これがアメリカ合衆国の政治システムだ!
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○はじめに |
ニュースで色々な政治用語が出てきますが、よく解らない事って多いですよね。特に外国の政治になるとさっぱりなことが多い。何故かといいますと、もちろんその政治用語の意味が解らないということではありますが、そもそも大前提となる政治システム、つまり内閣の仕組みだとか国会の仕組みだとかが解らないので、いくら単語単位で一時的に覚えたとしても直ぐに忘れてしまうんですね。そこで、ここでは世界各国の政治システムについて御紹介しようとも思います。
第4回目は、何かと日本に余計な問題を突きつけてくるアメリカ合衆国についてです。
1.まずは図で御紹介 |
2.基本 |
アメリカ合衆国は連邦共和制の国家であり、各「州」はそれぞれ1つの国家に近い権限を有しています。また、アメリカ合衆国を合「州」国と表記する学者もいますが、アメリカは(色々問題はあるものの)長い民主主義の伝統を持ち、民「衆」が中心の国家ですので、合衆国と表記して問題ないでしょう。
さて、アメリカの特色は三権分立がハッキリとしていることです。日本やイギリスが議院内閣制を採用し、立法である国会と行政である政府が結びついているのに対し、アメリカは極めて厳格な権力分立が図られ、立法・行政・司法が相互に独立し、抑制・牽制しあい、各部が暴走することを防いでいます。特に大統領は一切議会に対して責任を負いません。
3.大統領 |
大統領はアメリカの国家元首です。同時にアメリカの象徴的なイメージもあり、映画などでも何かと登場します。
アメリカの大統領の特色は以下の点に集約できます。
・国軍の最高司令官で、宣戦布告を行うことも可能。ただしこの際には、議会の承認が必要。
・議会ではなく国民に責任を負う。
・任期4年で、再選は1回まで(1951年より)。ルーズヴェルト大統領が慣習を破って3回も「再選」してしまったのでこうなりました。
*日本語が面倒ですが、三選禁止というのは、3回当選してはいけないことですから、2回まではオッケー。ただし、再選は「もう一度当選すること」ですから1回までと言う表現になります。
・国民が直接選出するのではなく、国民が大統領選挙人を選んだ後に、彼らが大統領を選出する。
・議会から独立し、議会は大統領を不信任決議することが出来ず、一方、大統領も議会を解散することが出来ない。
・議会に対して法律案や予算案を提出することが出来ず、「一般教書」という形で勧告するに留まる。ただし、議会の法案に対し拒否権を持つ。これが行使された場合、議会両院で3分の2以上の多数で再可決されれば、大統領の署名がなくても法律は成立。
4.大統領のスタッフ |
アメリカには日本のような内閣制度は存在しません。ゆえに、首相もいません。
また各省の長官は、日本のように国会議員がなることは出来ません。その他の高級公務員も含め、大統領が選んだ人間が就任します。また、大統領の与党から選ぶ必要もなく、ただの民間人はもちろん(もちろん、その筋に精通した専門家でしょうけど)、野党から選ぶこともあります。ただし、任命に関しては上院の助言と承認が必要となります。彼ら大統領のスタッフは、大統領同様議会に責任を負わず、議会に不信任決議されることはありません。
大統領はスタッフ(各省長官・閣僚級公務員)と共に閣議を開きます。ただし、日本の内閣による閣議のように全会一致などの決まりはなく、あくまで大統領が閣僚の意見を聞くことを目的としているだけです。
ちなみに、省は15存在し、国務省、財務省、国防総省、司法省、内務省、農務省、商務省、労働省、保健社会福祉省、教育省、住宅・都市開発省、運輸省、エネルギー省、退役軍人省、国土安全保障省となっています。
それから意外と重要なのが、大統領補佐官。
何かと忙しい大統領のために、制作の作成や情報収集をし、大統領に助言を与える重要なポストです。ニクソン政権時代に活躍したキッシンジャー以降、特に重要度が増し、現在では「首席補佐官」「国家安全保障問題担当補佐官」「経済政策担当補佐官」が設置されています。
5.議会 |
アメリカの連邦議会は元老院(上院)と、代議院(下院)から成り立つ、二院制です。
上院は、定数100名。任期6年。議長は副大統領。
各州の代表的な色彩が強く人口に関係なく各州より2名が選出されます。ただし2年ごとに、3分の1ずつ改選されます。
下院は、定数435名。任期2年で、議席は人口に応じて配分されています。また、選挙区割は各州の議会が決定。
一例を見ますと、カリフォルニア州は52名、デラウェア州、バーモンド州は1名となっています。
また、日本では衆議院の方が参議院よりも優越した権利が与えられていますが、アメリカの場合はケースバイケースです。
例えば、大統領が指名した各省長官などの官吏の承認、条約の批准承認は上院だけが有しています(3分の2以上の賛成)。一方、下院は予算案など歳入に関する法案を先に審議する権利を有しています。このように、アメリカの両議院は対等の関係にあります。
大統領やスタッフに対して不信任する権利がないのは前述したとおり。
ただし、大統領やスタッフが反逆罪などを犯した場合には弾劾することが出来ます。手順は、下院が訴追し上院が裁判するというもの。1868年、1974年、1999年の計3回、弾劾のための訴追がなされています。1999年と言えば、クリントンwithモニカ・ルインスキーですね。
ちなみに。
大統領、副大統領とも職務遂行が不可能となった場合には、下院議長が大統領職を継承します。「暫定的に」でないところに注目して下さい。継承しちゃうんです。
5.裁判所 |
裁判所は、日本と同じ三審制(州によっては二審制)
ただし、各州が独立して法律を制定するため、各州の法律に基づく事件について裁く「州裁判所」と、連邦法に基づく事件を裁く「連邦裁判所」の2つが存在します。
このうち、連邦最高裁判所は8名の裁判官から構成され、裁判官は上院の承認と大統領の任命です。任期はなく、終身。また、法律が憲法に違反していないか調べる違憲立法審査権は憲法には規定されていませんが、慣習としてあります。法律って、慣習でも法と認められるんです。
6.地方自治 |
「州」がベースとなっています。
国家に近い権限を有していますが、それでも外交、同盟、関税をかける、通貨を発行する権限はなく、また連邦政府の承認でほかの州と協力して、水資源開発、水運、環境破壊防止、港湾開発などを行うことができるなど、そこはやはりアメリカ合衆国の下にまとまり、協力しています。
州の下には何があるかですが、たいていの場合は「郡」(カウンティ)に分けられています。さらにその下に市、町、村、自治区があります。なお、郡がない州や、郡が有名無実になった例もあります(日本の郡なんかもそうですね)。