特別展「生命大躍進」脊椎動物のたどった道(国立科学博物館'15)

 2015年7月7日(火)〜10月4日(日)に上野の国立科学博物館で開催された特別展「生命大躍進」脊椎動物のたどった道。その見どころと展示物の一部について、簡単にご紹介していきましょう。
(解説:馬藤永徳)

○見どころ


大きく分けて特色は3つありました。

〜1.豊富な展示化石〜
 今までの展示ではあまり多くなかった古生代の化石が多く展示されています。しかも、カンブリア紀はバージェスとチェイジャンなど、複数の産地からいれるなどバリエーションに富んでいます。ディメトロドンなどは、骨格の他に足跡なども展示されているのも珍しいですね。



〜2.遺伝学的な見地から始まる新説展示(NHK番組との連動)〜
 DNAのコピーミス、重複、レトロウィルスからの取り込みなどなど。
 NHK番組『生命大躍進』で主張された『DNAのエラーが大きな進化のの原動力になった』 という説をを簡潔なキャプションでまとめています。 同番組を知っていると二重に楽しめる構造になっています。ただ、同番組ほどは強調していないようで、例えば番組では、ある恐竜が『罠を仕掛けることもできた(証拠なし)』と勇み足をしている面もあり、全面には押しづらいようです。

〜3.工夫された豊富なキャプション〜
 頭上を見れば、進化の流れが一目瞭然。 もちろん他の事柄についてもキャプションと展示で説明しており、来た人が楽しんで学べる『博物館』としての意義を果たしています。



〜4.全時代網羅!!〜
 全時代にわたる展示を行っています。1.2.3.の特色も併せて、見ごたえのある展示となっています。 おかげで、恐竜がだいぶ脇役となっていますが、かえってこの場合は他の動物たちを強調できる結果となり好印象です。



 それでは、膨大な展示の中から僅かではありますがオススメのものだけ、展示ストーリーにそってご紹介したいと思います。1つ1つの解説については、またそのうち・・・。

▼プロローグ〜生命の誕生〜0-1:最古の生命の痕跡


グラファイトを含む片岩
37億年前のもので、グリーンランドのイスア地域産。生命の痕跡が残されている最古の岩石です。

▼0-2:エディアカラ生物群


ディッキンソニアとフィロズーン


ディッキンソニア

フィロズーン

アルボレア

▼第1章:カンブリア大爆発

○1-1:バージェス頁岩動物群

 展示されている化石の種類が他の展覧会に比べて遥かに多いのが特徴。また、今まで分類や生態が謎とされていたものが、明らかにされています。


ピカイア

ピカイア

ボーキシア

ヘイゼリア

カナディア

バージェソゲタ



ネクトカリス



○1-2:アノマロカリス


アノマロカリス(復元模型)

アノマロカリス

アノマロカリス

○1-3:チェンジャン生物群

 世界各地で発見されるバージェス頁岩動物群と類似の化石群。チェンジャン生物群は、1984年に中国の雲南省澄江(チェンジャン)近くの帽天山から発見されたもので、バージェス頁岩より1700万年古いものです。






マオティアンシャニア

パウキポディア

ミクロディクチオン

ハルキゲニア

○1-4:オルドビス紀末の大量絶滅

 ”大量絶滅”といえば白亜紀末が有名ですが、他にも大きな大量絶滅が5つあります(ビッグ5)。オルドビス紀末でも大規模な大量絶滅がありました。三葉虫も多く絶滅しましたが、生き残りもいて、独自の進化を遂げています。


クセフサヌス

パラルケオクリヌス

エンドセラス

▼第2章:海から陸へ

○2-1:シルル紀〜ウミユリとウミサソリ〜

 ウミサソリなど節足動物が大繁栄した時代で、魚類もいくつか化石が見つかっていますが小型で目立ちませんでした。


ウミサソリ(アクチラムス)

ウミサソリ(アクチラムス)
人間と比較してもこの大きさ!この標本の場合、なんと2.2mもあるそうです。

スキフォクリニテス

○2-2:デボン紀の三葉虫

 デボン紀の三葉虫は、様々な生活様式に対応するために、変わった形が登場しています。


アカンソピケ

ワリセロプス
三分岐する長い突起が特徴。その用途は海底の泥をすくうとか、カブトムシのようにメスの奪い合う争いに使うとか、様々な説があります。


プシコピケ
こちらは鉾状の突起が特徴。

ドゥロトプス
甲羅に突起を持っています。デポン紀の三葉虫にはよく見られる形態です。

○2-3:デボン紀後期の大量絶滅

 デボン紀でも、ビッグ5に数えられる大量絶滅が発生しました。三葉虫の多く、魚類では板皮類(ダンクルオステウスなど)が絶滅しています。アンモナイトは、デボン紀に登場し子孫を残しています。


アネトセラス

マンチコセラス

○2-4:魚らしい魚の登場

 シルル紀には顎のない小さな動物であった魚類も、デボン紀には大型のダンクルオステウスが出現するなど、繁栄し始めます。現在私たちが普段目にする硬骨魚類など、魚類の基本的なグループはデボンに全て揃いました。


ロガネリア

ドレパナスピス



ダンクルオステウス

ウミサソリVSダンクルオステウス

アカントーデス

○2-5:陸上への進出

 デボン紀になると陸棲脊椎動物として、両生類が登場します。骨格のみならず、歩行跡も化石としてみつかっています。


両生類の足跡化石

イクチオステガ

○2-6:水辺からの訣別(けつべつ)−爬虫類の登場(胚膜の獲得)

 石炭紀(デボン紀の次の時代)には、爬虫類が登場しペルム紀に繁栄します。水辺から決別した爬虫類ですが、早速、水の中に戻ったものも見られます(スクトサウルス)


メソサウルス

スクトサウルス



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