三井寺（園城寺）～滋賀県大津市～

　三井寺は天台寺門宗の総本山で、正式には長等山園城寺と言います。
　伝承では、壬申の乱で大海人皇子（後に天武天皇）に敗れて亡くなった大友皇子（弘文天皇）の子である大友与多王が、父の菩提を弔うために寺の建立を発願し、６８６（朱鳥）元年に許可されたことが起源とされています。この際、天武天皇から天武天皇から「園城」という勅額を賜り、園城寺とされる一方、寺に涌く霊泉が天智・天武・持統の３代の天皇の産湯として使われたことから、「御井の寺」とも呼ばれ、三井寺の通称が生まれています。
　貞観年間(８５９～８７７)に、智証大師円珍（ちしょうだいしえんちん）和尚が、園城寺を天台別院として中興し、円珍の死後は同じ天台宗の比叡山延暦寺と対立。延暦寺を山門、三井寺を寺門と称し天台宗は二分され、激しく対立し、平安時代や鎌倉時代には双方で寺の焼き討ちが行われます。
　室町時代は足利氏の庇護を受ける一方、１５９５（文禄４）年には豊臣秀吉の怒りをかって寺領が没収されます。ただ、秀吉は死去する直前に三井寺の復興を許可し、１５９９（慶長４）年には豊臣秀吉正室・北政所により金堂が再建され多のを皮切りに、現在みられる伽藍が整えられました。
　多くの建物が室町時代や江戸時代以来の長い歴史を持ち、琵琶湖を臨むその風景は壮観です。

（解説＆撮影：裏辺金好）

○場所

○風景

境内案内図

大門　【国指定重要文化財】 　１４５２（宝徳４）年築。天台宗の古刹である常楽寺（滋賀県湖南市）にあった門を、徳川家康の寄進によって１６０１（慶長６）年に移築されたものです。

釈迦堂（食堂）　【国指定重要文化財】
室町時代築。仁王門をくぐってすぐ右手にあり、清涼殿を下賜され移築されたとの伝承もあります。

金堂　【国宝】
１５９９（慶長４）年築。豊臣秀吉の正室である北政所が再建したもの。
ちなみに先代の金堂は豊臣秀吉が延暦寺に移築させ、現存しています。

鐘楼　【国指定重要文化財】
１６０２（慶長７）年築。近江八景の一つ「三井の晩鐘」で有名な梵鐘を吊っています。

閼伽井屋／三井の霊泉 　【国指定重要文化財】 　１６００（慶長５）年築。金堂西側奥に金堂と接して建っており、この内部から湧く霊泉が、天智・天武・持統天皇の産湯として使われ、三井寺の名前の由来となっています。また、建物上部には左甚五郎による龍の彫刻があります。

閼伽井石庭
現地の解説板では日本最古の庭園とされています。

熊野権現社
１８３７（天保８）年築

教待堂
１５９９（慶長４）年築

光浄院客殿　【国宝】 　１６０１（慶長６）年築。山内で最も格式の高い子院で、狩野派による華麗な障壁画が見事。普段は公開されていないため、特別公開時に見ることが出来ます（※撮影は禁止）。また、庭園の池は客殿の縁側からすぐに広がり、建物と一体化した特徴的な作庭です。こちらは国の名勝に指定されています。