何なく使っている道具。しかし、これにも恐るべき歴史と、そして改良が積み重ねられています。今回ご紹介するのは「ホッチキス」。そう、紙を束ねてガチャンとやってしまう奴ですね。まるで宴会ネタのような雑学の気もしますが、しかし、裏辺研究所は徹底的にご紹介していきます。え?なんで、機関銃の話もあるのかって?読めば解ります。
日本でホッチキスを作り続けて50年にもなる、マックス社のHPでは、ホッチキスの歴史について次のように書いています(図は、初期のホッチキス。あえて抜粋。学問の普及のため、ご免なさい)。
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手元にある昭和53年発行の資料に、ホッチキスは機関銃の発明者であるベンジャミン・B・ホッチキス(1825−1885)によって発明されたとあります。機関銃とホッチキスではあまりにも隔たりがあるようですが、マシンガンの弾送り機構にヒントを得てホッチキスの針送り装置が考案されたと記されています。
平成元年、日本テレビ(謎学の旅)が、ホッチキスの発明者を明らかにするため、ベンジャミン・B・ホッチキスの出身地である米国コネチカット州を訪れました。
現地の方の話によると、驚くことに、弾送りと針送りの機構がバネをもとに考えられている点でまったく同じとのこと。やはり彼が生みの親か?と、取材スタッフは色めき立ったのですが、残念ながら文献などによる証明はできませんでした。
また平成6年になり、フジテレビ(なるほど・ザ・ワールド)ではホッチキスの発明者は別におり、ベンジャミン・B・ホッチキスは機関銃の発明者で、弟のエーライ・H・ホッチキスがE・H・ホッチキス社を興したと紹介されました。
ホッチキスの発明者は、依然霧の中ですが、ともかくE・H・ホッチキス社はコネチカット州にあったということですから、ホッチキスのふるさとは米国コネチカット州ということになるのでしょうか?
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そんなわけで、実はホッチキスの生みの親は、確たる事は解っていません。ちなみにこのホッチキス氏。機関銃の発明・・とありますが、別にそこまで発明した人ではないようですね。ついでに、ここで機関銃の生みの親について記しますと、14世紀から開発が続けられた後、1860年代にアメリカのリチャード・ガトリングが発明した、ガトリング砲が原点です。あの、6本の砲身がぐるぐる回りながら連射する奴ですね。
そして、1884年に、やはりアメリカ人のハイラム・マクシム氏が開発したマクシム機関銃が、今の機関銃の親です。そして彼はマクシム社で作った製品は、植民地戦争で絶大な威力を発揮し、さらに日露戦争でロシア軍に使用され、戦果を挙げています。
と、ここで日本が使った機関銃は?ということになります。この時に登場するのがホッチキス社の機関銃なのであります。そう、日本軍が使った機関銃はホッチキス社。しかし、その後は国産のものになり、有名な38式歩兵銃とか何とか・・になるみたいですね。この辺は詳しくないので省略します。
このホッチキス社については最後でまた見ていきます。
そして、またホッチキスに話を戻し・・。HPより抜粋。本当は、そんな事じゃいけないのだろうけど、特に修正加える必要ないので・・。
日本人によるホッチキスの発明は、特許公報によると明治44年「
自動紙綴器」。発明者は
垣内清八氏、大正元年「A式紙綴器」。発明者は天野修一氏らが最初です。「自動綴器」はかなり大型のようですが、「A式綴紙器」はホッチキス社製のものとよく似ています。
大正3〜4年には、アメリカ製の
アクメ(1号ホッチキス)が輸入されこのころ針は鉄板をプレスしたムカデ形(アクメ針)でした。大正7年になると
伊藤喜商店<ハト印>、
堀井謄写堂<コスモス印>が国内で生産されるようになりました。
大正15年にはそれまでの鋳物製とは違い、プレス加工のジョイント(2号)が
雨森文永堂から発売。その後1年程度で、ドイツから3号の綴り針が輸入され、昭和3年に3号針を使用するスマート3号が作られました。
昭和10年頃には
向野事務器製作所(東京都大田区)の向野光雄社長は2号・3号・9号ホッチキスを設計、製造していました。当時、3号をスマート、2号をジョイント、9号をホルダーと呼んでいたそうです。
昭和21年に山田興業(株)( 現在マックス(株))が3号ホッチキスの生産を開始したことにより、戦後のホッチキスの歴史が始まりました。
マックス(株)は創業時は山田航空工業(株)と称し、零式戦闘機の尾翼部品メーカーとして昭和17年に発足しました。戦後、新発足にあたり山田興業(株)と社名を改め、『平和産業に徹し、文化に貢献する』を掲げて、向野氏からホッチキスの製造技術を引継ぎ、終戦から半年後の昭和21年には早くも「ヤマコースマート」の生産を開始しました(左図)。
まもなく1号・2号・5号・9号などのホッチキスも手掛けるようになり、品揃えが進みました。3号ホッチキスはその後も改良されましたが、クロームメッキデザインは当時のままで、卓上型のスタンダードタイプとして現在もロングセラーを続けています。
「ホッチキス」の名前を一般的にしたのは、なんといっても昭和27年7月に発売した小型ホッチキスSYC・10(シック・10)です。
それまでのホッチキスは紙綴器と呼ばれ、オフィスの部や課で購入する事業所向けの用度品でしたが、SYC・10は小型、軽量で指先の力で綴じることができる画期的な製品でした(今の製品とよく似ている)。
また、価格も200円と低価格であったため、学校、家庭へと急速に普及し、数年の内にホッチキスは一人一台が常識の文房具になりました。
昭和27年に発売された小型ホッチキスSYC・10は、社名の変更にともない昭和29年には「MAX・10」と名称が変わりました。以降、MAX・10が普及するにしたがい、マックスとホッチキスが同義語になり、文具店には「マックスください。」とホッチキスを買いにくる人が多くなりました。
その後MAX・10、HD-10と名称は変化しましたが、基本性能は変えずに、使い勝手の向上に工夫を重ねてきました。
こうしたなかで昭和52年には累計販売台数は1億台を突破し、平成2年3月には2億台に達しました。 現在、世界中のオフィスや家庭で愛用されています。
と、ここで手元にあるホッチキスを見てみる。本当だ、MAXって書いてある。しかも、日本のメーカーだったとは・・。
ちなみにマックス社のHPは、
http://www.max-ltd.co.jp/op/index.htmlです。写真付きで、詳しく見たい人はこちらでどうぞ。
今見てきた通り、ホッチキスも改良がどんどん重ねられています。特に最近のホッチキスは
1.手に負担をかけずに綴じることが出来る。
2.綴じが平らである(ほら、昔の奴は綴じた針の下側が盛り上がっていたでしょ?)
と、なっております。そこで、各部の名称紹介と共に、ちょっと比較してみましょう。
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上は新型(HD−10DF)、下は旧型(HD−10)。
まあ、新型といっても、発売からかなり経過していますが・・・。
新型は、楽に綴じれて、尚かつ綴じが平らというタイプです。
中学理科の知識になりますが、てこの原理によって、なるべく少ない負担で物が綴じられるように研究されています。すなわち、まず力点(力をかける部分、つまり親指のところね)と支点の距離を伸ばすこと。これで、少しでも力の負担を軽くすることが出来ます。しかし、伸ばしすぎると、大型なホッチキスになる(ちなみに、50枚ぐらい一度に綴じられる大きなホッチキスはこれね)。
そこで、普段我々が使う楽ホッチキスは、ドライバーとハンドルが別々に動く、ハンドルの支点と作用点の距離を縮める、ハンドルの作用点をドライバーの支点に近いところで働くことで、この問題を解決しています。
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次に、綴じること。
ホッチキスの針は、紙を貫通し、同時にクリンチャー(曲げ台)で折り曲げられることによって、あの形になるのですが、この時従来型(左)だと、溝のせいで、山2つが出来ることになってしまいますね。
実は、この2つの作業が、同時に行われるから、溝を深くしておかないといけなかった。そのため、山が出来てしまうのです。そこで、クリンチャーアームを装備し、針が紙に貫通している間は、クリンチャーが下に下がり、貫通し終わったら、一気に針を曲げてしまう。このことで、針が平らに綴じられるらしいです。
てなわけで、このお陰で、わざわざ溝を深く作ることが無くなった(きちんと紙から針がでた後、折り曲げることが可能になったから)。そのため、山ができなくなったのです。これを、フラットクリンチ機構といいます。
ちなみに、針にも工夫があり、実は縦横3:5の割合で作られています。 |
多分、なんのこっちゃ解らない人もいると思います。そんな人は、ホッチキスを持って観察してください。
なお、上の写真2つは、所長の手とホッチキスです(笑)。
さて、そこでホッチキス社に話を戻します。
裏辺研究所で軍事関連を執筆されている、岳飛による解説。
兵器というやたらオイラにとっては、やたら専門的な物体が出現したので・・・ ん〜ちと補足。
ホッチキス型機関銃の初期投入はクリミア戦争です。
特許は現在、スイス国籍で存在してます。
このスイスと言う国は面白い所で、 武器関連にまつわる特許の多くを抱えているんですね。 エレベーターなんかも、スイス国籍の特許です。
エレベーター、兵器と関係ない様に感じられるでしょうが、実は兵器自動化に際しての根幹となった部品理論が転用された存在です。
それはさておきホッチキス。 機関銃と文房具、関連点は、 そう、給弾方式ですね。 今でもホッチキスの針をタマなんて言いますが、ここから来てます。ガトリンク式がドラムマガジン方式に対して、ホッチキス方式は直列マガジンです。
この方法は現在は自動拳銃や自動小銃に採用されてますね。 利点はドラム方式と違い、給弾詰まりが少ないところです。欠点は一回の装填数に限りがある事ですね。
ですから、最近の機関銃は、 ベルトを使用したタンクベルト方式やドラムベルト方式に切り替わってますね。
いや〜兵器っておもしれぇ(←危険
でもって、ホッチキス社。
多分、ヨーロッパ激動の中で倒産したのだと思います。こういう場合、得てして記録が残りにくいんですよね。
ヨーロッパのHPを渡り歩けば、ホッチキス社の行方も判るかもしれません。倒産したとしたら特許はそのまま債権として銀行が接収。
スイスへ渡る・・・・。 合併したとしたら、後継者も変わっているので、 名称変更が行われている可能性があります。
例えば、有名な第二次大戦に活躍したドイツBF109シリーズの製造元であるメッサーシュッミット社は、
前身をバイエリッヒ航空株式会社と言いました。 社長がバイエリッヒ氏なんですね。
で、そこの専任技術社として当時、メッサーシュミット博士がいました。
やがて、メッサーシュミット博士がバイエリッヒ航空株式会社の社長に就任すると共に、社名も変更。 このように、マイスター機構下の企業大系は、 社長交代と同時に社名も変更するんですね。だから、もしかするともしかします。
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岳飛さん、ご解説どうも有り難うございました。
しかし、スイスって小国だけど、本当に面白い国だなあ。所長としては、兵器云々より、こっちの方が気になったりします(^_^)。
参考文献 マックス社ホームページ
モノ知り学ノススメ 日刊工業新聞社
マイクロソフト エンカルタエンサイクロペディア2001