小樽の近代建築群〜北海道小樽市〜


 小樽市は北海道西海岸のほぼ中央に位置し、海・山・坂など変化に富んだ人口約13万人の港湾都市で、アイヌ語でオタルナイというのが地名の語源です。1869(明治2)年、明治政府は開拓使を置き「蝦夷」を改め「北海道」と称すると同時に、この地を「小樽」と改めました。

 中心部は、かつて「北のウォール街」と呼ばれた道内一の銀行街。現在は大半が別の用途に転用され、都市銀行は全て撤退してしまいましたが、数多くの近代建築が残り、小樽運河の景観などと共に観光名所となっています。今回は、小樽市中心部に残る近代建築たちをご紹介します。
(撮影・解説:裏辺金好)

○地図



○駅&銀行建築


JR小樽駅 【国登録有形文化財】
1934(昭和9)年築。

JR小樽駅内部 【国登録有形文化財】
改札口部分は吹き抜けになっており、非常に開放感があります。

旧・日本銀行小樽支店(現・金融資料館) 【小樽市指定文化財】
 1912(明治45)年築。辰野金吾、長野宇平治、岡田信一郎の設計で、2002(平成14)年まで日本銀行小樽支店として使われました。2003(平成15)年からは日本銀行の金融資料館として使用されています。

旧・北海道銀行本店(現・小樽バイン&北海道中央バス本社ビル) 【小樽市指定歴史的建造物】
 1912(明治45)年築で、長野宇平治の設計。日本銀行金融資料館の向かい側の建築で、長野宇平治の手によりセットで同時に建築されたことになります。なお、この北海道銀行は現在の北海道銀行とは異なります。

旧・北海道拓殖銀行小樽支店(現・似鳥美術館) 【小樽市指定歴史的建造物】
 1923(大正12)年の建築で、矢橋賢吉、小林正紹、山本万太郎の設計。丸みを帯びたデザインが最大の特徴。近年はホテルとして利用されていましたが、2017(平成29)年9月から、「旧三井銀行小樽支店」「旧高橋倉庫」と共にニトリ小樽芸術村として活用。
 本建物は、似鳥美術館として横山大観、川合玉堂、岸田劉生等の日本画やアールヌーヴォー・アールデコ グラスギャラリーなどとして活用しています。

旧・第一銀行小樽支店(現・トップジェント・ファッション・コア) 【小樽市指定歴史的建造物】
1924(大正13)年の建築で、田辺淳吉の設計。

旧・三菱銀行小樽支店(現・小樽運河ターミナル) 【小樽市指定歴史的建造物】
1922(大正11)年築。

旧・三井銀行小樽支店  【小樽市指定歴史的建造物】
 1927(昭和2)年築。 曾禰中條建築事務所の設計で、小樽市初の鉄筋鉄骨コンクリート造り。正面の5連の大きなアーチとファサードが美しい姿を形成しています。2002(平成14)年に三井銀行の後身である三井住友銀行の小樽支店が閉店したことにより、小樽市から都市銀行は姿を消しました。
 2017(平成29)年9月から、「旧北海道拓殖銀行小樽支店」「旧高橋倉庫」と共にニトリ小樽芸術村として活用され、内部が一般公開されています。

旧・百十三銀行小樽支店(現・小樽浪漫館) 【小樽市指定歴史的建造物】
1908(明治41)年築。池田増次郎の設計です。

旧・第百十三国立銀行小樽支店(現・オルゴール堂海鳴楼) 【小樽市指定歴史的建造物】
1893(明治26)年築。平屋建ての銀行建築です。

旧・安田銀行小樽支店(現・花ごころ小樽店) 【小樽市指定歴史的建造物】
1930(昭和5)年築。ギリシャ風の典型的な銀行建築。
戦後は富士銀行小樽支店、日刊北海経済新聞社を経て現所有となっています。

旧・第四十七銀行小樽支店(現・北海道紙商事) 【小樽市指定歴史的建造物】
昭和初期の建築。実は木造2階建てで、壁面をタイル張りとしています。

○オフィスビル&商店


旧・日本郵船小樽支店 【国指定重要文化財】
 1906(明治37)年築。佐立七次郎の設計で建設されたもので、1906(明治39)11月には、 ポーツマス条約に基づく日露の樺太国境画定会議が会議室で行われ、 会議終了後に貴賓室で祝盃が交わされた歴史的な史跡でもあります。


旧・三井物産小樽支店 (現・松田ビル) 【小樽市指定歴史的建造物】
 1937(昭和12)年築。松井貴太郎の設計で、地下1階地上5階の事務所ビルとして建てられたもの。外観は黒御影石の貼られた玄関と2階以上の白いタイル壁が鮮やかなコントラストを見せます。しかし他は特に装飾もない、アメリカ的建築で現在のオフィスビルの先駆けです。なお、玄関ホールは琉球産大理石で内装されています。


通信電設浜ビル(現・共和浜ビル) 【小樽市指定歴史的建造物】
 1933(昭和8年)建築の、北海道初の貸しビル。石原慎太郎・裕次郎の父親も勤めていたとか。

荒田商会 【小樽市指定歴史的建造物】
1935(昭和10年)築。


旧・名取高三郎商店(現・ナトリ小樽支店/小樽大正硝子館) 【小樽市指定歴史的建造物】
1906(明治39)年築。

旧・金子元三郎商店(現・小樽オルゴール堂カリオン堺町店) 【小樽市指定歴史的建造物】
1887(明治30)年築。金子元三郎は初代小樽区長を務め、その後は衆議院議員に数回選出された人物です。
建物は両袖にうだつを立て、2階正面の窓は漆喰塗りの開き窓としています。

岩永時計店 【小樽市指定歴史的建造物】
1896(明治29)年築。時計卸商、初代岩永新太郎の店舗として建てられたものです。ちなみに店員で編成された楽団を持つハイカラな商店だったとか。

旧・久保商店 【小樽市指定歴史的建造物】
近代建築が立ち並ぶ風景と絡めて。一番右の建物で、1907(明治40)年築。小間物雑貨卸を営む久保商店の店舗です。

○倉庫


小樽運河の風景


旧篠田倉庫 【小樽市指定歴史的建造物】
1925(大正14)年築。小樽運河の海側の倉庫で、木骨煉瓦造2階建です。


旧・右近倉庫 【小樽市指定歴史的建造物】
 1894(明治27)年築。当時としては大規模な倉庫で、小屋組にはクイーンポストトラス(対束小屋組)が使用されているのが特徴です。


旧・広海倉庫 【小樽市指定歴史的建造物】
1889(明治22)年築。加賀に拠点をおいた海運商、広海二三郎が建てさせた倉庫です。


旧・増田倉庫 【小樽市指定歴史的建造物】
 1903(明治36)年築。右隣に旧広海倉庫、旧右近倉庫と大規模な倉庫が並ぶ景観は、最盛期の小樽運河沿いの倉庫群の雰囲気を今に伝えています。

旧・日本石油倉庫 【小樽市指定歴史的建造物】
1920(大正9)築。1998(平成10)年に新しい石を用いて再建されています。


旧・日本郵船小樽支店残荷倉庫 【小樽市指定歴史的建造物】
1906(明治39)年築。 隣接する日本郵船小樽支店と同時に建てられました。

旧・渋澤倉庫(現・PRESS CAFE) 【小樽市指定歴史的建造物】
1895(明治28)年築。本体の前面に2棟の角屋が突き出た、変わった形状の倉庫です。

旧・大家倉庫 【小樽市指定歴史的建造物】
1891(明治24)年築。石川県出身の海産商、大家七平によって建てられたものです。

旧・小樽倉庫(現・小樽市総合博物館運河館&運河プラザ) 【小樽市指定歴史的建造物】
1890(明治23)年〜1894(明治27)年にかけて建築。煉瓦造の事務所を中心に左右対称に展開しています。

旧・向井呉服店支店倉庫  【小樽市指定歴史的建造物】
1907(明治40)年築のレンガ造りの倉庫。

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