E956形新幹線
E954形「FASTECH 360」以来となる高速試験車両で、両端で異なる形状の先頭車がテストされる。
(写真:東北新幹線 大宮駅/撮影:裏辺金好)
●基本データ・運用区間
デビュー年:2019(令和元)年保有会社:JR東日本
最高速度:400km/h
使用列車:試験車両
運行区間:東北新幹線
●360km/h営業運転を目指す「ALFA-X」
JR東日本が次世代新幹線の実現に向けて、2019(令和元)年5月から運用している新幹線試験車両。愛称はALFA-X(アルファエックス)」で、『Advanced Labs for Frontline Activity in rail eXperimentation』“最先端の実験を行うための先進的な試験室(車)”の略称である。コンセプトは「さらなる安全性、安定性の追求」「快適性の向上」「環境性能の向上」「メンテナンスの革新」の4つで、将来の360km/h営業運転を目指して、次世代の新幹線における環境性能の向上、地震対策を含む安全性向上等の開発の検証等を行う。
全車電動車の10両編成×1本が、1〜6号車は川崎重工業、7〜10号車は日立製作所で製造。塗装は塗装はメタリックをベースに、緑色の帯を側面の上下に配置。途中で上下の帯をクロスさせることで、アルファベットの「X」を表現している。
外観上の最大の特徴として先頭車のノーズ(鼻)の長さが両端で異なり、東京方の1号車が16m(※参考:E5系は15m)、新青森方の10号車は約22mとなっており、トンネル進入時の車体への圧力などの違いを分析するほか、編成中に2種類の低騒音パンタグラフを設置。
また、窓の大きさや有無による車両構造や客室内環境等の評価を実施するため、窓の間隔は1、3、4、6、7、10号車がE5系普通車と同じ1040mm(ただし3号車と7号車は窓の面積が小さい)、2号車は980mm、グランクラスを想定した8号車は1130mm、グリーン車を想定した9号車は1160mm、さらに多目的室とミーティング室が設けられた5号車は、窓が殆ど設置されていない。また、8号車では車内を2つに分け客室環境を比較評価等を行う。
さらに、地震対策として台車に「リニア式減速度増加装置」を設け、コイルとレールの間に電磁的な力を発生させて車両の減速度を増加させるほか、「空気抵抗板ユニット」を屋根上に搭載し、地震発生時には板が車外に出すことで空気抵抗を増やし、停止距離を短縮する。
このほか、総合的に線路や車両の状態をモニタリングするシステムを構築したほか、将来の自動運転を目指して、出発から高速走行及び停車に必要な加速・惰行・原則といった機能のスムーズな車両の制御を実現するため、基礎的な研究開発を実施する。
走行試験は東北新幹線の仙台〜新青森間を中心に、日によっては大宮〜仙台間も走行する。
●ギャラリー
ロゴマーク。クロス上の側帯の角度に合わせて整えた字体によりIoTやAIなどのデジタルなイメージを表現し、水平ラインと右上がりのラインにだんだんと明るくなるグラデーションを用いることで、新幹線らしいスピード感と、先進的な技術を採用した新幹線が明るい未来につながることを表している。
(写真:東北新幹線 大宮駅/撮影:裏辺金好 ※以下すべて同じ)
新青森方は客室部分が非常に少なく、理想的な先頭形状のみ追求した形。
「FASTECH 360 S」の成果を元にしたE5系との並び。
●編成紹介
E956-1 (1号車)
東京方の先頭車で、ノーズの長さは約16メートル。
E956-2 (2号車)
E956-3 (3号車)
E956-4 (4号車)
E956-5 (5号車)
試験会議室であり、窓がほぼ設置されていない代わりにロゴマークを大きく掲出。
E956-6 (6号車)
E956-7 (7号車)
小窓が並ぶのが特徴。
E956-8 (8号車)
グランクラス車両で、客室を2つに分けている。
E956-9 (9号車)
グリーン車。
E956-10 (10号車)
新青森方の先頭車で、約22メートルという非常に長いノーズが特徴。