岐阜かかみがはら航空宇宙博物館〜岐阜県各務原市〜


 「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」は、1996(平成8)年3月23日に各務原市が「かかみがはら航空宇宙科学博物館」として開館させた航空・宇宙関連の博物館。旅客機、軍用機問わず様々な実機が展示されているのが特徴です。
 そもそも各務原市は、現存する日本最古の飛行場にして、航空自衛隊の飛行開発実験団が所在している岐阜基地、航空機製造工場である川崎重工業岐阜工場などが存在する、飛行機産業が盛んな場所。この博物館では、実際に各務原市で製造された機体も数多く展示されています。
 2018年3月24日に岐阜市と各務原市の共同所有&運営として「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」(愛称:「空宙博」(そらはく))としてリニューアルオープン。展示面積は従来の1.7倍の9,400平方メートルとなり、30機を超す実機が、これまでと異なり年代ごとに整然と並べられ、航空機の歴史と進化を体感出来るようになりました。
 リニューアル前の様子は別ページにて紹介しています。
(撮影&解説:裏辺金好)

○場所



○屋外展示


川崎 バートルV107A輸送ヘリコプター
 V107はバートル社(現在はボーイングに吸収合併)が設計したタンデム型ローターのヘリコプター。このV107Aは、日本では川崎重工業が床面の強化や燃料タンクの大型化などの改造を施した上でライセンス生産を行い、陸上自衛隊に納品したもの。


日本航空機製造 YS−11A−500R中型輸送機
言わずと知れたYS−11の99番目の機体。主翼とエンジンナセルは各務原で生産されたものです。


新明和 US−1A救難飛行艇
屋内展示されているUF-XS実験機の成果を基に開発された対潜哨戒艇PS-1を水陸両用型としたもの。


川崎 P−2J対潜哨戒機
 戦後ライセンス生産したロッキードP2V-7をベースにしてエンジンをターボプロップに換装、胴体を延長、装備の近代化などの大改造をした機体。1969(昭和44)年まで、ここ各務原で生産され、海上自衛隊で1994(平成6)年まで使用されました。

▼内部展示



陸軍乙式一型偵察機 サルムソン2A-2(レプリカ)
各務原で最初に量産された飛行機。1922(大正11)年11月9日に初飛行しました。

ハンスグラーデ単葉機(レプリカ)



三式戦闘機二型「飛燕」(川崎キ61−U改)
日本で唯一現存する「飛燕」。1941(昭和16)年12月に各務原で初飛行した飛燕は、終戦まで約3000機が製造されました。主任設計者は、後にYS−11の開発にも関わる土井武夫です。


十二試艦上戦闘機(零戦試作初号機、三菱A6M1/レプリカ)
岐阜で初飛行した零戦の試作初号機を様々な資料を基に復元したもの。


川崎KAL-1練習機
航空禁止の一部解除を受けてリスタートした日本の航空機開発を代表する機体。1953年(昭和28年)7月に各務原飛行場で初飛行に成功しました。展示機は同年10月に製造された2号機で、大阪市港区にあった交通科学博物館で展示された機体を、京都鉄道博物館のオープンに向けた同館の閉館を受け、譲り受けたものです。


川崎KAT-1練習機
1953年(昭和28年)に初等練習機用として開発に着手され、翌年2月に初飛行。2機が製造されただけで本採用には至らず、運輸省航空大学校で使用されただけでした。


ロッキード/川崎 T−33Aジェット練習機
P−80戦闘機をベースに開発された航空自衛隊の初の練習機で、アメリカの供与で導入。1957(昭和32)年からは川崎航空機(現・川崎重工業)でライセンス生産が開始されました。


ロッキード/三菱 F−104J要撃戦闘機
航空自衛隊の戦闘機で、三菱重工業が1961(昭和36)年から1967(昭和42)年まで239機をライセンス生産。

防衛庁技術研究本部 高揚力研究機 X1G(サーブ・サフィール91B改)
 1945(昭和20)年に開発されたスウェーデンのサーブ91Bサフィール機を、防衛庁技術研究本部が研究実験機として改造したもので、1957(昭和32)年から様々なSTOL技術の試験母機として使用されました。


富士T−1ジェット練習機
日本で開発された初めての国産ジェット練習機(1958年試作機が初飛行)。航空自衛隊で使用されました。


日大/伊藤忠 N-62イーグレット
 木村秀政教授(YS−11の基本構想をした)が指導する日本大学の学生たちと、伊藤忠の技術スタッフが中心となって設計した、日本独自国産の軽飛行機。



防衛庁技術研究本部/新明和 UF-XS実験飛行艇
アメリカ海軍から供与を受けたグラマンUF−1アルバトロス双発飛行艇を大改造した実験機。


航技研 VTOL実験機 フライングテストヘッド
科学技術庁航空宇宙技術研究所(現・JAXA)が開発した日本で唯一の垂直離着陸実験機で、1970(昭和45)年12月15日に宮城県角田市で垂直離着陸に成功しました。ジェットエンジン2基が機体に対して垂直に取り付けられています。


航技研/富士 FA-200改 STOL実験機
科学技術庁航空宇宙技術研究所(NAL)のSTOL実験機として、富士重工FA-200エアロスバルを改造した機体。1966(昭和41)年から実験に使用されました。


T−3初等練習機
航空自衛隊の初歩訓練機として、富士重工が 開発した機体。試作機は1974年に飛行しました。


三菱 T−2高等練習機
日本で初めて開発された超音速機で、この機体は1995(平成7)年までブルーインパルスで使用されたもの。


三菱 T−2CCV研究機
三菱T−2高等練習機の試作3号機を改造。防衛庁技術研究本部で開発が進められ、1983(昭和58)年に名古屋飛行場で初飛行しました。CCVは Control Configured Vehicle の略で、航空機の安定性をコンピューター制御で作りだす技術。後のF−2支援戦闘機の開発に生かされました。


航技研 低騒音STOL実験機「飛鳥」
 低騒音ファンジェットSTOL開発のための基礎技術確立の目的で、科学技術庁航空宇宙技術研究所によって研究開発された実験機。航空自衛隊のC−1輸送機をベースに製作され、1985(昭和60)年から1989(平成元)年まで飛行実験に使用されました。


川崎 T−4中等練習機(模型)
T−33Aの後継機で、1985(昭和60)年7月29日に試作機が岐阜基地で初飛行。展示されている模型はブルーインパルス仕様。


川崎ベル式47G3B−KH4型ヘリコプター
川崎重工が、アメリカのベル社が開発した47G3Bヘリコプターをベースに全面的に再設計を行ったもの。この経験が後のBK−117ヘリコプターの開発に大きく貢献しました。


川崎 KHR−1リジットローター実験ヘリコプター
川崎重工業が独自開発した板バネ式リジットローターをKH−4に載せて実験したもの。後のBK−117、OH−1ヘリコプターの開発に大きく貢献しました。


川崎BK-117型ヘリコプター
川崎重工がドイツのMBB社(現ユーロコプター社)と、国際共同開発したヘリコプター。こちらはGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)とFBW(Fly-By-Wire)方式操縦システムを発展・融合させた実験機で、1999(平成11)年から2000(平成12)年にかけて使用。


OH−6J新型式 ローターシステム実験機
OH−6Jヘリコプターを改造した実験機で、複合材ヒンジレス・ハブの新ローターシステムの実験に使用。1990(平成2)年から1992(平成4)年にかけて岐阜飛行場で実験が行われました。


川崎 XOH-1 新小型観測ヘリコプター(モックアップ) 
陸上自衛隊のOH−1ヘリコプターの試作機・・・のさらにモックアップ。1996(平成8)年に試作機が岐阜基地で初飛行しています。


日大式N-70シグナス モーターグライダー
日本大学文理学部の木村秀政教授の研究室が、1970(昭和45)年に設計・製造した戦後初の本格的なモーターグライダー。


HYPER-CHicK "KoToNo Limited"
日本人女性初の飛行を目指して設計・製造されたもので、1992(平成4)年に日本初の女性記録を樹立。第16回鳥人間コンテストで4位入賞を果たしたのち、2017(平成29)年に被覆フィルム等を修復。愛称はパイロットの堀琴乃さんに因むもの。


H−Uロケットフェアリング


LE−7エンジン
1994(平成6)年からH−Uロケットを打ち上げている22,000馬力の国産エンジン。展示されているものは、地上での燃焼実験に使用されたもの。

各種ロケットの模型

光衛星間実験通信衛星「きらり」(1分の1模型)
2005(平成17)年打ち上げ。ESA(欧州宇宙機関)の静止衛星「アルテミス」との間で、世界で初めて双方向の光衛星間通信に成功しました。


通信技術衛星「かけはし」(1分の1模型)
1998(平成10)年に通信・放送技術の高度化を目的に打ち上げ。展示機は開発過程における熱試験で使用されたものです。


スペースシャトル(25分の1模型)


宇宙服と宇宙遊泳噴射装置




日本実験棟「きぼう」(1分の1模型)


小型ソーラーセイル電力実証機「イカロス」(10分の1模型)
太陽光を受けて進む宇宙ヨット。2010(平成22)年に実用化に成功しました。


小惑星探査機「はやぶさ2」
2014(平成26)年12月3日にH−UAロケット26号機で打ち上げられた小惑星探査機。

火星探査車 マーズ・エクスプロレーション・ローバー(1分の1模型)
NASAが火星探査のために開発したもので、2003(平成15)年6月に1号機「スピリット」が、同年7月に2号機「オポチュニティ」が打ち上げられ、翌年1月に火星へ着陸。展示模型は、愛・地球博のアメリカ館で展示されていたもの。


キュリオシティ(1分の1模型)
2011(平成23)年11月28日打ち上げ。火星表面を移動しながら調査する無人探査車です。

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