旧安田楠雄邸〜東京都文京区〜
○解説
旧安田楠雄邸は1919(大正8)年に「豊島園」の創設者である実業家・藤田好三郎氏の住宅として建てられたもので、清水組(現・清水建設)が施工。それから間もない1923(大正12)年、旧安田財閥の創始者・安田善次郎氏の娘婿である安田善四郎氏は関東大震災で被災し、ちょうど藤田氏が引越しを考えていたことから、この藤田邸を買い取り引っ越します。以来、安田家の住居として使われ、安田善四郎氏の長男である安田楠雄氏と安田幸子夫妻に引き継がれましたが、1995(平成7)年に安田楠雄氏が亡くなられたことから、翌年に安田幸子氏が日本ナショナルトラストに寄贈しました。
1998(平成10)年に東京都名勝旧安田楠雄邸庭園に指定され、修復工事を経て2007(平成19)年4月7日から、水曜日と土曜日の一般公開が開始されました。
(撮影&解説:裏辺金好)
○場所
○風景
比較的奥行きが長いのが特徴
玄関
武家屋敷の面影を残した格調高いもの。天井は杉の柾目板を市松に貼っています。
ダイヤル式電話機
玄関の先には昔ながらの電話機が現存。1927(昭和2)年に登場した「2号自動式壁掛電話機」です。
応接間
唯一の洋間で、ガラス戸で仕切った上で庭側にサンルームを設けています。家具は藤田家時代から引き継いだ長方形のテーブル、背もたれのある木製の小さな椅子、廊下側の書棚等のほか、1929(昭和4)年に安田楠雄氏、幸子氏がご結婚された際の結婚祝いとしてである2段丸テーブルとアームチェア4脚や、1923(大正12)年にアメリカで製造された蓄音機、1930(昭和5)年頃のピアノが現存しています。
サンルーム
結霜ガラス
応接間のガラスは、結霜(けっそう)ガラスと呼ばれるもの。摺りガラスの表面にニカワを塗った後に乾燥させ、収縮したニカワを剥がすことで出来る模様です。
残月の間
京都の表千家の残月亭を写した残月床が特徴
茶の間
猫間障子(ねこましょうじ)と呼ばれる、障子の中央に2枚の小障子をつけているのが特徴。
台所
安田家で唯一改造を行った場所。安田楠雄氏、安田祥子氏の結婚を機にシステムキッチンが導入されました。
木の冷蔵庫
昭和30年頃まで使われていた木の冷蔵庫が未だに残っています。電気式ではなく、上の段に氷を入れて下の段を冷やす仕組みです。
浴室
浴室
こちらの流しは、女性の長い髪の洗髪に使われた場所
庭園
予備室
ここからは2階の様子。建築当時に用途が未定だったのか、予備室と呼ばれるこの部屋には雪見障子が入っています。ここから見る紅葉は絶景だとか。
水屋
予備室の向かい側にあり、2階でお客さんへ、お茶を出すために使用。
次の間・客間
次の間の奥に、安だけで最も格式の高い部屋である客間が続きます。
客間
こちらの欄間は、花狭間欄間(はなざまらんま)と呼ばれるもの。細かくタヌキ状に入れた組子に花模様の断片板を付け、組子の隙間が花模様に見えるのが特徴です