江川邸〜静岡県伊豆の国市韮山〜
○解説
伊豆の国市韮山にある江川邸は、現存する建物の多くが国の重要文化財に指定されている旧家で、江戸時代は幕府直轄地を支配するために設置された韮山代官所として使われたもの。江川家は清和源氏である源経基の孫・源頼親を祖とする大和源氏の一族で、当初は宇野氏を称し、平安末期に第9代の宇野親信(うのちかのぶ)が現在地に移住。以後、この地を長く領有し、室町時代に江川氏と称します。戦国時代に北条早雲が韮山城を制圧すると、第23代の江川英住(ひでずみ)はこれに従いますが、豊臣秀吉の小田原征伐の際に徳川家に従うようになり、江戸時代は韮山における幕府天領の代官職を代々務めてきました。江川家で特に有名なのは第36代当主の江川英龍(坦庵)で、幕末に西洋術砲術に着目し、2015(平成27)年に世界遺産へ登録された韮山反射炉の工事に着手したほか、パン(堅パン)に注目し、日本で初めてパンを焼いたことから、パン祖と呼ばれています。
(写真&解説:裏辺金好)
○場所
○風景
表門 【国指定重要文化財】
1696(元禄9)年築。さらに1823(文政6)年に修築されたもので、薬医門形式です。
枡形
表門の前にある広場。江川英龍はここで、外国からの侵略に備えて農民兵を組織して訓練を実施しました。
主屋 【国指定重要文化財】
江戸時代初期の建築。江戸時代後期には、江川英龍の父である江川英毅が、玄関部分の改築や書院の整備を行っています。
主屋 【国指定重要文化財】
非常に広々とした土間が特徴。
主屋 【国指定重要文化財】
ボートホーウィッスル砲車
19世紀後半のアメリカ製。1854(安政元)年にペリーから幕府に贈られたものと考えられています。なお、砲身と砲弾はレプリカです。
主屋 【国指定重要文化財】
主屋 【国指定重要文化財】
主屋(台所) 【国指定重要文化財】
主屋(塾の間) 【国指定重要文化財】
西蔵(肥料蔵) 【国指定重要文化財】
19世紀中期の建築。正面から見ると将棋の駒のように見えるため、駒蔵とも云います。
南米蔵・北米蔵
前者は1892(明治25)年、後者は1919(大正8)年の建築。
武器庫 【国指定重要文化財】
19世紀中期の建築。
パン祖の碑
井戸
裏門
豊臣秀吉による小田原北条攻めに伴い、韮山城が攻撃された時の銃撃や矢じりの跡も残っているとか。