恐竜・翼竜ガイド(6)恐竜の一生とは?

○はじめに


 恐竜というと、巨大な成体ばかり思い浮かびますが、子供時代も当然ありました。卵から生まれ、成長し、そして老いていく。それについての研究はどうなっているのでしょうか?まだまだ、研究途中といった分野ですが、今回はそのお話をさせていただきます。

 ちなみに上写真は福井県立恐竜博物館で展示されていた、マイアサウラの成長過程における各化石と復元モデル。最終的には体長が8〜9mになる恐竜ですが、生まれたときは小さく、だんだんと大きくなっていきます。

○恐竜の卵・子供


 恐竜の卵自体は、親と比べて大変小さく、大型の種でもサッカーボール程度の大きさだったようです。そもそも、あんまり大きすぎると、卵の殻も厚くなります。中の雛が殻を通して外の空気を入れることが出来なくなる上、殻をわって外に出てこれなくなるため、大きさには限界があるといえます。

 ちなみに恐竜の卵の化石は古くから発見されていて、中でも1923年、ロイ・アンドリュースによる『プロトケラトプスの巣と卵』の発見の話が一番有名です。このとき、近くで別の新種の恐竜が発見されたため
 「この恐竜は、プロトケラトプスの卵を泥棒しに来たに違いない」
 ということで、卵泥棒を意味する「オヴィラプトル」と名づけられました。

 ところが後ほど研究が進むと、『プロトケラトプスの巣と卵』と思われていたものは、なんと『オヴィラプトルの巣と卵』だったのです。つまり、オヴィラプトルは卵泥棒どころか、自分の卵を守っていたのでした。しかし、その後学名を変えられることはなく、卵泥棒という汚名を今に至るまで着せられ、さらにその近縁種も「○○ラプトル」と、次々と泥棒という学名がつけられています。
 
 ちなみに、オヴィラプトルの卵は、1つの巣から多数見つかっています。案外、恐竜が多産ということは、子供が死ぬ確率が高かったのかもしれませんね。

○恐竜の子育て

 恐竜は少なくとも種によっては子育てをしたことがわかっています。1978年にジョン・ホーナーは、アメリカで大規模なマイアサウラの営巣地を発見しました。そこからは、四肢が未発達な子供の化石が発見され、歯が磨り減っていたことから親が餌を運んできたことは間違いないとされています。

 一方で、子供の時点で骨格が出来上がっている恐竜(トロオドンなど)もおり、それらの恐竜が育児をしたかについては意見が分かれるところです。

 また、上記のオヴィラプトルは営巣地で卵を守る姿で発見されており、最近では羽毛を持っており卵を温めていたのではないかと考えられています。もっとも、大型の恐竜はそんなことをしたら卵がつぶれてしまいますので、現生のワニのように、植物で使った塚の巣を使用する方法をとったのでしょう。この方法では植物の発酵により、卵を温めます。


▲マプサウルスの成体と幼体

○恐竜の成長速度・寿命

 恐竜はどのくらいの速度で成長し、寿命はいくつだったのでしょうか。

 ティラノサウルスの場合、発見された中で最も高齢のものが29歳以下と推定されており、全体的に恐竜は非常に短命であったのではないかと考えられています。さらに、カモノハシ竜、角竜は10年ほど、巨大な竜脚類でも50年に及ばないと考えられています。子供をたくさん生み、早く成長して、早く死ぬ。恐竜の世界は案外慌しい様子だったのかもしれません。

 ・・・と、書きましたが、実のところ恐竜の成長速度と寿命は、はっきりとはわかっていません。それでも2013年現在、骨の内部構造から恐竜の年齢を推定する方法が考えられています。大別すると、次の2つのやり方です。

@骨に出来る年輪の輪から測定する
 爬虫類などの骨は成長に従い1年にひとつ、年輪のような輪ができます。恐竜にもこの構造は存在しているため、これから年齢を数える方法です。この輪は春夏秋冬の季節変化に従い骨の成長速度が変わる(冬になると遅くなる)ことでできるものと考えられています。成長の遅くなる高齢の動物の場合は、これの一本が判別しがたく、正確な数値がでないことがデメリットです。

A骨の内部構造が似た哺乳類や鳥類と比較する
 アパトサウルス(体長22.9m)の骨の内部構造は、哺乳類と鳥類(恐竜省く)と似ており、かつ年輪がはっきりしません。こうした特長をもつ恐竜は、原生の哺乳類や鳥類と同じくらいの速度で成長したと考えられ、それらとの比較から10年くらいで成体になったものと考えられています。    恐竜の年齢については、これから研究が進むにつれて、また新しい考え方も出てくるのでしょう。

 もしかすると、一転して「恐竜は長生きだった」という話になるかもしれませんね。
 (執筆:馬藤永徳)


↑ PAGE TOP