年6月5日の神戸大空襲で旧居留地の約70%が破壊されたほか、1995(平成7)年1月17日の阪神・淡路大震災でも大きな被害を被っていますが、それでも数多くの近代洋風建築が数多く残り(または復元)、非常に美しい景観を形成。
中央区海岸通の商業ビル群(海岸ビル、神港ビル、神戸朝日ビルディング、旧居留地15番館)、神戸港周辺の銀行ビル群(旧横浜正金銀行神戸支店、旧三菱銀行神戸支店、旧ナショナルシティバンク神戸支店、旧第一銀行神戸支店)として近代化産業遺産に指定されています。
(撮影:裏辺金好)
〇地図
○風景
旧神戸居留地十五番館 【国指定重要文化財】
1881(明治14)年頃築。建築時から現在まで位置を変えないで残る、唯一の旧居留地時代の商館。元はアメリカ領事館として使用されました。木の骨組みの間に、レンガを積む構造なのが特徴。なお、阪神大震災で全壊しましたが幸いにも復旧されました。
旧横浜正金銀行神戸支店(現・神戸市立博物館) 【国登録有形文化財】
1935(昭和10)年築。戦後は東京銀行として使用されていた建物で、1982(昭和57)年より神戸市の各種博物館を統合して、神戸市立博物館としてオープンしました。
神港ビル
1939(昭和14)年築。設計:木下建築事務所
旧チャータードバンク神戸支店(現・チャータード・ビル)
1938(昭和13)年築。設計:J.H.モーガン。 イギリスの銀行、チャータードバンクのビルでした。
海軍操練所跡
チャータード・ビル近くに残る記念碑。海軍操練所は、1864(元治元)年に江戸幕府が開いた海軍の士官養成のための施設で、軍艦奉行の勝海舟を中心とし、坂本龍馬や陸奥宗光等を輩出しました。しかし、人材を広く集めたため反幕府的な人物の温床ともなり、1年で閉鎖されました。
旧三井物産神戸支店(現・海岸ビル) 【国登録有形文化財】
1918(大正7)年築。設計:河合浩蔵
鉄筋コンクリート造りの洋風近代建築ですが、よく見ると唐破風のような意匠を組み合わせているのが特徴。阪神大震災で大きな被害を受け、上層部にビルを増築し、15階建てに。
旧大坂商船神戸支店(現・商船三井ビルディング)
1922(大正11)年築。設計:渡辺節
アメリカンルネサンス様式の7階建てのビル。
旧日本郵船神戸支店(現・神戸郵船ビル)
1918(大正7)年築。設計:曾禰中條建築事務所
海岸ビルの西反対側に残る近代建築。
神戸税関本庁舎
1927(昭和2)年築/1998(平成6)年改修。設計:大蔵省営繕課、日建設計
「帝国の大玄関番たる税関として決して恥ずかしからぬ近代式大庁舎」として新築され、外装は花崗岩とタイル張りの重厚な造りが特徴。阪神・淡路大震災で被災し、旧館を保全したうえで神戸港の新しいシンボルとして船をイメージして新館を建築。
旧神戸市立生糸検査所(現・デザイン・クリエイティブセンター神戸 旧館)
1927(昭和2)年築 設計:神戸市営繕課(清水栄二)
旧神戸証券取引所・朝日会館(現、神戸朝日ビル)
1934(昭和9)年築。設計:渡辺節建築設計事務所
竹中工務店が高層ビルを建築するときに、入口部分のイメージを残して、1994(平成6)年に復元保存されています。
旧神戸住友ビル
1934(昭和9)年築。設計:長谷部竹腰建築事務所
住友銀行神戸支店として建設されたもので、2014(平成26)年に解体。
旧シティバンク神戸支店(旧居留地38番館)
1929(昭和4)年築。設計:ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
旧神戸海上火災ビル(現・あいおいニッセイ同和損保神戸ビル)
1935(昭和10)年築。設計:長谷部竹腰建築事務所
繰り返された合併により社名は変わっていますが、建築時から所有者が変わっていません。
海岸ビルヂング
1911(明治44)年築。設計:河合浩蔵
神戸で現存する商業ビルの中で、かなり古い部類に属するもの。東にある神戸華僑歴史博物館では、華僑の歴史や文物を紹介展示しています。
JR神戸駅
1934(昭和9)年築。東海道本線と山陽本線の境界駅である神戸駅(実際にはJR神戸線の愛称で一体運用されていますが)。現在の駅舎は3代目のもので、貴賓室も残っているそうです。