旧山崎家別邸〜埼玉県川越市〜


 川越伝統的建造物群保存地区の東に位置する旧山崎家別邸は、1925(大正14)年に川越の老舗菓子屋「亀屋」の五代目である山崎嘉七氏の隠居所として建てられました。
 設計したのは辰野金吾の弟子である保岡勝也で、川越では1918(大正7)年に第八十五銀行本店(のち埼玉りそな銀行川越支店)の設計を担当。当時、五代目の山崎嘉七氏が第八十五銀行の副頭取を務めていたことから、設計を依頼したと考えられています。
 母屋は、木造モルタル仕上げ洋風屋根葺の洋館で、1階は吹付モルタル塗り、2階は細い横目地の磨き壁であるのが特徴。また、土蔵と和室棟が室内で接続。中でも和室は数寄屋造りで、主な柱は全て磨き丸太が使用されています。
 さらに、茶室を含む和風庭園も保岡勝也が設計しており、和風と洋風の生活様式の統合を体現する建物として、我が国における住宅の近代化の過程をよく示しており,高い歴史的価値を有しているとして、2019(令和元)年に国の重要文化財に指定されました。
(撮影&解説:裏辺金好)

○地図



○風景


玄関

こちらは洋室側の玄関


客室(応接室)
西側は天井を下げ、ステンドグラスを入れた上下窓になっているのが特徴です。

食堂と準備室
客室の東側にあり、食堂は6畳の広さ。北側にある準備室は3畳の広さで、食堂との境に飾り棚を兼ねたステンドグラスをはめ込んだ窓があります。


勝手口





客間
数寄屋造で、8畳の広さに下り壁を介して北側の1畳が加わった9畳の間です。柱は全て吉野杉の磨丸太で、壁は薄い緑色の京壁になっています。


居間
日常で最も使用された8畳の部屋です。


ベランダ(サンルーム)と児童室
東南の角にある4.5畳の板の間で、南側と東側にガラス入りの建具が入ります。北側は児童室として、この別邸を訪れた孫のための部屋であったといわれます。








庭園
庭園に造詣が深かった保岡が細かく指示をして作庭したものです。

茶室
仁和寺(京都)の我前庵を模した2畳半台目の茶室です。

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