カメラについて語ってみる(28) フルサイズ機台頭とフィルムカメラの終焉
朝夕の気温がだいぶ下がってきました。日中は暑いながらも、時折吹く風の中に秋を感じる今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
今回は、この夏から続くデジタル一眼レフカメラ、フルサイズ機と、新しく搭載された動画機能について、少し述べてみたいと思います。それから、フィルムカメラのこれからについても、少し考えてみたいと思います。
Nikon D700を皮切りに、SONY α900、Canon EOS5DMarkUが発表されました。2009年はフルサイズの年と言っても良いでしょう。以前はプロ用フラグシップを除いて、CANON EOS5Dだけでしたから、選択肢がありませんでした。価格帯も30万円台となり、今後さらに低価格モデルが発売されるのは間違いないでしょう。
デジタル一眼レフが一般化した頃から、フルサイズの要望はありました。しかしこれだけAPS-Cサイズのモデルが発売され、APS-Cサイズ専用レンズが発売されてくると、APS-Cサイズでも良いんじゃないかと言う声も強くなってきました。またフォーサーズやマイクロフォーサーズを採用しているオリンパスやパナソニックのように、フィルムという縛りを考慮しないという選択もあります。もっともオリンパスはMFカメラ中心であり、フィルムからデジタルの移行ではなく新規開発ができたこと、パナソニックももともとカメラメーカーではないことなどが、新しいフォーマットを採用することができた理由になりますが。
しかしフィルムカメラから続くカメラメーカーの場合、どうしてもフィルム時代のレンズ資産を流用しなければなりません。そのため過去のレンズが、フィルムカメラのときと同じ(画角、焦点距離、F値など)ように使えることが望まれます。そうなると、撮像素子のサイズがフルサイズである必要が出てくる。また同じ画素数であれば、集光面積などの点から大きな素子のほうがノイズが少ないなどのメリットもあります。
これからフルサイズのデジタル一眼レフカメラが低価格で販売されるようになり、フルサイズにシフトしていくのか、APS-Cサイズとダブルスタンダードでいくのか、非常に悩ましいところであります。
NikonD90は、デジタル一眼レフカメラで初の動画撮影機能を搭載しました。CANONからもEOS5DmarkUは動画撮影機能が搭載されます。もっともコンパクトデジタルカメラでは動画撮影はすでに一般的なものでしたし、LiveViewが搭載されるようになり、予想の範囲内でした。
デジタル一眼レフカメラも、CCDやCMOSといった撮像素子によって画像を生成するわけなので、原理的にはデジタルビデオカメラと同じです。デジタルビデオカメラでは静止画像の撮影機能もありますので、より境界があいまいなものになりつつります。デジタル一眼レフカメラで動画を撮影するメリットは、大型の撮像素子によるボケを利用した映像が撮影できること、デメリットは高画素ゆえ手ブレなどの欠点が目立つことでしょうか。CANONのウェブページでEOS5DmarkUの撮影動画サンプルを見てみましたが、非常に高画質の映像でした。使い方によっては非常に面白くなると感じさせます。
しかしやはり動画を撮影するのと、静止画を撮影するのは別物です。個人的にはカメラとビデオは別物と考えています。撮影時間の制限(NikonD90ではHD記録720pの1,280×720ピクセルのみ約5分、それ以外では約20分。
CanonEOS5DmarkUではフルHDで約12分、SDで約24分)などは、処理能力や電池容量の進歩で改善されていくでしょう。問題は形状です。ちゃんとした三脚を使えば良いでしょうが、デジタル一眼レフの形状で長時間動画を撮ろうと思うと辛いでしょう。もし静止画と映像、両方問題なく撮影できる製品ができるとしたら、今とは全く異なったアプローチのデザインが必要になるのではないでしょうか。
いずれにせよ、これから発表されるデジタル一眼レフに動画機能が搭載されることは間違いありません。シンプル・イズ・ベストというわけにはいかず、幕の内弁当化しておかなければ、それだけで新規ユーザーの選択肢から外れてしまうというのが、今の市場ですから。
メーカーに望むとすれば、昔ながらのカメラが好きな者としては、もっとシンプルなカメラを開発してほしい・・・。それはカメラ好きのニーズも満たすのではないかと思います。
今年4月、CIPAの2月分統計からフィルムカメラが消えました。これは事実上フィルムカメラの終焉を意味します。いや、もっと前から気づいてはいました。カメラ店の試写コーナーからフィルムカメラが消え、フィルムの陳列棚が縮小され・・・。しかし、このような統計で具体的に示されると、何か悲しくなってしまいます。いまや個人に一台といわれる携帯電話にもデジタルカメラ機能がつき、いつでもどこでも手軽に記録できます。「簡単であること」は「良いこと」であり、市場では「不便な」「古い」フィルムカメラは淘汰されていくでしょう。
この原稿を書きながら、メーカー各社のウェブページをチェックしたところ、フィルムカメラがほとんど消えていました。NikonはF6とFM10、CANONはEOS-1Vのみ、PENTAXは全て販売終了(中判を除く)、KONICA MINOLTAはそもそもカメラ事業から撤退と、非常に寂しい状況です。
先述したフルサイズの台頭は、直接の影響ではないでしょう。しかしユーザーサイドで考えると、35mmフィルムと同じ条件で是までのレンズ資産が使えるのであれば、デジタルに移行しやすくなるのは間違いありません。そうなれば、フィルムカメラが売れない→フィルムカメラ絶滅と、加速度的に進んでしまいます。
それにしても、レンジファインダー機のBESSAシリーズや、Leica、Contaxなどしかないのは時代の移り変わりを感じさせます。市場での淘汰ですから、仕方ないことかもしれません。ですが個人的にはまだまだフィルムを使うこともありますし、むしろ使っていきたいと考えています。デジタルとは違う粒状感(昔は悪い意味で用いられることが多かったのですが・・・)、色味などは、フィルムならではです。
新型は出なくても、今あるカメラを大切に使って。幸いなことにデジタルカメラとちがい、機能が古くなって使い物にならないということはありませんから。
機械式のフィルムカメラは、オーバーホールし、適度に使っていれば、非常に丈夫なものです。みなさんも、お手持ちのフィルムカメラがあれば、たまに使ってみるのはいかがでしょうか。
今回発表されEOS5DMarkUは、個人的に非常に気に入ったモデルです。先代のEOS5のデザイン特にファインダー周りのデザインが、最後の最後まで購入をためらわせていたのですが、MarkUは一目惚れしてしまいました。普段はバッテリーグリップを装着したEOS30Dを使っていますが、EOS5DmarkUとの二台体制でいきたいなぁ・・・などと考えています。
まぁ、とあるうわさでは年内にCANONからもう一台発表されるとか、されないとか。明日(9月23日)からはドイツ・ケルンでフォトキナも始まりますから、各社隠し玉が発表されるかもしれません。いずれにせよ、EOS5DmarkUの発売が11月下旬ということなので、購入は来年になってからですねぇ。
フィルムカメラはゆくゆくは市場から消えてしまうでしょう。しかしデジタルカメラの家電的なものではなく、工業製品的な質感を楽しむことも、今ならできます。過去の資産ということであれば、まだまだたくさんのフィルムカメラが中古市場にもあります。自分のお気に入りの一台が見つかるかもしれません。
2008年9月22日
文責 七ノ瀬悠紀
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