考古学レポート2 旧石器時代と呪われし奥義「神の手」
担当:大黒屋介左衛門
1.はじめに
考古学レポート第2回は呪われし奥義「神の手」と題しお送りしたいと思います。
1.旧石器時代と捏造
石器時代、読んで字のごとく金属器が登場する以前のことです。石器時代の名称はCh.J.トムセン(デンマーク)が1836年に提唱した三時代区分法に始まり、これは人類の歴史を石器時代、青銅器時代、鉄器時代に区分したものです。
J.ラボックが1865年にその著書で提唱した二時代区分法は、簡単に言うと石器時代で農耕牧畜が行われる以前とその後を分けたものです。で、その前者を旧石器時代と呼称します。一般的にはこの旧石器をさらに前期、中期、後期の三期に区分しており、日本で確認されているのは後期旧石器文化です。で、この三期区分、地質年代的に申しますと鮮新世から更新世にあたり、それぞれ前期は原人、中期は旧人、後期は新人相当に当たります。旧石器の時代区分に関してはほかに三期区分で言う前期中期を一緒にした二時代区分法などもあります。
日本においては近年まで前期中期旧石器文化ともにあったとされていましたが、あの人の告白ですべて白紙になったのは記憶に新しいことと思います。その後の日本考古学協会などによる確認調査において確実にその存在が確認できているのが後期旧石器文化です。
2.なぜ捏造を許したか?
なぜ捏造を許したか?なぜ捏造がもっと早い段階で見抜けなかったか?
痛い指摘です。この事件は考古学に携わる人間に反省と教訓を残しました。この事件が起こった背景には考古学における遺跡の認識の仕方にも原因の一端がうかがえます。皆さんは遺跡というとどういうものを想像されるでしょうか?住居址などの遺構、土器片などの遺物それらをセットに遺跡と考えがちですが、ちがいます。遺跡とは遺物、遺構それぞれ単独の検出でも一つの遺跡と認識されます。
したがって遺構の検出の極端に少ない旧石器時代の遺跡においては捏造がきわめて簡単に行えるという弱点があるのです。彼の行った捏造には縄文時代の技法を用いた石器も使われるお粗末なものもありましたが、これらが学会による追求ではなく、新聞社によるすっぱ抜きで公になったのは多いに反省すべきところです。日本における考古学が歴史学の一翼を担っている以上、考古学においても資料批判は常に行われねばならないでしょう。いや、それ以前に考古学が学問として成り立っているからにはこれは常に心がけねばなりません。
3.旧石器文化概要
さて話は戻りまして、ここからは旧石器文化の概要の説明に入りたいと思います。
今をさかのぼること数万年前、少なくとも三万年以上前人類はその大いなる旅の終着地のひとつ日本列島に到着しました。これにはおおよそ二つのルートが想定されてます。ひとつは当時地続きだったと考えられるシベリア〜サハリン〜北海道と越えてきた北方ルート、もうひとつがはるか大海原を越えて東南アジア〜琉球列島〜九州とやってきた南方ルートです。最近NHKでやってましたね。
さてここでは特に北方ルートを中心に話を進めましょう、なぜって?それは旧石器文化がこの北方ルートを通ってきた人々の文化を中心としているからです。彼らがどんな生活をしてたかというと、そのスタイルはいわゆる狩猟だったと考えられます。その対象はマンモスをはじめとする大型哺乳類です。彼らはこのマンモスを追っかけてはるばるシベリアからやってきたと考えられます。彼らの使っていた道具はナイフ形石器、細石器などです。細石器はさらに細石刃などに細かく分類されます。
細石刃、これが重要、テストに出ます(うそ)。細石刃とはその名の通り、小さな刃です。黒曜石などを原料にした薄く鋭い、かみそりのような石器で、おそらく木や骨などに装着したと考えられます。これの優れていた点はまずその切れ味、寒冷地に住む大型哺乳類の分厚い皮膚や皮下脂肪を容易に貫いたと考えられます。
また、切れ味が低下しても新たな細石刃を装着しなおすことで再度使用が可能になるなど優れた狩猟用具でした。さらに獲物を追いかけ移動を繰り返す彼らにとって小さくて軽く、原材もちょっぴりで済むのも都合が良かったと想像されます。
彼らの住居は?衣服は?というと良くわかりません。日本は世界有数の酸性土壌で衣服はおろか骨さえ条件が整わないと消えてなくなるからです。ただ予想されるのは住居は獲物の獣皮を用いたテント状のものだと推測されます(シベリアでそのような発掘例があります)。洞窟や、岩陰も考えられますがあまり例がありません。マンモスのいたシベリアは当時広大な草原(湿地)ですから日本に渡ってきたのも似たような土地を好んだでしょう。当然そのような土地には洞窟も岩陰も少なかったでしょうから、やはりテント暮らしが妥当と思われます。衣服も獣皮の加工品と想像されます。
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