上町地区の古い町並み〜高知県佐川町〜
佐川町は江戸時代に土佐藩筆頭家老の深尾家の城下町として発展した場所で、上町地区は主に商人が居を構えたまちでした。現在も古い町並みが残り、国指定重要文化財の竹村家住宅や上写真の旧須崎警察署佐川分署などが見どころとなっています。
また、2021(令和3)年4月17日にロ481号客車展示施設うえまち駅がオープンし、1906(明治39)年に製造され、国内現存唯一の四輪木造二等客車を見ることができます。
(撮影:リン)
〇地図
○風景
名教館 【高知県指定文化財】
名教館は1772(安永元)年に佐川領主の深尾氏が家塾として創設したのが始まりで、次第に深尾氏家臣全ての教育の場となりました。1830(天保元)年、東元町に広大な校舎を建設。玄関部分が現存し、2013(平成25)年に上町地区へ移築されました。
旧浜口家住宅
江戸中期より佐川で酒造業を営んだ浜口家の住宅。2013(平成25)年に改修され、カフェも併設、お土産販売や休憩所としても利用出来ます。
司牡丹酒造株式会社
関ヶ原の戦いの功によって土佐へ入国した山内一豊に伴って、佐川領主となった深尾氏。この際にお抱えの酒造り職人が佐川で1603(慶長8)年に創業した造り酒屋です。東西に延びる「酒蔵の道」には、江戸時代以来の蔵も残っています。
竹村家住宅 【国指定重要文化財】
店舗部(東棟)は1780(安永9)年頃、座敷部は1838(天保9)年築。江戸時代より造り酒屋として栄えた商家で、深尾家に多額の資金調達を行うほど。1763(宝暦13)年に名字帯刀を許されました。和紙張り仕上げの貼り付け壁、付書院の花頭窓などが特徴で、江戸幕府の巡検使の宿としても使われています。
旧竹村呉服店(キリン館) 【国登録有形文化財】
幕末〜明治初期築。マルキュウの呼称で通った竹村呉服店の建物で、先ほど紹介し、隣接する竹村家の本家から1777(安永6)年に分家しました。現在は雑貨販売と喫茶を営んでいます。
佐川文庫庫舎(旧青山文庫)
1886(明治19)年に須崎警察署、佐川分署として上町西方の山側に建築された疑洋風建築。1920(昭和5)年に西町に移築し、川田文庫・青山文庫として使われたのち、1978(昭和53)年に佐川町総合文化センター敷地内に民具館として移築。2010(平成22)年に現在地へ移築されています。
ロ481号客車展示施設うえまち駅
ロ481号は、1906(明治39)年に鉄道作業局新橋工場(現在のJR東日本東京総合車両センター)で製造され、現存唯一の四輪木造二輪客車であることから準鉄道文化財に指定されています。土讃線の須崎〜日下間などで活躍した後、1933(昭和8)年に佐川町出身で鉄道建設に尽力した元宮内大臣 田中光顕伯爵の功績をたたえ、鉄道省から佐川町へ寄贈。
その後は青山文庫(現在の佐川文庫庫舎)の隣で読書場として使用されてきましたが、老朽化に伴い1968(昭和43)年に国鉄へ返還され、多度津工場にて復元展示されていたものが、このたび里帰りしたものです。
戦時中の金属供出により車輪、板ばね台車が失われていましたが、多度津工場時代に明治期の車両の部品が流用されて復元されています。
車体を支える台枠は当時のもので、鉄道院作業所 新橋工場製を意味すると思われる「鐵作新橋 明治三十九」と刻まれたプレートが貼られています。