821系一般形電車
運転開始当初から2021年秋までは、前面周囲に配置された69個のLED装飾灯が点灯していた。
(写真:鹿児島本線 千早〜箱崎/撮影:リン)
●基本データ
デビュー年:2018(平成30)年(営業運転開始は翌年)運行区間:鹿児島本線
保有会社:JR九州
●YC1系と共通イメージの新主力車両
821系は国鉄から承継した415系の置き換えのために誕生したJR九州の一般形電車で、蓄電池搭載形ディーゼルエレクトリック車両YC1系と同時期に誕生。双方とも開発コンセプトを「やさしくて力持ちの鉄道車両」としている。3両編成を基本とするが、中間車両はT車であるため将来的な2両編成化も対応。車両デザインは無塗装アルミヘアライン仕上げで、前面は黒色、側面ドアはディープレッドメタリックとしている。また、YC1系とともに前面と側面ドアに飾り照明を施しているのが、本系列のユニークな点となっているほか、305系に続いてスマートドアと称する押しボタン式半自動ドアを採用した。種別・行先表示はフルカラーLEDを採用しているが、前面は種別を表示しない。
車内はホワイトを基調とした配色。座席はオールロングシートで、戸袋部分の腰掛にはヘッドレストがついている。また、各扉上部には17インチワイド画面液晶「マルチサポートビジョン」を設置。さらに、側扉付近の天井にはサークル状の吊り手を設置している。このほか、クハ821形には電動車いす対応の大型洋式トイレが設置されている。
システム面では、炭化ケイ素(SiC)という新しいタイプの半導体をモーターの制御装置に採用し、415系に比べて消費電力量を約70パーセント低減。さらに主変換装置(CI)や補助電源装置(SIV)の冗長性(信頼性)による安全・安定輸送の確保を目指している。
また、編成間の伝送情報拡充を目的に、JR九州初となるイーサネット対応電気連結器を装備。また、車両に搭載している機器の運転状況を把握するシステムとして、主回路装置やブレーキ装置、台車などの各機器にセンサーを搭載し、各部位の電流値や電圧値、圧力値、振動などのデータを蓄積できる状態監視システムを搭載。正常状態での連続的な機器データを収集・蓄積することで、不具合の予兆をとらえるとともに、点検周期の延伸も見込まれている。
●車内の様子
車内はロングシートで、1人当たりの座面幅は従来の440mmから460mmに拡大。ドア横の座席は背もたれにヘッドレストを付けている。
(撮影:味野源次)
817系3000番台やBEC819系などと比べるとクッション性を向上。一方で腰部分には相変わらずクッションを付けず、あくまで木のままとなっている。
(撮影:味野源次)
●細部
(写真:鹿児島本線 千早〜箱崎/撮影:リン)
側面の行先表示器。日英中韓の4か国語が順次切り替わる。
(撮影:裏辺金好)