第4回 別の意味でクサい台詞

なにも台詞は愛だけではない

  クールでニヒルでちょっとキザ。そんなところは「小説及びその他の設定上の氷川雨水」(ニセ第一回参照)と一致している氷川です。そんな私も感情や情動は面に出さないだけで内面には非常に大きな感情のうねりが発生していることもよくあります。だから「どうしても譲れない」というときや「どうしても許せない」というときなどはやむなく実力行使にうって出ることもあります。無論、相手から先に手を出してきたときに限りますが…。そんな時、相手を罵るにはどのようなセリフが適切でしょうか。

○シチュエーションは以下の通り
 まず、条件として考えられるのは

 1、間違ったことを言っていないこと(あくまでも自分は正しいと主張するため) 
 2、相手の気分を意図的に悪くさせること(罵倒とはこのために行うものです) 
 3、相手を動揺させること(肉弾戦に突入した際、少しでも有利になるため) 
 4、罵った自分の気分が少しでも晴れること(これも罵倒の目的の一つ。但し全ての罵倒はこの条件をクリアしているものと考えられる) などです。そのあたりから一つ一つのセリフを検証してみましょう。

A 「この馬鹿野郎!!」等相手の知能に関するセリフ 
 最悪の例です。
 まず条件1の「間違ったことを言っていないこと」に触れる可能性があります。その相手が偏差値80を超えていたらどうするのでしょう。最低限そんな人間は馬鹿ではありません。このようなことから相手の知能に関するセリフは適切ではありません。但し「ボケ」は例外です。ボケはツッコミに対する役割と、痴呆症の別名といった二面性を持つ単語です。罵るために使うなら、対象は老人に限るべきでしょう。

B 「死ね」、「殺すぞ」等命にかかわるセリフ 
 これもどうでしょう。
 「死ね」といって死ぬ人間は、今の日本の一般市民にはいないと思います。その意味から考えて条件1に反します。「殺すぞ」に関しても「殺すぞ」といって本当に人間を殺した人間は一般市民の中の私の知り合いにはいません。そんなことをいう人間は嘘つきです。そう罵り返してあげましょう。有言不実行ほど決まりの悪いものはありません。殺るなら不言実行が一番です。

C 「このデブ」等外見的特徴に関するセリフ 
 この系統は有効です。まず、外見から言っているので条件1には反しないはずです。特に相手がその外見的特徴にコンプレックスを持っていれば、条件2も十分クリアできるでしょう。ただし相手もそのことは自覚しているでしょうから条件3についてはあまり期待できません。

D 「このクソ野郎」等、行動に関するセリフ   
 私はこの系統がベストだと考えます。
 「クソ野郎」に関して言えば普通の人間なら2日に1度は大便を排泄しているでしょうから条件1には反しません。しかし、条件2及び3は十分満たしているといえるでしょうか。大便を排泄するという行為はあまりにも日常的過ぎるのでダメージはあまり大きくないように思えます。そこで相手のパーソナルデータを駆使しし「ゲリ便野郎」(但し面識がある場合に限られますが)等アレンジを加えるとより有効です。特に自分が気づいていない一面を指摘されるとダメージは大きいでしょう。

 以上の点を踏まえて、最も適切なセリフとはなんでしょう。
 個人の趣味や状況によって違うと思いますが、私は
 「この、ゲロ野郎!!」
 というセリフの、蓄積された行き場のない怒りや悲しみを吐き出す印象と、その響きのよさや余韻が大好きです。

棒