戦術概論
○はじめに |
どのような戦い、或いは戦争、もしくは事業を進めるためにあたって、 その成功への要素となるものがある。 『情報の解析』と『定まった戦略』、
そして、『臨機応変な戦術』である。
情報解析と戦略については、他所で語ることとして、 まずは、最初に戦術という存在について、説明する必要が有るであろう。
ここでは、戦争という手段を用いて論を進めていきたいと思う。
○戦術とは何か? |
と最初に問うとして、これが非常に戦略と同一視しがちである事に、 注目しなければならない。
これは、双方ともそれ事態を構成し関連する要素が、 重複しているからである。双方が関連する要素は、 主に戦争全般における、『実行』、或いは『執行』と呼ばれる言葉で区切ることが可能である。
なぜならそれらは、 兵力配置から戦局全体の運用、政治的効果を考慮する、 という戦争それ自体の存在意義に即し、成功に導くための考察であるからだ。
従って、戦略、戦術、双方の帰結点は同一のものである事も注目するべきである。
とするならば、 戦術、戦略の区分はどのような意味を有するのであろうか?一般に戦略はマクロ、戦術はミクロを総括する存在であるとする考えがある。つまり、戦争遂行にたあり、戦略は戦争全体を通して、遂行していく思考活動であり、戦術は戦争遂行の成功手段の過程に於いて、拠点となりうる各所における戦局での思考活動である。
では、双方の関係は 戦略が『主』であって、戦術とは『従』の関係なのであろうか?
それは、違う。 現実として、戦術的要因が、その後の戦略を決定づける場合がしばしばある。この事によって、双方が共有的存在である事を知ることができる。
さて本題である、戦術とは何か? という点を考察していこう。 まずは、その実効領域についてである。 先にも少し触れたが、戦術の実効領域は、戦争全体においては、それぞれの局点に於ける範囲である。
軍事上要衝となりうる、拠点の占領ないしは防衛、或いは、敵兵力の懺減等、実践に則した事柄に対し、成功を導き出すための思考活動を戦術的思考と呼ぶ。
またこれに対し、その戦術を実行する活動を『作戦』と呼ぶ。
戦術的思考法は、 作戦を実行する箇所の選定と、作戦を遂行する箇所の天候、地理的要因、麾下の兵力、敵の行動という、4つの要素を元に思考していく。
これらは、戦略的に重要と見なされた箇所を攻略し、より、戦略的活動に選択の幅を持たせるための活動である。
つまり、戦術とは、 戦略の遂行を円滑に進めていくための要素であり、 その方法を模索する活動方法を指す言葉である事も解るはずである。同様にして、戦術には実際の戦闘に際して、行う思考活動も含まれる事を明記しなければならないであろう。
実際に行われる戦闘の為の知的活動とは、 兵力の配置、陣形の構築、実際の戦闘指揮もこれに含まれる。
ただし、これらはあくまでも、 局地に於ける範囲でもあることも明記しなければならない。 つまる所、戦術の及ぼす範囲は、実際の戦闘領域であって、
戦術は、戦闘方法を円滑に行い、成功に結びつける、方法手段である。
従って、一つの戦術的勝利が、戦略的戦局全体に与える影響は少ない。 しかし、度重なる戦術的敗北が戦略的戦局に与える影響は少なくない。 複数の戦術的成功が、一つの戦略的成功を促進するという原理である。
これにより、戦術が戦争に対してミクロの面を総括するものであることが証明される。
戦術とは戦争に於ける行動の具現活動或いは、方法である。