第30回 1990年〜99年(4):EUの誕生

○ヨーロッパ各国が自由に行き来可能!

 1993年11月1日、前年2月に結ばれたマーストリヒト条約が発効して、ヨーロッパ連合(EU)が発足します。これによってECはEUとしてさらに発展し、ヨーロッパ中央銀行の設立や単一通貨の導入が目指されます。さらに1995年3月には、シェンゲン協定が発効し、ベネルクス3国、スペイン、ドイツ、フランス、ポルトガルの間で旅券審査廃止。パスポートを見せることなく、自由に国境が移動できるようになりました。

 ちなみに、シェンゲンとはルクセンブルク大公国にある都市の名前です。また、2016年3月現在で協定が適用されるのは、EU加盟国のうちオーストリア・ベルギー・デンマーク・フランス・フィンランド・ドイツ・ギリシャ・イタリア・ルクセンブルク・オランダ・ポルトガル・スペイン・スウェーデン・チェコ・エストニア・ハンガリー・リトアニア・ラトビア・マルタ・ポーランド・スロバキア・スロベニアの22か国と、ノルウェー・アイスランド・スイス・リヒテンシュタインの計26か国です。今後は、ブルガリア・クロアチア・キプロス・ルーマニアも予定されています。

 また、1997年6月にEUの基本条約となるアムステルダム条約が結ばれます。
 詳しく書きますと、マーストリヒト条約で定めた外交・安全保障、経済通貨、社会の三面統合が必ずしも期待されたように進んでいない状況を受けて、過半数の国々の間で合意が成立すれば、これらの国の間でまず統合を実施しうることを明文化。

 そして、共通外交・安保政策に関する意思決定については全会一致に配慮しながら、しかし多数決で共同行動を決めること、さらにEUの法的性格を確認し、ヨーロッパ委員会とヨーロッパ委員長がこの権限を代表することを定めて、執行権力に法的裏付けを行い、EUの政治体制を固めました。

 さらに、2004年5月1日にはチェコ、エストニア、キプロス、ラトヴィア、リトアニア、ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロヴェニア、スロヴァキア、2007年1月1日にはブルガリアとルーマニア、2013年7月1日にはクロアチアが欧州連合に加盟がEUに加盟し、現在は28か国にまで拡大しています。しかし、2016年にイギリスが国民投票によって、EUからの離脱を決議しています。

○単一通貨「ユーロ」の導入

 また、EUに加盟する多くの国々では、共通の通貨として単一通貨「ユーロ」を導入しています。

 これは1999年1月から、イギリス、デンマーク、スウェーデン、ギリシャを除く11カ国で(電子的な)決済用仮想通貨として導入が始まったもので、2002年1月から現金としても流通が始まり、異なる国が同じ通貨を使うようになります。

 当初導入しなかったギリシャは2001年から決済通貨、翌年から現金としてもユーロを導入したほか、2015年1月1日からリトアニアも導入するなど、EUに加盟している全28か国中19か国でユーロが法定通貨とされています。
 (EU内でユーロを法定通貨としている国:アイルランド・イタリア・エストニア・オーストリア・オランダ・キプロス・ギリシャ・スペイン・スロバキア・スロベニア・ドイツ・フィンランド・フランス・ベルギー・ポルトガル・マルタ・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク)

○EU本部のあるブリュッセル


 さて、EUの主要機関はベルギーの首都、ブリュッセルにあります。ちょっと見てみましょう。


 欧州議会は、フランスのストラスブールの他に、ベルギーのブリュッセルにあり、両方で議会が開催されています。議会が複数の場所にあるのは、ちょっと不思議なものですね。


 十字架のような形の建物が、ベルレモン・ビルと呼ばれる欧州委員会の本部ビルです。欧州委員会は、法案の提出、決定事項の実施、基本条約の支持、日常のEUの運営などを担当しています。ちなみに撮影当時、写真右手のように2014年からのラトビアのユーロ導入が大きくPRされていました。


 その向かい側にあるのが、EUの政策決定機関である欧州連合理事会や、EU加盟国の国家元首または政府の長などで構成される欧州理事会があるユストゥス・リプシウスという建物。


 ユストゥス・リプシウスと、ベルレモン・ビルはこんな位置関係です。

○英仏海峡トンネルの開通


 1994年5月、イギリスとフランスの間にあるドーバー海峡を貫通する英仏海峡トンネル(英語では単にthe Channel Tunnel)が開通しました。それこそナポレオンの頃からの悲願であり、トンネルの開通式にはイギリスからエリザベス女王、フランスからミッテラン大統領が出席。

 1994年11月14日からは、上写真のユーロスターが運転を開始し、鉄路によってロンドンとパリなどを直結するようになりました。ちなみに、イギリスはシェンゲン協定を結んでいないので、イギリスからの出入国の際にはパスポートがチェックされます。

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