博物館明治村〜愛知県犬山市〜
明治村は、明治に建築された建物を移築保存する日本屈指の野外博物館で、名古屋鉄道が運営(実際は子会社の名鉄インプレスに運営委託)。建築家の谷口吉郎と名古屋鉄道の土川元夫の両氏によって、1965(昭和40)年3月18日に開村されました。
開村当時は、札幌電話交換局、京都聖ヨハネ教会堂、森鴎外と夏目漱石の両文豪が相前後して生活した東京の家などの建物、電車等の施設物、計15件でスタート。そして、現在では67件、敷地100万平方メートル(設立時の2倍)となっています。
さらに日本の近代建築だけでなく、遠くシアトル、ハワイ、ブラジルの建物も移築。また、明治村の建物・施設は国の重要文化財10件と 愛知県有形文化財の建造物1件、さらに国登録有形文化財となると殆ど・・・と文化財だらけ。また、移築された建造物は様々な用途の建築が幅広く集められ、当時の時代を追体験できる様々な展示も行われています。
(解説&撮影:裏辺金好)
○場所
○一丁目
第八高等学校正門 【国登録有形文化財】/旧所在地:名古屋市瑞穂区瑞穂町
1909(明治42)年築。典型的な煉瓦造りの門で、四本の門柱は、赤い煉瓦に白い花崗岩を帯状に配しています。現在は、明治村の正門として利用されています。
大井牛肉店 【国登録有形文化財】 /旧所在地:神戸市生田区元町
当時、外国の商館が建ち並ぶようになった神戸に、岸田伊之助が牛肉販売と牛鍋の店として建築したもので、明治村でもここで牛鍋を食べることが出来ます。小ぶりな建築ながらも、コリント式の柱と半円アーチの窓を配するなど、様々な西洋建築の技法を取り入れています。
三重県尋常師範学校・蔵持小学校 【国登録有形文化財】/旧所在地:三重県名張市蔵持
1888(明治21)年築。設計は三重県の大工である清水義八で、E字形で左右対称の二階建でなのが特徴(ただし移築にあたっては中央玄関部分と右翼の2教室のみ復元)。師範学校とは明治19年の師範学校令により、小学校教師の養成を目的として、各県に一校ずつ設置されたもの。この建物は三重県の尋常師範学校本館として建てられたもので、1928(昭和3)年に名張市に売却・移築され、蔵持小学校の校舎として使われていました。
近衛局本部付属舎 【国登録有形文化財】/旧所在地:東京都千代田区千代田
1888(明治21)年築。皇居を守護するため、近衛局(のち近衛師団)の建物として建てられたもので、のちに皇宮警察本部となり、1967(昭和42)年まで坂下護衛所として使われたものです。
赤坂離宮正門哨舎 【国登録有形文化財】 /旧所在地:東京都港区元赤坂
1908(明治41)年築。赤坂離宮の創建当時から、その正門両脇の内外に1基ずつ、合計4基が建てられた正門哨舎です。
聖ヨハネ教会堂 【国指定重要文化財】/旧所在地:京都市下京区河原町通五條
1907(明治40)年築。明治になりキリスト教が解禁されると、京都でも教会が次々と建てられるようになります。この聖ヨハネ教会堂は、プロテスタントの一派日本聖公会の京都五條教会として建築されたもので、宣教師でもあったアメリカ人ガーディナーの設計によるもの。1階をレンガ造、2階を木造としています。
ちなみにガーディナーは立教学校(現在の立教大学)の校長として1880(明治13)年に来日した人物で、立教大学校校舎、明治学院ヘボン館、日光真光教会等などの設計を手がけています。
学習院長官舎 【国登録有形文化財】/旧所在地:東京都豊島区目白
1909(明治42)年築。洋館と和館とをつなぎ合わせた形式で、実務では洋間を、生活は和室を使いました。
西郷從道邸 【国指定重要文化財】/旧所在地:東京都目黒区上目黒
1877(明治10)年代築。西郷隆盛の弟である西郷從道が、接客の場として和館である本館から少し隔てた場所に本格的な洋館として建設させたもの。フランス人建築家レスカスの設計と考えられ、半円形に張り出されたベランダが特徴であるほか、耐震性を考慮して屋根は軽い銅板を葺き、壁の下の方にレンガをおもり代わりに埋め込むことで、建物の浮き上がりを防ぐなどの工夫が凝らされています。
西郷從道邸1階
西郷從道邸2階
森鴎外・夏目漱石住宅 【国登録有形文化財】/旧所在地:東京都文京区千駄木町
1887(明治20)年頃築。医学士中島襄吉の新居として建てられた後、明治23年に文豪の森鴎外が借家して1年余りを過ごし、さらに明治36年から明治39年までは、文豪の夏目漱石が借家して住んで「吾輩は猫である」を執筆したという、数奇な運命の住宅です。また、当時の庶民の住まいを考える上でも貴重な存在です。
二重橋飾電燈 【国登録有形文化財】/旧所在地:東京都千代田区千代田
1888(明治20)年築
鉄道局新橋工場 【国登録有形文化財】/旧所在地:東京都品川区大井町
1889(明治21)年築。鉄道施設の国産化を目指し、日本で製作された鋳鉄柱、小屋組鉄トラス、鉄製下見板、サッシ等を組み立てたもの。工場内では後述する5号御料車、6号御料車が保存されています。
昭憲皇太后御料車(5号御料車) 【鉄道記念物】
1902(明治35)年製造。最初の皇后用御料車で、帝室技芸員の橋本雅邦・川端玉章が描いた天井画など華麗な内装を誇っています。
明治天皇御料車(6号御料車) 【鉄道記念物】
1910(明治43)年製造。車内天井に張られた蜀江錦、御座所内の金糸の刺繍や七宝装飾、螺鈿装飾、木象嵌など日本の伝統技術の粋を集めた絢爛豪華な内装が特徴です。
三重県庁舎 【国指定重要文化財】/旧所在地:三重県津市栄町
1879(明治12)年築。間口が54mに及ぶ大きな県庁舎で、内務省庁舎を模範に、正面側に二層のベランダを設けるなど当時の典型的な官庁建築のデザインを採用。なお、既に紹介済の三重県尋常師範学校と同じく、三重県の大工である清水義八らが設計しています。