「しんざん」型巡視船の改良型として1994年に登場した小型巡視船。「しんざん」型を基準として連続行動時間の延長をテーマに設計がなされている。連続行動時間を延長するとはつまり、一回の出港で航行できる時間を長くすることであり、燃料や食糧の搭載量を増やし居住性を向上させる措置が取られている。
武装として20ミリ多銃身機関砲(JM61バルカン)を1門搭載している。これは防弾が施されたブリッジ内から遠隔操作できるシステム(※1)と連接されており、乗員は安全な環境からの射撃を行えるほか、同時に射撃指揮装置によりあらゆる環境下で正確な射撃を行えるようになっている。2001年に発生した九州南西海域工作船事件においては7番船「みずき」が工作船に対し船体射撃を実施。海面が荒れる中でも極めて正確な射撃が可能であることを示した。また、この事件における功績を称え、配置替え後も殊勲船として「みずき」の名を留めている。(※2)
1999年1月に発効した日韓漁業協定の新協定によって排他的経済水域が設定され、自国の排他的経済水域内における違法操業を取り締まれるようになった経緯を踏まえ、7番船の「みずき」は密漁船対策としてディーゼルエンジンの出力を強化する改良を施した補足機能強化型として設計されている。
8番船以降は大幅な改良を行い、それまで2軸(スクリュー)+ウォータージェット(※3)1基であったのをウォータージェット2基へ変更したことを皮切りに、船体の軽量化や水中抵抗の軽減など、更なる高速化・高機動化を目指した設計となった。
※1:正式名称はRFS(目標追尾型遠隔操縦機能)。
※2:海上保安庁では巡視船が他の管区に配置換えとなった際、必ず船名をその土地に因んだものに変更するしきたりがあるが、九州南西海域工作船事件に従事した「いなさ」「きりしま」「あまみ」、そして「みずき」は除籍されるまでその名を留めることを約束されている。
※3:<ウォータージェット推進>従来のスクリュー推進とは異なる推進装置で、水を高圧ポンプで後方に噴射することによって推力を得る方式。スクリューよりも高速航行に適しているため、巡視船での採用例は多い。
(解説:鯛風雲)