同潤会青山アパート〜東京都渋谷区〜
同潤会青山アパートは、1926(大正15)年に中之郷アパート(墨田区)とともに建築された、(ほぼ)日本最初のアパート。建築を推進した同潤会は、大正12年9月に発生した関東大震災の翌年に内務省社会局に設立された財団法人で、今の都市機構(旧:住宅都市整備公団)の原型にあたります。
後述しますが、同潤会は単なる仮設住宅を造ろうとしたのではなく、様々な機能を備えた最新鋭のアパートを造ろうとしました。こうして完成したのが、これら同潤会アパート群で、当時は「東洋一」との評判もありました。それは、約80年も生活空間として使用され続けたことからも実証済(なお、一部は商業施設となり、外観が大きく変えられています)。
しかし、老朽化は如何ともしがたく、この同潤会青山アパートは2003年に取り壊され、跡地には商業施設と住宅を兼ね備えた「表参道ヒルズ」が誕生しています。なお、この「表参道ヒルズ」も同潤会青山アパートの雰囲気を引き継ごうと、高さを大幅に抑え、さらに青山アパートのうち1棟を復元され、歴史の継承が図られています。
(撮影&解説:裏辺金好)
○地図
○風景
さて、この同潤会アパートの特徴とはいったい何か。それは、以下の点があげられます。
・耐火・耐震構造に強いRC造アパート。今のアパートの基本構造の最初です。
・和室・洋室どちらも選択可能。ただし、ダニの温床になる畳はRC床の上にコルクを貼り、保温、弾性を持たせ、その上に薄縁を二重に敷く。
・流し台、ガスコンロ台をはじめとして調理台、ダストシュート、米櫃、炭櫃まで備えつけ。
・水洗トイレの完備
・共同食堂を造り、住民同士のコミュニケーション向上を図る。
・子供の遊び場を作る
・暖房の完備(後期建築より)
青山アパートも末期はツタが周りを囲み、かなりオンボロなアパートでしたが、このように人々の生活様式さえ変えてしまおうとした、意欲的なアパートだったのです。80年代後半から近年にかけて、三ノ輪、上野下など全てのアパートが取り壊され、再開発されてしまいましたが、このような建物があったことはいつまでも記録しておきたいものです。
表参道ヒルズ「同潤館」
2006年2月にオープンした表参道ヒルズは安藤忠雄氏による設計。高層ビルがブームの中、表参道の景観と同潤会青山アパートを記憶した建築となっています。
中でも、この同潤館は同潤会青山アパートメントを建築当初の姿に復元したもの。かつて同潤会アパートメントで使用されていた部材も、随所に再利用しており、他の同潤会建築がすべて姿を消した現在、唯一その雰囲気を味わえます。