柴又帝釈天/山本亭/葛飾柴又寅さん記念館〜東京都葛飾区〜


 葛飾区柴又は映画「男はつらいよ」(主演・渥美清、原作・監督:山田洋次 ※一部除く)の舞台として知られ、戦災や開発を免れた昔ながらの建築が数多く残ります。2018(平成30)年に「葛飾柴又の文化的景観」として国の重要文化的景観に選定されていました。
 このページでは、その中心となる柴又帝釈天と参道をはじめ、カメラ部品メーカーである合資会社山本工場の創立者、山本栄之助氏の住居であった山本亭、寅さん記念館、矢切の渡しなどをご紹介します。
 (撮影:裏辺金好)

○地図



○柴又駅〜柴又帝釈天参道

柴又観光の始まりは京成電鉄金町線の柴又駅。映画「男はつらいよ」では第1作、第6作、第25作で登場しました。ちなみに金町線は京成金町駅と京成高砂駅を結ぶ、全長2.5kmの短い路線。途中駅はこの柴又駅しかありません。



駅前に建つ「フーテンの寅」像

同じく駅前に建つ「見送る さくら」像

帝釈天参道。常夜灯は渥美清さんの寄贈です。



高木家老舗は、男はつらいよロケの際にスタッフ、キャストの休憩や衣装替えの場所として利用された場所。


○柴又帝釈天

 参道の奥が柴又帝釈天。1629(寛永6)年に創建された日蓮宗の寺院で、正式には経栄山題経寺と称します。これから紹介しますが帝釈堂の彫刻や庭園は必見です。


二天門 【葛飾区登録有形文化財】
1896(明治29)年築。江戸期建築の最後の名匠と名高い坂田留吉を棟梁として造られた総欅造りの豪壮な門で、日光東照宮の陽明門を模したと云われます。


大鐘楼
1955(昭和30)年築。総欅造で、高さ約15m。映画「男はつらいよ」では必ず大鐘楼の効果音が挿入されています。

祖師堂(本堂)
元々は帝釈堂として使われていたものを、明治になって本堂として移したもの。1979(昭和54)年に大改修されています。

大客殿 【東京都選定歴史的建造物】
1929(昭和4)年築。北側はガラス障子の広縁を巡らし、中央には物見台が設けられ名庭邃溪園に対面しています。頂経の間にある「日本一の大きさ」を誇る大南天の床柱は必見。


邃渓園
1972(昭和47)年造園。名前は庭園の滝の風情が幽邃でもの静かであることに由来。

帝釈堂 【葛飾区登録有形文化財】
坂田留吉棟梁が仕上げた総欅造りの建築で、堂の周囲を法華経説話に取題した彫刻をめぐらしているのが特徴。

帝釈堂 【葛飾区登録有形文化財】
これらの彫刻は1934(昭和9)年に完成したものです。

塔供養の図 (金子光清作)

三車火宅の図 (木嶋江運作)

慈雨等潤の図 (石川信光作)

法師修行の図 (横谷光一作)

多宝塔出現の図 (石川銀二朗作)

千載給仕の図 (加府藤正一作)

龍女成佛の図 (山本一芳作)

病即消滅の図 (今関光次作)

常不軽菩薩受難の図/法華経功徳の図 (小林直光作)

法師守護の図 (加藤寅之助作)


○山本亭

 柴又帝釈天の奥に位置する山本亭は、カメラ部品メーカーである合資会社山本工場の創立者、山本栄之助氏の住居として大正末期から昭和初期にかけて増改築したもので、書院造を持つ和風の居間とステンドグラスが美しい洋室を持つ和洋折衷の邸宅です。
 元々は1923(大正12)年の関東大震災まで鈴木家の瓦工場だったものを取得したものです。
 1988(昭和63)年からは葛飾区の所有となり、1991(平成3)年4月から一般公開されています。なお、葛飾区登録有形文化財です。



長屋門
石造りの長屋門で、守衛用の控室にはステンドグラスの窓がはめ込まれています。


旧玄関
長屋門の先を抜けた場所にある玄関で、往時は客人はここから入り、右手奥の鳳凰の間へ案内されていたようです。


鳳凰の間
山本亭唯一の洋室で、寄木を用いたモザイク模様の床、白漆喰仕上げの天井、ステンドグラスの窓が特徴。


玄関
裏手にある玄関から室内へ入ります。





土蔵
2階建てで、山本亭で最も古いと云われています。

庭園
270坪の典型的な書院庭園で、米国の日本庭園専門誌「Sukiya Living ランキング調査(2016年)」で、第3位に評価されています。

○寅さん記念館/山田洋次ミュージアム


寅さん記念館は、1997(平成9)年11月16日に開館した映画「男はつらいよ」のセットである「くるまや」「朝日印刷所」や、作品や帝釈人車鉄道などの資料を再現展示した記念館で、正式名称は葛飾区観光文化センター内葛飾柴又寅さん記念館。2012(平成24)年には山田洋次ミュージアムも開館しています。
2022(令和4)年4月9日にリニューアルされました。


実際の撮影に使用した「くるまや」のセットを大船撮影所から移設しています。


タコ社長の朝日印刷所が再現され、本物の活版印刷機も展示されています。


寅さんの実家「くるまや」を1/16のスケールで再現しています。

「わたくし生まれも育ちも葛飾柴又です」コーナー。昭和30年代の帝釈天参道のまち並みを遠近法を用いて、精巧に再現したジオラマです。

思い出に残るなつかしの駅舎


京成電鉄金町線の前身である帝釈人車鉄道の客車を再現しています。


寅さんが愛した鈍行列車の旅。旧型客車オハ35形を再現した車内では、窓に「男はつらいよ」で鉄道が登場する映画の名場面が投影されます。

山田洋次ミュージアム。2022(令和4)年のリニューアルで、松竹大船撮影所のジオラマが設置されました。



○矢切の渡し


寅さんミュージアムのそばを流れる江戸川では、江戸時代初期から地元民専用に使われた渡船である「矢切の渡し」に今も乗ることが出来ます。徳川幕府が設けた利根川水系河川15ヶ所の渡し場のうちのひとつで、松戸市下矢切と東京都葛飾区を結んでいます。

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