豊郷小学校旧校舎及び講堂は、卒業生である古川鉄治郎氏(伊藤忠商事および丸紅の前身にあたる伊藤忠兵衛商店専務)が、地元に恩返しをしたいと寄附したことにより、1937(昭和12)年にウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計によって建設された、当時随一の壮大な学校建築で、当時は豊郷尋常高等小学校と呼ばれました。最大の特徴は、階段の手すりに施された「ウサギとカメ」の彫刻たち。イソップ童話に基づき、こつこつと努力して成功してほしいという、古川鉄治郎とヴォーリズの願いがこめられたもので、多くの子供たちがこれを見て育ちました。
ところが1999(平成11)年に大野和三郎氏が豊郷町町長に就任すると、町長と町議会議員の多数は耐震性の問題を挙げて校舎の解体と新校舎の建設を推進。これに対して保存運動が起こり、訴訟や町長リコール選挙にまで発展し、全国ニュースに取り上げられます。一事は解体強行を進めようとした大野町長でしたが、最終的には新校舎建設のみに止まりました。
そして2007(平成19)年からは新町長の下、旧校舎の耐震・改修工事を実施し、2009(平成21)年5月30日、町立図書館などが入居する複合施設として活用が開始されました。なお、このときに外観も磨き上げられ、建設時の美しい姿を取り戻しています。また、近年はアニメ「けいおん!」内での校舎のモデルとなったことから、アニメファンの関心を集めています。
(撮影:リン *特記を除く/解説:裏辺金好)