称名寺〜神奈川県横浜市金沢区〜
称名寺は真言律宗別格本山の寺院で、山号は金沢山(きんたくさん)。正式な創建時期は不明ですが、鎌倉幕府二代執権北条義時の孫で、引付衆、評定衆などの要職を務めた北条実時(さねとき)が、六浦荘の居館内に阿弥陀三尊を祀った持仏堂から発展したと云われています。
1267(文永4)年、下野薬師寺の僧・審海を開山に招いて真言律宗の寺となったほか、実時の子である顕時(あきとき)が寺内外の土地を寄進し、本尊弥勒菩薩立像を建立。さらに、顕時の子である貞顕(さだあき)が伽藍を大規模に整備し、金堂や講堂、鐘楼、仁王門など七堂伽藍を備え、本堂から仁王門の間にある池を東西に分けて反橋、中島、平橋を渡り金堂に至るという、浄土式の庭園が見られた様子が称名寺絵図(1323年)に描かれています。
1333(元弘3)年に北条家が滅亡した後は衰退し、後醍醐天皇や鎌倉公方、豊臣秀吉、徳川家康ら時の権力者の庇護を受けるも往時の勢いは取り戻すことはできませんでした。しかし、1978(昭和53)年度から約10年かけて保存整備が行われ、浄土式庭園が再び姿を見せています。
また、隣接して神奈川県立金沢文庫があります。これは北条実時が設けた日本最古の武家文庫が起源で、1897(明治30)年に伊藤博文らが復興したもの。
金沢北条氏歴代(実時、顕時、貞顕、貞将)の肖像画(いずれも国宝)や、平安時代に書写された『文選集注』(国宝)をはじめ、歴史・政治・文学・宗教などに関する書籍「称名寺聖教」(国宝)約16,000冊、中国・宋代の木版印刷の集大成ともいえる「宋版一切経」(国重文)ほか、数々の貴重な文書を保管しています。
(撮影:裏辺金好)
〇地図
○風景
称名寺惣門(赤門)
1771(明和8)年築。
称名寺塔頭光明院表門 【横浜市指定有形文化財】
1665(寛文5)年築。切妻造茅葺の四脚門で、和様を基本に禅宗様を加味した意匠です。光明院は江戸時代後期には称名寺の5つの塔頭の中でも第一位を占めていました。
称名寺仁王門
1818(文政元)年築。江戸の豪商・石橋弥兵衛の寄進により建立されたものです。内部に納められてる仁王像は1323(元享3)年に造られたもので、神奈川県指定重要文化財。仁王門創建時期から存在すると思われます。
称名寺金堂 【神奈川県指定重要文化財】
1681(天和元)年築。禅宗様で、入母屋造本瓦葺(当初は茅葺)。
称名寺釈迦堂 【横浜市指定有形文化財】
1862(文久2)年築。禅宗様で、宝形造茅葺です。
称名寺鐘楼
北条(金沢) 顕時・貞顕墓所
神奈川県立金沢文庫
称名寺と金沢文庫の間のトンネルに、安藤広重の「武州金沢八景」が展示されています。
北条実時胸像