平等院&宇治上神社〜京都府宇治市〜


○解説

 平安時代は京に住む貴族たちの別荘地ととなっていた宇治。紫式部が書いた源氏物語では、全54帖の物語のうち、最後の10帖が宇治を舞台にしており(通称「宇治十帖」)、風光明媚な場所として人気スポットになっていました。現在でも美しい山々に、清らかな流れの宇治川が、昔からの宇治の面影を今に残していますが、建築面では平等院、宇治上神社が世界遺産に指定されています。特に平等院の鳳凰堂は、平安時代から現存している壮大な建物。10円玉の裏側にも描かれていますが、文句なしに日本を代表する建築遺産です。今回は平等院、宇治上神社を中心に宇治を見ていきます。
 (上写真&解説:裏辺金好)

○場所



○平等院

 平等院は元々、嵯峨天皇の皇子であった源融(みなもとのとおる)の別荘だったものを藤原道長が購入したもの。道長の息子である藤原頼道は、この別荘を相続すると「そうだ、これを寺にしよう」と思いつき作業に着手します。当時は、1052年から仏法が衰滅するという「末法」の世が来ると貴族たちの間で信じられており、少しでも救いを求めるべく、こうした行動をとったものと思われます。

 こうして1053(天喜元)年、現在は鳳凰堂として親しまれる阿弥陀堂が完成。当時は極彩色に塗られている華麗な建築であり、2012(平成22)年9月から2014(平成26)年3月にかけて修復が行われた際に、当時の姿に復元されました。また、中央に仏師・定朝の大作である、金色の阿弥陀如来坐像(なんと3m近い巨大なもの)を鎮座させています。さらに、背後の壁に極楽浄土図を描き、左右の壁の上部に52体の雲中供養菩薩像を懸けるという、まさに極楽浄土の世界を表現しています。


阿弥陀堂(鳳凰堂) 【国宝】
阿字池に囲まれた阿弥陀堂(鳳凰堂)は、中堂の左右に16mの翼廊を広げた壮大な建築です。


阿弥陀堂(鳳凰堂) 【国宝】


阿弥陀堂(鳳凰堂) 【国宝】


阿弥陀堂(鳳凰堂) 【国宝】
2014(平成26)年3月に修復される前までの姿。長らく朱塗りではありませんでした。


観音堂 【国重要文化財】
鎌倉時代初期の建築。つい阿弥陀堂(鳳凰堂)に目が行ってしまいがちですが、こちらも貴重な古建築。創建当時の本堂跡に再建されたといわれている、簡素ながら力強い雰囲気の、鎌倉時代を代表する建築です。


浄土院
阿弥陀堂(鳳凰堂)の後ろにある寺で、明応年間(15世紀後半)に平等院の塔頭で、浄土宗の栄久(えいく)上人が平等院修復のために建立したものです。


浄土院羅漢堂 【国指定重要文化財】
1640(寛永17)年築。窓の形を見ていただけると解りますが、禅宗様をベースとした建築であり、平等院の建築群の中では極めて異質な存在です。


浄土院養林庵書院 【国指定重要文化財】
1601(慶長6)年、伏見城から移築されたと伝わる建物。狩野山雪による障壁画や、細川忠興の作と伝わる庭園があります。


扇の芝
観音殿近くの場所で、1180(治承4)年、以仁王(もちひとおう)と共に平家打倒の兵を挙げた源頼政が、宇治での戦いに敗北して自害した場所と伝わります。


源三位頼政之墓
観音堂(鳳凰堂)裏手に源頼政の墓があります。

宇治川・宇治神社

 平等院から宇治上神社へは、宇治川を渡ります。  宇治川は古来より水陸交通の要所であり、合戦の舞台としてしばしば登場しますが、中でも1184(寿永3)年、源義経が源(木曾)義仲と戦った宇治川の戦いは有名。この川を渡るときに源義経軍の佐々木高綱と梶原景季先陣争いを行ったところから戦いがスタート。佐々木高綱が先陣の名誉を勝ち取り、義経軍は一気に木曾義仲の軍勢を打ち破りました。


宇治川
手前側が平等院方向で、奥が宇治上神社方向です


宇治川先陣争いの碑


宇治神社
川を渡ると早速、宇治神社が見えてきます。宇治「上」神社ではないので要注意。主祭神は、5世紀にこの地で自害した応神天皇の皇子である菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)。

宇治神社本殿 【国指定重要文化財】
鎌倉後期築。本殿は三間社流造で、貴重な文化財。

宇治川・宇治神社

 そして宇治神社より奥へ向かうと、宇治上神社が見えてきます。  1883年に分社されるまで宇治明神として一緒だった宇治神社と共に、応神天皇の皇子菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)を主祭神とする神社で、平等院創建後は、その鎮守社として崇敬を集めていました。現在も鎌倉時代に建立された拝殿、平安時代後期に建立された本殿が残っており、1994(平成6)年、平等院と共に世界遺産へ登録されています。


宇治上神社参道


宇治上神社拝殿 【国宝】
鎌倉時代前期築。数ある神社建築の中でも現存する最古の拝殿で、建築様式は平安時代の貴族住居の様式である寝殿造になっています。


宇治上神社本殿 【国宝】
平安時代築。1棟に見えますが、内部は祭神の応神天皇、菟道稚郎子、仁徳天皇をそれぞれ祀った中殿、左殿、右殿の3棟を、1つの覆屋でくっつけているのが特徴です。こちらも、現存する神社の本殿建築では最古のもの。

宇治上神社摂社・春日神社 【国指定重要文化財】
鎌倉後期築。本殿の右隣にある建物で、一軒社流造。

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