第3回 飛ぶための翼の秘密@

今回の登場人物
裏辺金好所長
 デュークとムスタファ顧問の洗脳作戦が実を結びだしたのか、順調に飛行機の世界へ向かっている模様・・・。
デューク
 自称航空研究局局長。
 所長を飛行機の世界に引きずり込もうと無理やり解説しているが、自らの不勉強を逆に実感する羽目に・・・。

1.微妙に膨らんでいる主翼
 飛行機で移動中のデュークと所長・・・。

裏辺金好所長(以下「所長」)
 うむ・・・良い天気じゃな。
デューク  ま・・・そりゃ空の上ですからね〜。
所長 とはいえだ・・・腹が減っては戦はできん。機内食をもらってきたまえ。
デューク んな無茶な。国内線の普通席に、機内食サービスはないですから〜。スーパーシートならいざ知らず。
所長 ではスーパーシートに移るぞ。
デューク そんなの無理です〜。乗る前に言ってくださいよ。
所長 ちっ・・・。つかえんな。
デューク すみません・・・(って、なんであやまらんといかんのだ?)。
所長 ん?何か言ったか?
デューク いえ・・・なにも。
所長 しかし・・・飛行機の翼というのは、よくよく見てみると、上の方に向かって膨らんでいるのだな。
デューク そうですね。おっしゃられるとおりです。
所長 なぜ、膨らんでいるのかね?
デューク さあ(適当)
所長 ジロリ(不信な視線)。
デューク ・・・嘘です。ご説明いたします。

2.翼の膨らみが揚力を生む

デューク 今回も写真を見ていただきましょう。
所長 主翼の付け根の部分じゃな。
デューク はい。所長がおっしゃられたとおり、主翼は平べったいのではなく、膨らんでいるのが良くわかると思います。
所長 それに、翼自体も傾いているように見えるが。
デューク その通りです。翼も傾いています。

デューク 続きまして、主翼の下部の様子を見てみましょう。こんな感じになっています。
所長 おや・・・こちらも膨らんでいるではないか。
デューク そうですね。ただし、上部の膨らみに比べて、ふくらみが少なくなっています。
所長
 で・・・上も下も膨らんでいる理由は何なのだ?

デューク 簡単に申し上げれば、流線型の方が丈夫な翼を作れるからですね。
所長 では、上部の方がふくらみが大きい理由は?
デューク 前回、揚力の発生するメカニズムを簡単にご説明しましたが、そのことが大きく関連しています。というのも、翼の上部が膨らむことで、翼の上部を通過する気流の流れが速くなります。すると、圧力が弱くなるわけで、自然と翼の下部の方が圧力が強くなり、翼を斜めにしなくても、揚力を発生させることができます。
所長 なるほどなるほど・・・良く考えられているものだな。

3.翼の膨らみの落とし穴

デューク とはいえ、このような措置も万能というわけではありません。
所長 何・・・だと?どういうことだ?
デューク つまり、この様な翼型でも揚力を発生させることができなくなる状態が存在するからです。
所長 そんな状態があるのか。
デューク 具体的には遷音速状態の場合ですね。
所長 遷音速?。
デューク 飛行機の周りの気流が、音速を超えている気流と超えていない気流で混ざっている状態です。
所長 意味がわからん(笑)。
デューク 先ほど、膨らみが大きい側の空気は気流の流れが速くなると申し上げましたが、その速くなった気流が周りの気流よりも一足速く音速を超えてしまうことがあるのです。
所長 あららら・・・そんな落とし穴が。しかし、音速を超えると何か不都合があるのか?
デューク 音速を超えると、衝撃波が発生しますよね。この衝撃波というのはその下部の圧力を高めてしまいます。つまり、音速を超えると、その音速を超えた部分の圧力が高まってしまうわけです。

所長 この場合だと、翼の上部の気流が速くなり音速を突破。すると上部の圧力が高くなって・・・下部の圧力と大差なくなってしまう・・・。
デューク そうですね。揚力というのは、翼の上部と下部の圧力差があって初めて生じるのですから、圧力差がなくなってしまったら揚力はなくなってしまいます。ちなみにこの揚力がなくなってしまった状態を失速(ストール)といいます。
所長 失速というと、速度を失ったという意味に聞こえるがな(笑)。
デューク 私もずっとそう思っていました(笑)。なお、音速を超えて失速することを衝撃失速(ショックストール)などとよびます。
所長 奥が深いな。

4.迎え角と次回への前振り

所長 ところで、さっき見た写真だと、翼が少し傾いて装備されていたと思ったが?
デューク そうですね。確かに傾いて装備されていました。こうすることで、飛行中、気流に対して角度を持つことになりますが、このような角度のことを迎え角といいます。この傾きも揚力を発生させるために必要な装備です。飛行機を設計する際に、迎え角をどうするのかは非常に重要な要素といえます。
所長 ほうほう、それで?
デューク と・・・話を振ったところで次回ということにしましょう。
所長 こらこら・・・。
デューク キャビンアテンダントのお姉さんが飲み物持ってきてくれましたよ。
所長 しょうがないな・・・。



棒