九品仏浄真寺(奥沢城跡)〜東京都世田谷区〜
○解説
九品仏(くほんぶつ)の通称で親しまれる浄真寺は、世田谷城の出城として天文〜永禄年間頃に吉良頼康が築城し、1590(天正18)年の豊臣秀吉による小田原征伐に伴い廃城。1678(延宝6)年、 珂碩(かせき)上人(1617〜1694年)がこの地に浄土宗の寺院として創建。天保年間に発行された江戸名所図会に描かれた堂塔の配置は現在もほとんど変わりなく、本堂や仁王門などは江戸時代に建てられたもの。また、紅葉の時期は格別であり、まるで京都に来たかのような雰囲気です。
本堂の向かい側には3つの阿弥陀堂(三仏堂)があり、3体ずつ合計9体の阿弥陀如来像が安置されています。彫刻の名手でもあった珂碩上人の作品で、九品仏という名前の由来。それぞれ上品上生(じょうぼんじょうしょう)、上品中生、上品下生、中品上生、中品中生、中品下生、下品上生、下品中生、下品下生という、浄土教における極楽往生の9つの階層を表しています。
(撮影・解説:裏辺金好)
○場所
○風景
北東部分が改変されてしまっていますが、方形の敷地が奥沢城時代の名残をとどめています。
参道
総門
仁王門 【世田谷区指定有形文化財】
1793(寛政5)年築。下層に一対の金剛力士像、上層に阿弥陀如来像と二十五菩薩像が安置されています。世田谷区内で唯一の楼門(ろうもん)建築です。当初は茅葺でしたが、1965(昭和40)年に銅板葺に改められました。
金剛力士像
鐘楼
1708(宝永5)年築で、彫刻は見事なもの。梵鐘は東京都指定有形文化財(工芸品)です。
本堂
1698(元禄11)年築。対面にある三仏堂とともに建立されたもので、当初は茅葺でしたが、仁王門と同様に1965(昭和40)年に銅板葺に改められています。
三仏堂 【世田谷区指定文化財】
1698(元禄11)年築で、中央に上品堂、写真右手に中品堂、左手に下品堂を配しています。なお、安政の大地震と関東大震災では甚大な被害を受けており、その都度補修が行われたほか、1983(昭和58)年に大規模な修復工事を行って、創建当時の威容を取り戻しています。
中品堂(ちゅうぼんどう) 【世田谷区指定文化財】
上品堂(じょうぼうんどう) 【世田谷区指定文化財】
下品堂(げぼんどう) 【世田谷区指定文化財】
2034年まで阿弥陀如来像が1体ずつ補修されることに伴い、登場したゆるキャラ。
東門