生命三十六億年(18) 第四紀
○今回ご紹介する時代(赤色部分)
累代
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代
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紀
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世
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開始年代
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顕生代 | 新生代 | 第四紀 | 完新世 | 1万1700年前〜 |
更新世 | 258万年前〜〜 | |||
新第三紀 | 鮮新世 | 533万年前〜 | ||
中新世 | 2303万年前〜 | |||
古第三紀 | 漸新世 | 3390万年前〜 | ||
始新世 | 5580万年前〜 | |||
暁新世 | 6550万年前〜 |
○第四紀とは
第三紀の次の時代だから、第四紀。ならば第三紀とは?ということは、前回と前々回で散々見ましたので、ここでは省略します。で、この第四紀には我々が生きている時代も含まれています。この時代は、実は地球史の中でも劇的な気候変動のある時代でもす。もっとも、単に解っているからそう思われるのかもしれませんが・・・。○第四紀の気候
ということで、この時代の気候の話。なんと言っても、氷河期(氷河時代)と温暖な間氷期(かんぴょうき)が繰り返し起こっていたのが、最大の特徴でございます。何が氷河期をもたらすかについては、様々な説があり、おそらく複合的な要因であったと思われます。地球の地軸の変化と地球の軌道と天体との関係、さらには大陸移動に伴う海流の変化、二酸化炭素の濃度など、色々な要因が提唱されています。いずれにせよ氷河期には、地球のあちこちで氷床が発達し、水が少なくなることで陸地がつながりました。当然、動物たちも移動範囲が広がり、人間も同じく様々な地域へと進出していくことになります。特に更新世最後の氷河時代は、イギリスが氷床で覆われるほどの規模でした。
その氷期も暖かくなり、現代の気候に。これを境に第四紀は更新世と、現代が含まれる完新世に分かれます。
○第四紀の動物
この時代は氷河期に適応した様々な動物が生まれます。代表的なものは、なんと言ってもマンモス。体中が毛で覆われたゾウですね。また、サイにもこの時代はケサイと呼ばれる仲間がいて、やはり毛で覆われていました。また、日本の博物館でよく見られるオオツノジカが見られるのもこの時代です。
コロンビアマンモス (国立科学博物館にて) 更新世中期、北アメリカに生息したマンモスで、大きく、そしてカーブした牙が特徴。別名「インペリアルマンモス」。 なお、マンモスは他にも「ケナガマンモス」などいくつか種類が存在します。 オオツノジカ (国立科学博物館にて) 第四紀更新世後期にヨーロッパ大陸に広く分布していた大型のシカ。体長は2〜3mにもなります。 |
南米ではオオナマケモノや、北米ではオオアルマジロのような大型の特徴的な動物も生息していました。
北アメリカと南アメリカは、新第三紀の終わり頃に現在のように陸続きとなっており、動物が大陸間で移動し交流しています。
グロッソテリウム (国立科学博物館にて) 更新世の北アメリカ大陸に生息していたオオナマケモノの近縁種。時代と共に大型化しました。 太い尾と手足の大きなカギ爪が特徴で、ダーウィンによって最初に発見されています。 |
我々人類はこうした大型動物を様々な道具を使って狩猟を行い、またオオツノジカなどの移動に合わせて生活環境を移していきました。共同して狩猟を行うことにより、効率よく進めるために、社会性も形作られていきます。そして、行き過ぎた狩猟によって、とうとう人類によって絶滅させられた動物も出現していきます。
先ほど紹介した動物のうち、ケサイ以外は人間によって絶滅させられたと推測されています。この他にも人類に絶滅させられた動物は数多く、現存している種でも、元々は別の地域でも生息していたのが人類によって地域的に絶滅させられたり、動物園などでしか見られなくなってしまったものもいます。
近年では乱開発などによる環境破壊による動物の絶滅もあり、ますます人と我々人と他の動物との関係が問い直されています。
ちょっと先の話までしてしまいましたが、人類の進化については、また後で見ていきます。
ダイアウルフ (国立科学博物館にて) 史上最大のオオカミ。更新世前期中盤から完新世初期のアメリカに生息していました。 人間との狩猟競争に敗北し、絶滅しました。 スミロドン (北九州市立 いのちのたび博物館にて) 漸新世後期から更新世にかけて栄えたネコ科の食肉獣であるサーベルタイガーの1種。 鮮新世後期から第四紀更新世末期(約10万年前)まで南北アメリカ大陸に生息していました。 ホラアナグマ (国立科学博物館にて) 更新世後期(氷河期)のユーラシア大陸に生息していたと云われるクマ。 トクソドン (国立科学博物館にて) 鮮新世後期から更新世末にかけて、南アメリカ大陸に生息した大型草食動物で、既に絶滅した南蹄目に分類。 名前は「弓形の歯」に由来し、臼歯列が弓なりにカーブするのが特徴です。 プラプラオプス (国立科学博物館にて) アルマジロ類の祖先の1つで、背甲で高さ1m、体重50kgにもなる大型種。 更新世の南アメリカに生息していました。 パノクトゥス (国立科学博物館にて) 更新世の南アメリカに生息した全長3〜3.5mの動物。写真左奥が骨質の「よろい」(甲羅)で、これを背負ってました。 ジャイアントバイソン (国立科学博物館にて) 更新世中期〜後期の北アメリカに生息した、肩高で約2mのウシ科の動物。 現在のアメリカバイソンより更に大きな角を持っています。 マチカネワニ (北九州市立 いのちのたび博物館にて) 更新世の日本に生息していたワニ。 ドードー (我孫子市鳥の博物館にて) マダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた絶滅鳥類。飛ぶことは出来ず、速く走ることも出来ません。 16世紀初頭に発見されてから、あっという間に乱獲されてしまい、1681年の目撃記録を最後に姿を消しています。 ジャイアントモア (我孫子市鳥の博物館にて) モアはニュージーランドにかつて生息していた大型の鳥で大きなもので3m以上。16世紀以前にすべてが絶滅しました。 10種以上が知られており、このジャイアントモアはその中でも最大級でした。 ステラーカイギュウ (国立科学博物館にて) ジュゴン目(海牛目)ジュゴン科に属する大型の海牛。1768年の目撃記録を最後に姿を消しています。 |
○人類
アフリカで誕生した人類は、日本的な分類に従うと猿人と呼ばれるグループが新第三紀に誕生したのが始まりです。そして猿人(例えばルーシー、「アウストラロピテクス・アファレンシス」)→原人(例えばジャワ原人などの「ホモ・エレクトゥス」)→旧人(ネアンデルタール人「ホモ・ネアンデルターレンシス」)→新人(クロマニヨン人や我々を含む「ホモ・サピエンス」)と、第四紀にかけて進化していく・・・という説明が歴史の教科書ではお馴染みですが、実際にはこの四分類では単純に割り切れない、多種多様な人類が姿を現し、また消えています。
また新第三紀の項でも説明しましたが、ホモ属とは別に猿人から進化したパラントロプス属は、更新世120万年前の「パラントロプス・ボイセイ」を最後に発掘されていません。 我々ホモ・サピエンスは、これらの人類最後の生き残りでもあります。
ホモ・エレクトゥス (国立科学博物館にて) 160万年前にケニアにいた原人の少年「トゥルカナ・ボーイ」。ホモ・エレクトゥスの成人男性の脳容積は900cc程度。 ホモ・ネアンデルターレンシス (国立科学博物館にて) フランスで発見された7万年前のネアンデルタール人の成人男性(愛称「ラ・フェラシー」)。 石器を使い、大型動物を狩猟しました。脳容積は1690cc |
ホモ・サピエンスも東アフリカに生息していたと考えられています。しかし、時代が進むにつれ、私たち人類は地球全土へと生息地域を広げていき、そして様々な文化や道具を創っていきました。例えば、ネアンデルタール人は死者に対して花を添えて哀悼の意を表すようになりますし、クロマニヨン人は洞窟の壁に狩猟の絵を描くようになります。
マンモスの骨で出来た住居 (国立科学博物館にて) 狩猟したマンモスは余すことなく使います。骨で住居を組み立てることもありました。 |
そして我々(ホモ・サピエンス)は木や石、そして火を操り、さらには青銅器、鉄器などを生み出します。そして、狩猟だけではなく農耕によって自ら食料を生み出し、さらには様々な機械、資源の活用にまで手を広げており、それまでの動物とは完全に異なった生態系を形成しています。
○第四紀の植物
氷河期と間氷期が繰り返すという大きな気候の変化のため、多くの地域的な絶滅がありました。例えば、ヨーロッパでは温帯植物ユリノキなどが生息していましたが、ここに至ると絶滅します。しかし、一方でそれは地域による差を生み出し、現在の多様な景観を作り出したのもまた事実です。ワタスゲ(エリオフォルム属)などは、まさに第四紀に登場しました。○終わりに
さて、これにて生命三十六億年の歴史は終わりです。初期の生命誕生から我々人類まで見ていきましたが、如何でしたでしょうか。恐竜以外にも実に様々で面白い生き物が生きていた、この星が実に大きな変化を繰り返してきたと感じられたでしょうか?分量は18ページになりましたが、紹介仕切れなかった様々な変化、生き物、学説があります。この原稿をきっかけに、さらに地球や生命の歴史に興味を持っていただければ幸いです。