第9回 酒臭い上に腹の立つ台詞
3月某日午前0時ごろ、僕が友人宅から麻雀の後帰宅途中、倒れている中年男性を発見。
一度は係わり合いになりたくないがために無視して通り過ぎるも、やはり気になって、交番へと走る。交番へ着くと、鍵は閉まっており警察官は仮眠中。ノブを回しドアのガラスを叩いて警察官を起こす。警察官、ゆっくりと起き出し、ドアを開ける。
「夜分、すいません。酔っぱらいか何か知らないけれど、男の人が倒れているので来てくれませんか?」
「おお、そうか。ちょっと待ってくれるか?パトカーで行こう。」
我々二人はパトカーに乗り込んだ。
「歩いてどっかいってしまっていたらすいませんね。」
「いや、それはいいんだが…。」
私の道案内により現場へ向かう。 そして、車のライトで辺りを照らし男性を探す。
「あれ、いませんねぇ。」
不安になる私。悪戯かと思われたらどうしよう…。事実最初に見た場所にはもういなかった。
「おぉ?ここにこけちょるんか?」
なんと酔っぱらいは排水溝に頭を突っ込み倒れていた のだ。
・・・・・・・・・・
「これはいかん!」
車を飛び出す二人。 男は重く、なかなか引き上げられない。 排水溝に足を突っ込み、頭を持ち上げたのは私の方だった。 すかさず道路に寝せて顎を持ち上げ気道確保をする。呼吸はあるようだ。さらに手首で脈を取る。脈拍も正常。
「お宅、詳しいな。」
「はぁ、薬学部ですから…。」
実際、薬学部で応急措置などは勉強しないのだが、こう説明するのが、一番わかりやすいだろう。 その様子を確認した後、警察官が無線で救急車を呼ぶ。
…なかなか来ない。ちなみに男性に意識はない。 約5分後、救急車が近くまで来た。 走って行って誘導する私。
救急車が現場に到着し、救急隊員が開口一番、
「一緒に飲んじょってんですか?」
「いや、全然知りません。」
何故、高貴なる私がこんな、こ汚いオヤジと一緒に飲んでいなければならないのか。救急隊員の目を疑いつつ力いっぱい否定した。わはは。
救急隊員が男の耳元で何度か大声で呼びかけると、意識を取り戻したようだ。 しかし、さすがに泥酔状態、わけのわからないことをうなっている。身元も分からない(どうやら救急隊員には目星が着いているようだが)。
結局、救急車で病院に搬送されることに。 残される警察官と私。
「じゃあ、僕はこれで…。」
「ちょっと待ちなさい。パトカーで送っていってあげよう。」
パトカーに乗るというのはどういう状況であれあまり気分のよいものではないが…。 パトカーの中で、色々尋問される。 一応、身元確認というものらしい。
調書を作らねばならないようだった。具体的には、住所、氏名、生年月日などだ。 それが終わり、家に送られる。 時間は0時半を少し回ったところ。
そして、普通に風呂に入り、普通にメールをチェックして、普通に寝た。 密かに、助けた男性からお礼か何か来ないものかと期待する。ここまでは、まあ普通の流れだ。しかし・・・・。
後日、口づてに、男性の身元がわかる。 どうやら身内の者が、うちの店に来たらしい。
しかしながら、その用件はお礼ではなく、口止めだった。
「こねーなことが知れたら仕事ができんようになるけぇ」
だの、どうのこうの…、だとか。
たしかに、酔って救急車で運ばれたとなれば世間体も悪いだろう。
とは言え、別に、僕も本気でお礼を期待していたわけではないが、この対応には腹が立った。
現金とは言わないまでも 菓子折りくらい持ってくるのが当然ではないか? 口止めをするならばなおさらだ。 よって私はこの事件を言いふらすことにした。
救急車で運ばれた男は●寿司の主人だ!(さすがにネット上ではこれ以上の名前は公開できません)
貴様のようなこ汚いオヤジに握られたスシが食えるか!