ギガ恐竜博
2017(平成29)年7月15日(土)~9月3日(日)にかけて幕張メッセの国際展示場にて開催されたギガ恐竜展2017-地球の絶対王者のなぞ-。全長約38メートルの超巨大竜脚類「ルヤンゴサウルス」や、卵から孵る前の状態の実物化石「ベイビー・ルイ」、共食いティラノサウルスの3点を目玉として、数多くの標本が集められました。これらの大きな化石に目が奪われますが、今回の博覧会で注目していただきたいのは、外見や食べ物といった恐竜の復元を変えた化石たちの紹介、それに恐竜の動きに関する研究や卵化石、古生物の世界的分布といった研究成果。目立つ標本ではありませんが、これらの解説は詳細な説明がされており、現在の研究者たちの考えをしることができます。この展覧会の本当の目玉は、まさにこれらの研究成果というところでしょう。ここに注目です。
(解説:馬藤永徳&裏辺金好/撮影:裏辺金好)
〇主な見どころや展示物
生物の分類のキャプション最近発表された、恐竜の分類に革命をもたらすような論文(獣脚類は、竜脚類よりも鳥脚類に近縁とする説)についても軽く紹介されています。今後どうなるのか、注目です。
レドンダサウルス・グレゴリィ
アメリカのニューメキシコ州で発見された、三畳紀の大型爬虫類(フィットサウルス類)。大きいものだと全長6mにもなるとか!
現生のワニとの比較
プロトステガ・ギガス
アメリカのカンザス州で発見された白亜紀のウミガメ。甲羅を作る骨の面積が小さく、隙間が多いのが特徴。
ディロサウルス・マグリベンシス
白亜紀末期のワニの仲間で、モロッコから発見。この標本は頭骨だけで1mもあります。推定全長は6m!
エラスモサウルスの一種
カナダのアルバータ州から発見された首長竜(プレシオサウルス類)。
ティポトラクス・コッキナルム
アメリカのニューメキシコ州から発見されたワニに近縁なアエトサウルス類。
プテラノドン・ロンギセプス
パキケファロサウルスなど
トリケラトプス(写真1枚目、2枚目)、パキケファロサウルスの子供から大人の成長(写真3枚目、右から幼体、亜成体、成体)。特にパキケファロサウルスは、別々の種とされた恐竜が成長段階であったという話につながっています。パキケファロサウルスはあまり化石が見つかっていないのも大きかったのでしょう・・・。
ルヤンゴサウルス
今回の目玉。最大級の恐竜であるルヤンゴサウルス・ギガンテウス(全長38m)。仙骨(腰の骨)から、まだ成長できる青年の恐竜であったとしているのはさすがの研究です。
巨大恐竜がなぜ大型化したかのキャプションも近くにありました。エサをかまずにのみこむことと、気嚢を持っていたこと、骨の成長が早いことで説明していました。卵をたくさん産むから絶滅しにくいというのも理由にありますが・・・、これはおまけですね。
デブっとした胴体が、かまずに飲み込んだものを消化していたことを物がっています。
ルヤンゴサウルスの胴椎
胴椎の横が三角形の構造。恐竜の軽量化の一端を間近に見ることができます。
プレノケファレ・プレネス
モンゴルから発見された白亜紀の堅頭竜類。緩やかなドーム状の頭骨が特徴的。
ティアンジュノサウルス・ヤンギ
中国の山西省から発見された発見されたアンキロサウルス類。
ジンユンアンキロサウルス類
中国の浙江省から発見された白亜紀のアンキロサウルス類。
タラルルス・プリカトスピネウス
モンゴルから発見された白亜紀のアンキロサウルス類。
コンカベナートル・コルコヴァトゥス
スペインから発見された白亜紀前期にの肉食恐竜。腰の前後にある高くなった背骨が特徴。
トリケラトプスのロボット
半分スケルトンなトリケラトプス。肉をどうつけるかなど、考えることは実はたくさんあります。骨の太さや筋肉のつく位置の大きさ。ここではあまり解説していませんが、この復元も色々考えているはずです。
ここからは恐竜の姿や、食べ物といった、通常化石に残らないものが残った化石たちが目白押しです。
シエンシャノサウルス・シジアゴウエンシス
中国の河南省から発見された白亜紀前期の竜脚類。
ステゴサウルス・ステノプス
アメリカのユタ州から発見。これはもう説明不要な有名恐竜ですね。
羽毛恐竜
1枚目はファシャグナトゥス、2枚目はガウディプテリクス。羽の種類により、飛行の進化を考察中。飛べる飛べないの話から、最近はどのように飛んだかを話すようになってきています。
ペレカニミムス
羽毛なし、羽毛ありの2つの復元モデルです。
シノサウロプテリクス
近年は、羽毛やミイラ化石が見つかり、原生生物より類推するしかなかった恐竜の本当の外見が明らかになってきています。これは、初めての羽毛痕!
ミイラ化したプシッタコサウルス
背中の毛が見つかり、すこし毛が生えた姿に。
ミイラ化したブラキロフォサウルス(レオナルド)
こちらはウロコを確認。素晴らしい保存状態で、胃の内容物も明らかに!
ガリミムスの一種
ここからは恐竜の動きについての研究になります。ほっそりした恐竜の展示。足が速いということが一発でわかります。
尾の跡付き足跡
珍しい足跡特集!一緒に大人や子供が生活していること、そして歩幅から速度を割り出せること。足跡から得られる情報にも色々あります。
さて、この化石が発見された場所(中国 甘粛省)は、かつて湖であったと考えられています。1枚目は泳いでいた恐竜が指先で水底を引っ掻いたときにできたもの。また、バランスをとるために尾で水底を引っ掻いた跡がついています。恐竜が泳いだことは想像に難しくないですが、実際の証拠として大変重要ではないでしょうか。2枚目は尾のみですが、よりハッキリとしています。
ドロマエオサウルスの足跡
足のかぎ爪を一本立てて走るため、2本指の足跡になります。すごく特徴的。
竜脚類の足跡
半月状のものは前足、丸いのは後ろ脚。余談ですが、4足歩行の動物の足跡は、前足の跡に後ろ足の跡がついたりしますので、動きを考えるとかなり混乱します・・・。
竜脚類の足跡(でかい!)
1m以上ありそうな竜脚類の足跡。ただし、足跡は、実際の足以上に膨らむこともあるでしょうね・・・。おまけに、足跡は地層が複数にわたりへこむ為、上の層がはがれて下のよりぼんやりした足跡が見えている可能性もあります。
エロンガトゥーリトゥス
卵化石は、福井の恐竜博物館で詳しく特別展を開催されていました。今回の主催者の一つですので、得意分野でしょう。綺麗に並べられています。
卵化石の分類
卵を産んだとはっきりわかる化石が見つからない限り、どの恐竜が生んだかは断定できませんので、卵化石には専用の名前がつきます。これは、他の化石(足跡とか)もです。
ベイベイロン・シネンシス
中国の河南省から発見されたもので、卵と関係がはっきりする恐竜。大変貴重!!
アパトサウルスの幼体
成長のお話。大きいものでは30t級もいたそうですが、生まれて5年くらい経つと、1日14kgずつ体重が増え、15年ぐらいで成長が遅くなったそうです。
テチスハドロス・インスラリス
イタリアから発見されたイグアノドン類。当時のイタリアはヨーロッパとアフリカをつなぐように島が並んでいました。このため、全長4mと小型化しました。島では大型の動物は小型化し、小型の動物は大型化するのですが、これを島の法則または島嶼化(とうしょか)といいます。
アルシャサウルス・エレシタエンシス
アルシャサウルスなどテリジノサウルス上科は、ティラノサウルスに代表される獣脚類に含まれますが、その歯は小さく植物を食べていました。肉食恐竜から草食恐竜への進化もあったようです。単純に獣脚類は肉食恐竜という話ではなくなってきていますね。
バリオニクス・ワルケリ
イギリスで発見されたスピノサウルス科の獣脚類ですが、珍しく背中に帆がないのが特徴。化石の腹部から魚の鱗が発見され、魚食していたことが判明しました。ソフトクリームのコーンのような円錐形の歯を持ち、滑りやすい魚の体をガッチリとゲットしたようです。
ティラノサウルス・レックス(愛称「ワイレックス」)
尾椎のほどんどが発見されなかったのですが、感染症の兆候と背椎骨の端に激しくただれた痕跡と、治癒した形跡がなかったことから、生きている間にほかのティラノサウルスに襲われた、共食いであったことが明らかになりました。しかしよくまあ生きたものです。
ユウティラヌス・フアリ
中国の遼寧省から発見された白亜紀前期の原始的なティラノサウルス類。大型の獣脚類でありながら、羽毛の証拠が見つかったため、大きな話題となりました。
ディロング・パラドクサス
白亜紀前期、小型でアジアにいた原始的なティラノサウルス類です。
プシッタコサウルスの一種
白亜紀前期、アジアにいた原始的な角竜。角竜の間では傍流になるといわれています。
ビスタヒエベルソル・シーリィ
アメリカのニューメキシコ州で発見されたティラノサウルス類。
ゴルゴサウルス・リブラトゥス
カナダのアルバータ州から発見されたティラノサウルス科の恐竜。
ティラノサウルス・レックス(頭骨)とトリケラトプス・ホリドゥス
ティラノサウルスは白亜紀後期、北米に棲息していた超有名恐竜。北米へ移動して繁栄しました。ちなみに、当時の北米は内海で分断され、ティラノサウルスがいたのは北米の西部分「ララミディア」大陸です。また、トリケラトプスも同じく白亜紀後期、北米「ララミディア」に棲息していた超有名恐竜。ほかにも、当時は多様な種がいたと紹介されており、「ララミディア」に渡った後に、角竜が発達したとされています。
ラプトレックス・クリエグスティニィ
白亜紀後期のアジアのティラノサウルス類。別のティラノサウルス類の幼体という説もありますが、いずれにせよ北米からもどってきたティラノサウルス類です。
イクチオベナトール・ラオセンシス
一風変わって、アジアの恐竜紹介。これはラオスから発見された恐竜で、アフリカやヨーロッパにいた、スピノサウルス類がここまでやってきたことを示しています。アジアは、北米に行く恐竜がいたり、ヨーロッパから恐竜がいたり、北の恐竜の生息域の最南端であったり。今、生物地理がホットな話題に思えます。
フクイベナトール・パラドクサス
最後に日本の恐竜紹介。日本で7番目に命名されたフクイベナトール。当時の日本はほとんど海で、僅かにあった陸塊はアジアの東端の部分。海の近くまでにやってきた動物たちです。位置的にはおもしろいと思っているのですがいかがでしょう?
フクイサウルス・テトリエンシス
フクイラプトル・キタダニエンシス
フクイティタン・ニッポネンシス
北谷層のワニ
白亜紀の福井 復元ジオラマ