忍野八海〜山梨県南都留郡忍野村〜


 忍野八海は富士山の伏流水および杓子山から石割山に係る火山山麓からの伏流水に水源を発する、忍野村の湧水池のうち「出口池」「お釜池」「底抜池(そこなしいけ)」「銚子池」「湧池(わくいけ)」「濁池(にごりいけ)」「鏡池」「菖蒲池」の8つを指します。かつてこの地に存在した忍野湖が枯れた後、いくつか残った湧水池が富士御手洗元八湖として富士修験の霊場となりました。「八海」の名前の由来は、富士講の人々が富士登山に際し行った八海巡礼に由来します。
 江戸時代に一時荒廃しますが、1843(天保14)年に富士講の一つである大我講の禊ぎの池として再興され、法華経の思想に基づく「八大竜王」が祀られ、出口池を一番霊場、菖蒲池を八番霊場とする巡礼路が整備。関東一円に知られるようになります。明治政府の廃仏毀釈によって富士信仰は衰退し、忍野八海での水行も衰退しますが、1960年代から観光地化が進み、現在は多くの観光客が訪れています。
 1934(昭和9)年に国の天然記念物に指定。1985(昭和60)年に環境庁(現・環境省)から全国名水百選に選定。2013(平成25)年に「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一部として世界文化遺産に登録されています。
 さて、忍野八海エリアには人工的に造成された池も多く、代表的な景観として知られる上写真の中池は旅館のテニスコートを造成したものですが、観光の中心地となっています。
(撮影:リン)

〇地図



○風景


出口池(一番霊場、守護神:難陀竜王)
面積1,467平方メートル、水深約0.5mで、忍野八海で最大の池。忍野八海でここだけが離れた場所にあります。


お釜池(二番霊場、守護神:跋難陀竜王)
面積24平方メートル、水深約7mで、忍野八海で最小の池ですが、釜中に熱湯が沸騰するように湧水することが名前の由来になっています。

底抜池(三番霊場、守護神:娑迦羅竜王)
面積208平方メートル、水深約1.5mで、忍野八海の中でも特に昔の風景を保っていると云われれているほか、お釜池と地底で水脈がつながっているといわれています。

銚子池(四番霊場、守護神:和脩吉竜王)
面積79平方メートル、水深約3mで、祝言の日にこの池に銚子を持ったまま身を投げた花嫁の伝説と、かつて銚子の形に似ていたことが名前の由来です。

湧池(五番霊場、守護神:徳叉迦竜王)
面積152平方メートル、水深約5mで、2.2立方メートル/秒という忍野八海随一の湧水量を誇ります。

濁池(六番霊場、守護神:阿那婆達多竜王)
面積36平方メートルで、文化年間(1804年頃)には濁っていたことが名前の由来ですが、現在は透き通っています。みすぼらしい行者が一杯の水を求めるも断られ、池の水が濁ってしまったという伝説もあります。

鏡池(七番霊場、守護神:麻那斯竜王)
面積144平方メートルで、逆さ富士が映ることが名前の由来。

菖蒲池(八番霊場、守護神:優鉢羅竜王)
面積281平方メートルで、その名のとおり、周囲に菖蒲が生い茂っています。


渡邉家住宅(榛の木林資料館)
18世紀後半築と云われ、忍野村最古の茅葺民家。

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