栃木県日光市足尾町〜古河掛水倶楽部と足尾銅山
  Furukawa Kakemizu Club and Ashio Copper mine in Ashio Town , Tochigi Prefecture
 2006年に日光市、今市市、藤原町、栗山村と合併し、(新)日光市の一部となった足尾町。
 江戸時代初期である1610(慶長15)年に銅の産出が確認され、本格的に採掘が開始。寛永通宝の鋳造などで大いに栄えた場所です。幕末になると銅の産出は激減し、閉山に近い状態にまで追い込まれますが、1877(明治10)年に古河市兵衛が経営するようになってから、生産技術の改善など近代化によって再び全国有数の銅山として再生し、足尾は栃木県でも有数の大都市となりました。
 その一方、衆議院議員の田中正造(1841〜1913年)が訴えたように鉱毒問題が問題となり、足尾銅山の麓(ふもと)を流れる渡良瀬(わたらせ)川下流域の住民に甚大な健康被害をもたらしました。鉱毒は戦後になっても続き、現在でも対策が行われています。
 約400年にわたって銅の産地として栄えた足尾銅山でしたが、ついに銅の産出減少が著しく、1973(昭和48)年に閉山となりました。跡地には1980(昭和55)年4月、足尾銅山観光がオープン。銅山の歴史や内容、仕組みを見ることが出来、かつての繁栄ぶりをしのぶことが出来ます。
 ちなみに国道122号線で、足尾からちょいと北に足を伸ばせば、日光有数の観光名所、中禅寺湖に着きます。

○場所


古河掛水倶楽部
 わたらせ渓谷鉄道足尾駅前にある古河掛水倶楽部。1899(明治32)年に建てられた洋館で、足尾銅山を経営する古河鉱業(現、古河機械金属)が華族、政府高官などの迎賓館として使用していました。現在でも古河機械金属が宿舎として使用しているそうで、一般には土曜日・日曜日・祝祭日に公開しています。

古河掛水倶楽部 【国登録有形文化財】
古河掛水倶楽部背面


防空壕
 第2次世界大戦時には、古河家の疎開先として掛水役宅が使われたため、庭に防空壕が造られました。


掛水役宅
 1911(明治44)年築。古河鉱業の幹部社員向けに建設された住宅で、古河掛水倶楽部に隣接しています。
 現在は、鉱石資料館として日本と世界の鉱石を展示。

銅山電話資料館
 古河掛水倶楽部敷地内にある建物。1951(昭和26)年から2000(平成12)年まで電話交換所として使われていたもので、当時の自動交換機が動く様子や、昔の電話を使った通話を体験できます。


旧足尾鉱業所付属倉庫
 1910(明治43)年築。1907(明治40)年、暴動によって本山鉱業事務所が焼失するため、古河掛水倶楽部と隣接するこの場所に、洋風の事務所と赤煉瓦の倉庫が建築されました。事務所は1921(大正10)年に足利市役所庁舎として売却され(のち、老朽化に伴い解体)、現在は赤煉瓦の倉庫のみ残っています。また、洋館の跡地はテニスコートとして利用されています。


社宅の街並み
 足尾駅前には現在も木造の社宅が現存して使用されています。
昭和初期〜30年代を髣髴(ほうふつ)とさせる貴重な街並みです。将来的には保存する価値があるはず。

足尾銅山観光
 廃坑となった足尾銅山の一部を活用し、1980(昭和55)年4月にオープンした施設。概要については前述の通りで、足尾銅山について解りやすく学ぶことが出来ます。特に夏は坑道の中がひんやりと涼しく、また当時の作業の様子が実物大の人形を使ってわかりやすく紹介されており、非常にオススメの施設です。
 最寄り駅は、わたらせ渓谷鉄道通洞駅。ちなみに足尾銅山は、本山坑(北)、通洞坑(南)、小滝坑(西)の3つより形成されており、駅名はその1つから取られています。

通洞選鉱場(復元模型)
足尾銅山観光がある一帯の昭和40年代の風景。

足尾精錬所(復元模型)
昭和40年代の風景。 選鉱場で採集した粗鉱から粗銅、鋳銅を生産する工場です。


トロッコ列車
足尾銅山観光では、短い距離ではありますが、往時の軌道を使って坑道に入ることができます。
坑道
 奥深くへと続く、かつての坑道は現在も残っていますが、一般人は立ち入ることは出来ません。複雑な多層構造になっている坑道の総延長は、なんと約1200Km。東京から博多までの距離に匹敵するそうですが、途中で迷わなかったのでしょうか。


坑道
ライトアップすることで、奥の様子が多少ですが解ります。


江戸時代の採掘風景
観光客は、坑道の一部に再現された様々な時代の足尾銅山の風景を眺めながら、出口に向かいます。

江戸時代の採掘風景


江戸時代の採掘風景
江戸時代の採掘風景
坑道
明治・大正時代の採掘風景
 古河市兵衛が買収後、機械化が進められた採掘作業の様子。
明治・大正時代の採掘風景
昭和時代の採掘風景
昭和時代の採掘風景
昭和時代の採掘風景
 休憩する坑夫。
江戸時代の選鉱作業
 坑道を出ると、江戸時代の風景に再びタイムスリップという、少し不思議な展示構成(坑道外の作業の再現なので仕方がありませんが)。このように女性も従事していました。
江戸時代の精錬作業
江戸時代の精錬作業

保存されている電気機関車・トロッコなど
牽引機は足尾A型。
保存されている電気機関車・トロッコなど
保存されている電気機関車・トロッコなど
保存されている電気機関車・トロッコなど
削岩機(さくがんき)
 実際に触れることが出来ます。
資料館で展示されている江戸時代の貨幣
資料館で展示されている江戸時代の貨幣
足尾で鋳造された寛永通宝のモニュメント
足尾銅山観光 全景

周辺の産業遺産
  周辺にはかつて様々な用途に使用された鉱山施設が残りますが、朽ちて崩壊寸前のところも。足尾銅山観光での模型を見る限り、レンガ造りの建物は通洞動力所跡、その次の写真は通洞変電所(現役か?)の模様。
 このまま朽ちるには惜しい、産業遺産であります。

わたらせ渓谷鉄道
 足尾観光に便利なのが、国鉄(JR)足尾線を引き継いだ、わたらせ渓谷鉄道。元々は足尾銅山から産出される鉱石輸送のために足尾鉄道が敷設した路線で、今回御紹介したエリアは基本的に駅前にあるので、風光明媚な沿線風景と共に是非ご堪能頂きたいと思います。また、トロッコ列車も数多く運転されています。

 始発駅はJR両毛線と接続する桐生駅。東武桐生線と接続する相生駅、大間々駅、通洞駅、足尾駅などを経て、終点の間藤駅に到着します。


トロッコわたらせ渓谷号
途中の大間々駅と足尾駅を結ぶトロッコ列車。ディーゼル機関車+客車・トロッコの運転スタイルです。

トロッコわっしー号
桐生駅と間藤駅の全線を結ぶトロッコわっしー号。気動車による2両編成です。

神戸駅
沿線には昔から長く使われているレトロな駅舎も多く、見所の1つです。

神戸駅構内
写真左手では、東武鉄道の往年の特急車両デラックスロマンスカーを利用したレストラン「清流」が営業中。

足尾駅のキハ30形・キハ35形気動車
足尾線でも活躍した国鉄のディーゼルカーが保存されています。こちらも鉄道ファンには見逃せない!?