2023年8月26日 境町の自動運転バスと宇都宮ライトレール開業を見る
全国で深刻化するバス運転士不足解消の切り札として、日本全国で急速に開始されているのが自動運転バスの実証運行。2023年時点では、京福電鉄の廃線跡で運行する福井県永平寺町を除けば、運転士が同乗し、安全確認や必要に応じて手動運転に切り替える「自動運転レベル2」による運行で実験が行われていますが、その中でも茨城県境町は全国で初めて、通年での運行を実施しているというので友人K、友人Nを誘って見に行ってみました。
使用されているのは、フランスのメーカーであるNAVYA社製『NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)』という、小型のモビリティです。
乗車人数は最大11人で、それほど多い人数が乗車できるわけではありません。
車内ディスプレイ。バス停を選択すると、自動運転を開始します。
自動運転できないときは、なんとXboxのコントローラーで手動操作を行っておりました。というか、多くの区間で自動ではなく手動での運転となっておりました。
親切なオペレーター(運転士)の方が色々と解説してくださり、大変勉強にはなったのですが、最高速度が20km/hなので、とにかく遅い!オペレーターの誘導で、後ろからくる車をどんどん先行させていました。
バス停
路面標示。予めインプットされた、決められたルートを走行する自動運転バスにとって、路上駐車は天敵ですので、こういう周知は重要ですね。
ちなみに境町は隈研吾による公共施設が次々と建築され、お馴染みの木の板がそこら中に貼り付けられていました。上写真は道の駅さかいの北側に隣接する「さかい河岸レストラン茶蔵」。大地震の時に大丈夫かなあ、これ…。
道の駅さかいは、境町とその周辺の物産のみならず、日本で唯一の沖縄県国頭村に特化したアンテナショップが併設され、見どころの1つです。
さて、境町は鉄道が通っておらず、最寄り駅の1つはJR東北本線の古河駅。往復ともにバスを利用しました。
古河市は古河城跡の近くに、日光街道古河宿ゆかりの古い建築が残っています。まずは坂長本店店蔵・袖蔵。江戸初期から両替商を始め,江戸末期頃から酒問屋を営んでいる商家です。上写真のうち左側の店蔵は、江戸時代後期に建てられた旧古河城文庫蔵を移築したといわれます。また、袖蔵は1863(文久3)年に建てられた旧古河城乾蔵を移築したといわれます。 国登録有形文化財です。
江戸時代の古河藩は大老の土井利勝や堀田正俊を筆頭に、幕府の老中クラスが藩主を務め、古河城は日光社参の将軍宿城としても使用されました。しかし、度重なる洪水対策として、1910(明治43)年から進められた渡良瀬川改修工事時に多くが河川敷となり、完全に遺構は壊されてしまいました。ただし、福法寺には古河城乾門が移築されて現存しています。
ぬたや屋本店。「甘露煮」の名店で、鮒の「あらい」を古河では「ぬた」と呼ぶことから、この屋号で呼ばれています。
鷹見泉石記念館。1633(寛永10)年に古河城主土井利勝が、古河城御三階櫓を建造したときの余材を使って、藩士のために建てたと伝えられています。奥氏・潮田氏・鷹見氏など家老を務めた人間が入居しました。
鷹見泉石記念館内にある「繍水草堂」。明治時代を代表する女流画家、奥原晴湖(1873〜1913)年の画室で、元々は埼玉県熊谷市にあったものですが、実家のある古河に移築したものです。なお、玄関と廊下は図面に基づき復元したものです。
古河市立古河第一小学校赤門。1904(明治37)年に古河第一小学校が建築されて以来の面影を今に伝えています。
さて、この日の真の目的は宇都宮ライトレールの開業を見る事。軌道法に基づく路面電車としては75年ぶりの新路線で、当日は午前10時から開業式や特別列車の運行、作新学院高吹奏楽部、宇都宮北高チアリーディング部、真岡女子高ダンス部などによるパレードが実施され、一般乗車は整理券配布の上で15時からスタートし、終日、特別ダイヤにより運行されました。
一般運行開始の時間までは暇なので、とりあえず宇都宮駅周辺をウロウロ。
う〜む、格好いい…。
いやいや、それよりも今のうちに食事ですね。
そして、一般運行開始時間が迫ると、次々と宇都宮駅東口へ車両が送り込まれていきます。
一般乗車としては開業1番列車が宇都宮駅東口を発車。
まさに桃太郎電鉄のゴール「住民は、大歓迎ですぞ!」状態で、沿線は大フィーバーしていました。
さて、宇都宮駅東口は大行列で乗車できる状態では無いため、車両基地がある平石までタクシーで向かうことに。宇都宮大学陽東キャンパス〜平石では、このように一般の鉄道並みの立派な構造物で、車道とオーバークロスしています。
平石車両基地。
平石駅。
駅名標なども洗練されたデザイン。富山ライトレール(現・富山地方鉄道富山港線)にも通じる部分がありますね。
平石中央小学校前〜飛山城跡にある鬼怒川を渡ります。
清原地区市民センター前は、バス停留所、タクシー乗降場、地域内交通乗降場、駐輪場などが整備された清原地区市民センター前トランジットセンターを併設しています。
グリーンスタジアム前。宇都宮ライトレールが絶妙なのは、沿道に大型商業施設、文教施設、スポーツ施設、工業団地などが絶えず配置されており、平日、土日ともに集客している点です。
グリーンスタジアム前〜ゆいの杜西。路面電車と思えない光景…。
Honda Cars 栃木中央 ゆいの杜店では、宇都宮ライトレール色のN-BOXが!
終点の1つ手前、かしの森公園前で下車します。
宇都宮ライトレールのハイライトの1つ、芳賀町工業団地管理センター前〜かしの森公園前は旧信越本線の碓氷峠並みの急こう配ですが、ハイパワーで走行します。
終点の芳賀・高根沢工業団地。ここでも列車に乗るのは長蛇の列でした。
宇都宮駅東口まで戻りますが、帰りは大混雑に報道でもあった通り、現金での支払い脚の対応に時間を要し、所定のダイヤより30分〜40分オーバーで到着。とは言え、実際に乗ってみてホームから車両まで段差無しで乗車できるのは、ノンステップバスでさえ出来ないバリアフリー化であり、福祉の観点からも非常に素晴らしいと感じました。事業費の観点から未だに反対する声も一部にありますが、みんなで利用して持続可能な公共交通になれば良いですね。