第134回 「アール・ヌーボー」と「アール・デコ」って?
担当:
裏辺金好
建築物、家具、ガラス工芸、ポスター、挿絵などを眺めていますと、その解説文に「本作品は、アール・ヌーボー様式の・・・」なんて言葉が出てきます。しかし、アールヌーボーって何よ? という質問には、「そんなのは知っておくべき常識」なのか意外に答えてくれません。
そこで今回は、この「アール・ヌーボー」と、同様によく登場する「アール・デコ」について、簡単にご紹介します。
まずアール・ヌーボーとは、「新しい芸術」という意味のフランス語(アールというのは、英語だとアート、日本語で芸術という意味)。19世紀末〜20世紀初頭の約30年にかけて、ヨーロッパやアメリカでおこった革新的な芸術運動です。そのコンセプトは、「産業革命以降、粗悪になった実用品に芸術性を取り戻そう!」というもので、芸術性が求められる様々な分野の作品に波及しました。ゴシック美術や、日本の浮世絵の影響も非常に受けています。
して、その特徴は?
と言いますと、つる草のように、
うねる曲線を多用して組み合わせた、という点ですね。
物凄くわかりやすい例を挙げれば、スペインの建築家として名高い
ガウディの作品でしょう。
また、
エミール・ガレや
ルイス・C・ティファニーによるガラス工芸品、花瓶などのインテリアにおける作品も非常に有名ですね。
(このティファニー氏は、あの有名な宝石店ティファニーを設立したチャールズ・ルイス・ティファニーの息子)
ポスターでは
アルフォンス・ミュシャも有名です。
ちなみに、アール・ヌーボーという言葉の由来ですが、これは
サミュエル・ビングという美術商が1895年にパリで開店した店の名称「アール・ヌーボー」からきています。このことに代表されるように、アール・ヌーボーは基本的にフランスが発祥で、狭い意味でのアール・ヌーボーはフランスの芸術として解釈することもあります。
アール・ヌーボー、アールデコ双方を代表する宝飾工芸芸術家、ルネ・ラリック。こちら、ラリックが作ったトンボのカーマスコットが搭載されたクラシックカー(ブガッティ)。1928年の作品。
(箱根ラリック美術館にて) |
一方、アール・デコは1920〜30年代に起こった芸術革新運動。大量生産には向かず、デザインに凝りすぎたアール・ヌーボーに代わって、簡潔さと合理性を目指したもので、やはりフランス発祥です。名称の由来は、1925年にパリで開催された現代装飾・工業美術国際展 L'Exposition
international des arts decoratifs et industriels modernes の略称から。
して、その特徴は?
と、言いますと、すっきりとした幾何学的な線とパターン化された模様を取り入れた点です。
のちにアメリカへ波及すると、蒸気機関車から高層ビルまでアール・デコ様式が大ヒット。特に、ニューヨークの摩天楼(クライスラービル・エンパイアステートビルなど)が代表例です。また、日本では、朝香宮邸(現・東京都庭園美術館)でアール・デコ様式をふんだんに取り入れた内装を見ることが出来ます。
アメリカが大恐慌で経済力を一時的に失ったこともあり1935年以後は衰退していますが、こちらも現在なお人気の高い様式で、その精神を受け継ぐ作品は数多く誕生しています。
以上、ざっとですがアール・ヌーボーとアール・デコについてざっと解説してみました。
具体的にどんな作品があるのか知りたい方は、インターネットで検索すれば色々出てきますので、ぜひ探してみてください。