14回 さらばソ連!ゴルバチョフの改革
●ゴルバチョフの登場 |
モスクワ・クレムリンの聖ワシーリー大聖堂 1555〜60年、雷帝イワン4世によって、カザン征服記念としてたてられたもの。また、クレムリン地区はソ連から現在のロシアに至るまで、ずっと政治の中心である。クレムリンとは「城」と言う意味。 写真:MONIQUE'S FREE MATERIAL ソ連最後の指導者にして、最年少でトップに立ったのが、このゴルバチョフ。1985年に彼は54歳で書記長になります。モスクワ大学卒という、大卒という経歴も書記長では最初で最後です。 ゴルバチョフが書記長になる前から、ソ連は完全に崩壊の道を歩み始めていました。というのも、至る所にソ連型システムの弊害が噴出していましたし、先のレーガン政権の軍拡政策にも対策を取らなくてはなりません。 つまりソ連としては、このまま軍拡競争に参加するか、もしくはそちらは諦め、社会改革を行うか、この2つに1つが突きつけられていたのです。しかし、もうこれ以上軍拡をするだけの力はありません。といって、ブレジネフ政権は社会改革を行うこともなく終わり、そしてゴルバチョフに課題が回ってきたのです。 鉄の女・イギリス首相サッチャーをして 「ゴルバチョフは気に入った。彼となら交渉できる。」 と言わせたこの男が、皮肉にもソ連に終焉をもたらすことになります。
また、なんとゴルバチョフはブレジネフ時代をバッサリと「停滞の時代であった」と批判。つまり「今から改革をするぞ!」と意気込みをみせ、政治改革がスタートしたのです。とは言え、最初はなかなか抵抗もあれば、「停滞の時代」による官僚機構の弊害が深刻で、上手くいかない。そのような中でチェルノブイリ原発事故という大惨事が起こります。
まず、場所はウクライナの首都キエフの北方およそ130kmのベラルーシとの国境に近い町で、発電所自体はさらに20kmの距離にあります。そして1986年4月25日、4基の原子炉のうち4号炉が定期検査のため運転を停止します。これに合わせて実験も行うことになっていました。 しかし、実験は電力需要の少ない夜間にやってくれ、それまでは出力50%で良いから発電してくれ、と要請されていたため深夜11時からスタート。当然、眠い、待つのも疲れる、さらに人手不足。しかも、「実験するにあたって、事故と勘違いされて安全装置が働いたら困る」と、わざわざ緊急炉心冷却装置システムを切断してしまいます。 そんな非常に危険な状態で実験をスタート・・・したところ操作ミスで出力低下。難しいことはここでは書きませんが、当然出力UPを図ったり、今度は冷却装置が作動しないものですから、日が変わって26日深夜、急激な加熱にビックリして緊急停止を図ったり・・・としているうちに、なんと中性子を吸収する制御棒が上手く奥まで入らず、一方で制御棒先端部に入れてある黒鉛が核分裂を促進し、原子炉が暴走開始。 そのような中、加熱した水蒸気から発生した水素。 そして爆発がドーン!!と起こってしまったのです。 これによって原子炉の防護壁が爆風で吹き飛んでしまい、5000万キュリーと言われる放射性物質が大気中に飛散し、ウクライナ、ベラルーシはもちろん、一部はイギリス、トルコにまで達したそうです。しかも付近の住民には、特に危険は知らされず事故が起こったあとも、彼らは「なんだ、またいつの事故か」程度の認識で釣りをしたり、メーデーの準備をしたり、子供は学校に行ったりしていました。 27日の午後になってようやく避難命令が出ましたが、避難した場所は遠くない場所だった、と言う始末。しかも、汚染された農作物は、何を血迷ったか全国に出荷されてしまいます。 「汚染農作物を捨てるのは勿体ない。みんなで少しずつ食べれば怖くない。危険な農作物の処分も出来て一石二鳥」 という意味合いの政府関係者のメモも発見されたとかで、もう開いた口がふさがりません(1986年6月4日付の「ジャーナリストに対して記者会見をする人向けの」議事録32号添付資料)。 このため、多数の人達が被爆。死者はソビエトの当初発表では31人でしたが、もちろんその程度で済むはずはなく、さらに未だに後遺症に悩む人達も多くいます。特に、子供の甲状腺癌(がん)は深刻な問題で、現在はかなり改善されては来ましたが、最初の頃は手術の技術も低い状況でした。 ちなみに、菅谷昭(すげのや あきら)さんという医師は25年間務めていた信州大学をやめてベラルーシに渡り、手術法や治療に多大なる功績を残しています。とにかく手術の跡が残らないと評判で、さらに患者とのコミュニケーションも大事にしたことが好評だったようです。こんな感じで、世のため、人のために仕事が出来たらいいですね。もちろん、そのためには自分自身を磨かないといけませんが・・・。 なお、著作を左に紹介しておきましたので、宜しければクリック。ちなみに、購入可能です。 さあ、次のページでいよいよソ連の崩壊を見ていきます。爆笑エピソードと共に消えたソ連。どうぞ! |