九州鉄道記念館〜福岡県北九州市門司区〜


○解説

 2003(平成15)年8月9日に、JR九州が門司港駅に隣接してオープンさせた鉄道博物館。1891(明治24)年に建てられた旧・九州鉄道本社(門司港地区最古の歴史的建造物)を本館として活用し、九州鉄道の車両であるチブ37が展示。さらに、館外にホームと屋根のある車両展示場を設置。九州で活躍した9両の車両が展示されているほか、3両が前頭部のみカットモデルとなって展示されています。なお、北九州市とJR九州の間で無償貸借契約が締結され、指定管理者により運営されています。
 (上写真&解説:裏辺金好)

○場所



○風景


旧・九州鉄道本社 【国登録有形文化財/近代化産業遺産】
1891(明治24)年築。九州鉄道は門司港駅開業と同時に、博多にあった仮本社をこの地へ移転。明治40年に国有化されるまで、九州各地へ路線を広げ続けました。国有化後は鉄道院、鉄道省、日本国有鉄道が使用。現在はJR九州(九州旅客鉄道)の所有で、今に至るまで一貫して鉄道関連施設として使われ続けているのが特徴です。(撮影:裏辺金好)


本館内部の様子
本館内部は、半分を吹き抜けの構造としつつ、レンガのレトロな雰囲気を損なわないような印象を構成しています。(撮影:裏辺金好)


九州の鉄道大パノラマ
本館内に展示されている鉄道模型。(撮影:リン)



チブ37
1909(明治42)製造。九州鉄道時代に設計され、のちの国鉄である鉄道院が47両製作した客車の37番目で、1929(昭和4)年に大分県の耶馬渓鉄道(→大分交通耶馬線)に譲渡。1971(昭和46)年まで活躍しました。その後、大分県中津市の汽車ポッポレストランで保存されていましたが、九州鉄道記念館開館にあたって寄贈。非常に貴重な車両で、これまでの保存に心から敬意を表したいと思います。(1枚目撮影:リン、2枚目撮影:裏辺金好)


59634
 1922(大正11)年製造。 初の国産貨物用機関車である国鉄9600型の一員(通称:キュウロク)。770両が製造され、九州全域でその姿を見かけることが出来ました。この車両の場合、車番から「ごくろうさんよ」と親しまれていたとか。なお、1974(昭和49)年に山形県の米坂線から、福岡県の後藤寺機関区に転属してきたという、北から南への大移動を行った車両です。(撮影:裏辺金好)


C59 1
 1941(昭和16)年製造。東海道本線、山陽本線などで活躍。1956(昭和31)年には門司に配属となって、今は無き寝台特急「あさかぜ」、急行「雲仙」などを牽引します。さらに1962(昭和37)年には熊本に転属しますが、1965(昭和40)年の熊本電化に伴って廃車となりました。
(以下、特記があるまで撮影:リン)


ED10 35
 1941(昭和16)年製造。関門トンネル開通と、この部分のみが同時に電化されたために登場した電気機関車。

ED72 1
 1961(昭和36)年製造。北九州地区が電化された時に登場した交流電気機関車で、暖房用ボイラーを搭載したため車体長が長く、中央に動力の伝わらない中間台車があるのが特徴。なお、保存されている1号機は試作機のため、量産タイプとは細部が異なります。



キハ07 41
 1937(昭和12)年製造。戦前を代表する機械式(クラッチ式)気動車で1両でも運転できる両運転台構造。2両連結も可能ですが、その際にはお互いの車両の運転士が合図を送りながら運転していたとか。なお、1962(昭和27)年にはディーゼルエンジン搭載の気動車に改造。1969(昭和44)年に国鉄宮原線(現在は廃止)で活躍を終え、豊肥久大運輸センター(旧:豊後森機関区)で保管されていました。

 長年にわたり特に保存措置が執られていなかっため朽ち果てつつあった同車ですが、九州鉄道記念館での公開にあたり徹底的に修繕。見違えるような姿になっています。



キハ07 41
 こちらは座席の様子。



クハ481 603
 1969(昭和44)年製造。日本を代表する交直流型特急電車481系・485系(1964年登場)の一員で、ご覧のようにボンネット型先頭車。全国で活躍した485系ですが、九州では「有明」「にちりん」「かもめ」「みどり」「にちりん」などで活躍しました。なお、展示されている車両はグリーン車であるクロ481として誕生したものを、1983(昭和58)年に普通車に格下げしたものです。(写真2枚目は撮影:裏辺金好)



クハネ581 8
 1967(昭和42)年製造。世界初の寝台電車特急「月光」として登場した581系・583系の一員で、昼間は車内を変形させることで座席特急としても利用できる画期的な車両。485系と同じく交直流型で、電気方式が主に直流の本州と、交流の九州の双方で運転できました。

 九州では「月光」の他、「つばめ」「有明」「にちりん」で活躍。しかし、その画期的な構造が災いし、山陽新幹線開業と夜行列車衰退と共に寝台特急運用からは次第に撤退。昼間特急のみの活躍としては座席に難があり、同車は1984(昭和59)に交流型近郊型電車、つまり普通列車に運用する715系へ改造。2000(平成12)年まで活躍し、保存に合わせて外観については581系時代へ復元されました。


スハネフ14 11
 1971(昭和46)年製造。寝台特急「富士」などで活躍した客車で、開館10周年を期に新たに追加展示されました。


セラ1239
 1960(昭和35)年改造。かつて北九州の産業を代表していた石炭を輸送するために改造されて登場した貨車(セラ1形)。1両だけだと貧弱ですが、かつてはこれが何両も連なり、石炭を満載にして走り回っていました。
(撮影:裏辺金好)

クハ481 236/ED76 1/EF30 3
 クハ481形は1973(昭和48)年製造され、特急「にちりん」などで活躍。JR九州発足後の塗装である、RED EXPRESS塗装で展示されています。
 また、ED76形は1965(昭和40)年に製造され、九州内の客車列車の牽引機として活躍、
 EF30形は1961(昭和36)年に世界初の量産交直流電気機関車として製造され、関門トンネルを中心に活躍しました。

クハ481 236/ED76 1/EF30 3
 外観の後ろ側。この3両は運転席が公開されています。(撮影:AC20kV−DC1500V)


クハ481 236背面
(撮影:AC20kV−DC1500V)

ED76 1運転台
(撮影:AC20kV−DC1500V)

EF30 3運転台
(撮影:AC20kV−DC1500V)

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