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○国立天文台三鷹キャンパスとは? |
東京都三鷹市大沢にある国立天文台。江戸幕府天文方の浅草天文台が発祥で、東京帝国大学内の天文台、港区麻布の東京天文台を経て、1914(大正3)年〜1924(大正13)年に現在地へ完全移転しました。我が国における天文学研究の共同利用センターで、戦前より数々の天体観測と重要な発見をしています。近年では広報活動の一環として施設の一部を常時一般に開放しており、特に第2土曜日の前日(金曜日)と第4土曜日には社会教育用望遠鏡を使って、事前申込み不要の天体観測会も行われています。
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1.太陽系の惑星を歩こう |
というわけで今回は国立天文台三鷹キャンパス。見所は色々ありますが、個人的に一押しなのが太陽系ウォーキングと呼ばれるコーナーです。なんと、太陽、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星の特徴や探査の歴史をパネルで見ながら、それぞれのパネルの距離を実際の惑星どうしの140億分の1で並べることで、その距離感をお手軽に体験してみようというコーナーなのです。てなわけで、左にパネル、右側にその横から見た写真を並べましたので、疑似体験していきましょう。パネルに書かれている内容も、少しばかりピックアップしてみました。
なお、地球から土星まで、仮に歩いていくと4万年、リニアモーターカーで350年、惑星探査機ボイジャーで3年かかります。また、文中にでてくるAUという単位は、日本語で天文単位と言いまして、1天文単位=約1億5000万キロメートル=地球と太陽の距離である1AUが基準です。 |
太陽 The Sun
・直径 139万2000km ・質量(地球を1とする) 332946 ・赤道重力(地球を1とする) 28.01 |
・表面温度 光球6000度 黒点4500度
・太陽の爆発的なエネルギーは4個の水素原子核が、1個のヘリウム原子核にかわる核融合反応で生み出されます。あと50億年は輝き続けるとか。 |
水星 Mercury
・直径 4880km/太陽から5800万km(0.39AU) ・質量(地球を1とする) 0.0553 ・赤道重力(地球を1とする) 0.38 ・衛星数 なし |
・温度 昼は430度 夜はー170度 大気殆ど無し。
・クレーターのような窪地に氷があるかも。 ・太陽に近すぎるため、地球からは日の出直前か、日の入り直後の僅かな時間しか観測できない。また、探査はマリナー1号が行ったのみで多くが謎に包まれたまま。 |
金星 Venus
・直径 1万2104km/太陽から1億800万km(0.72AU) ・質量(地球を1とする) 0.8150 ・赤道重力(地球を1とする) 0.91 ・衛星数 なし |
・温度 表面は500度。
・太陽系で唯一自転が逆向き。理由は不明。 ・1962年のマリナー2号など20の探査機が訪問。1989年打ち上げの探査機マゼランによって玄武岩質の岩石による荒涼とした表面が明らかに。また、火山活動跡も発見。 |
地球 Earth
・直径 1万2756km/太陽から1億5000万km(1AU) ・質量 5974×10の24乗kg ・衛星数 1 |
・月は1年間に約3.8cmずつ遠ざかり、地球の自転はほんの少しずつ遅くなっているとか。そのため、9億年前の地球は1日が18時間だったそうですね。
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火星 Mars
・直径 6794km/太陽から2億3000万km(1.52AU) ・質量(地球を1とする) 0.1074 ・赤道重力(地球を1とする) 0.38 ・衛星数 2 (フォボス、ダイモス) |
・大気が殆ど無いため、赤い地肌(赤い鉄さびで覆われている表土)がそのまま見えます。
・衛星フォボスは火星に近いところを回っているので、火星の潮汐力によって火星に衝突するか、破壊されて環になる可能性があります。 |
木星 Jupiter
・直径 14万2984km/太陽から7億8000万km(5.20AU) ・質量(地球を1とする) 317.83 ・赤道重力(地球を1とする) 2.37 ・衛星数 61 (2003年11月現在) ・太陽系で最も大きく、平均密度や組成が太陽に似ています。今の100倍の質量があれば、太陽になれたかも知れない、太陽になり損ねた惑星です。 |
・火星と木星の距離がとにかく凄いですね。ガンダムで木星の話が出ることがありますけど、これは移動が大変そう・・・。
・非常に多くの衛星がありますが、ガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星は、1610年にガレリオが発見し、木星を回る様子から彼は地動説を確証したそうです。 ・ガリレオ衛星のうち、イオは活火山が多くあり、エウロパは氷の下に海が広がっている可能性があり、もしかしたら生命がいるかも?もと考えられています。 |
土星 Saturn
・直径 12万536km/太陽から14億3000万km(9.55AU) ・質量(地球を1とする) 95.16 ・赤道重力(地球を1とする) 0.94 ・衛星数 31 (2003年11月現在) ・現在土星には探査機カッシーニが、さらに衛星のタイタンにホイヘンスが到着し、数多くの重要な発見をしています。 |
・太陽系ウォーキングはここで終わり。
・太陽系で最も密度が低く、もし土星が入ることの出来る超巨大なプールがあると、土星は浮いてしまうそうです。 ・土星の特徴である丸い「環」は、1000本以上の環の集合であり、それぞれ数p〜数mの小さな氷や水の粒子で出来ています。また、環の厚みは数百m程度と意外に薄く、15年に1度、地球からは全く見えないことがあります。 |
海王星 Neptune
直径 4万9528km、太陽からの距離は45億440万km(30.11AU)と、太陽〜土星の約3倍以上の距離。 質量(地球を1とする)は17.15 赤道重力(地球を1とする) 1.11、衛星は11. 1864年、ガレが発見。大気の成分の1つであるメタンが赤い光を吸収するため、青く見えます。 |
140億分の1でさえ、気軽にウォーキングできそうなのは土星まで・・・なので、というか用地の問題から、天王星から先はパネル1枚での紹介でした。折角なので少し紹介します。
天王星 Uranus 直径 5万1118km、太陽からの距離は28億7500万km(19.22AU)と、太陽〜土星の約2倍の距離。 質量(地球を1とする)は14.54 赤道重力(地球を1とする) 0.89、衛星は21. 1718年、ハーシェルによって偶然発見された惑星で、土星の外にも惑星があることが実証。かつて大規模な衝突があったため、自転軸が大きく傾いています。 冥王星 Pluto 直径 2274km、太陽からの距離は59億1500万km(39.54AU)と、太陽〜土星の約4倍以上の距離。 質量(地球を1とする)は0.0023 赤道重力(地球を1とする) 0.07、衛星は1 (カロン)。 1930年にトンボーが発見した惑星(・・・だったのが、2006年に正式な惑星から外されてしまいました)。冥王星の半分以上を持つ衛星カロンをもっています。また、冥王星にはメタンの水、カロンにはエタンの水があることが、望遠鏡「すばる」によって確認されています。 |
2.近代建築&おまけ |
国立天文台三鷹キャンパスには、戦前から最近まで天体観測に使われていた3つの近代建築があります。
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国立天文台 大赤道儀室 【国登録有形文化財】
1926(大正15)年築。東京帝国大学営繕課が設計した2階建て鉄筋コンクリート造りの建物。主に土星の衛星や、星の位置観測に使われました。望遠鏡は、屈折望遠鏡としては国内最大の口径を誇る65cm(ドイツ ツァイス製)。現在は、日本の天文台の歴史などを展示・解説。 |
国立天文台 第一赤道儀室 【国登録有形文化財】
1921(大正10)年築。東京帝国大学営繕課が設計した平屋建て鉄筋コンクリート造りの建物。1939年から60年間にわたり、主に太陽の黒点スケッチ観測に使われました。望遠鏡は、口径を誇る20cm(ドイツ ツァイス製)。 |
国立天文台 太陽分光写真儀室【国登録有形文化財】
1930(大正5)年築。東京帝国大学営繕課が設計した地上5階、地下1階の鉄筋コンクリート造りの建物(地下は大正15年築)。通称アインシュタイン塔と呼ばれ、ドイツのベルリン市郊外にあるポツダム天体物理観測所(アインシュタイン塔)と形態が似ていることから呼ばれるようになりました。 上2つと違いこちらは内部非公開。もう少し綺麗に修繕すれば見栄えがするのになあと感じます。 |
おまけとして、将来の火星基地予想模型。国立天文台内にあるコスモス会館にて展示されています。さてさて、実際に火星に基地を作ることになった場合、どんな感じになるのでしょうね。
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3.おわりに&交通アクセス |
常時、一般に公開しているのは、これらの施設と小さな展示室(「すばる望遠鏡」の特徴と魅力を解説)です。重要な見所は多い反面、正直、展示内容自体はまだまだ少なく、特に説明もなく専門用語が書かれているなど、公開施設としては不十分です。しかし、積極的にアンケートを採っているので今後に大きく期待したいところ。また、定例観望会には是非行ってみたいですね。
さて、交通アクセスですが以下の通り。バスが1時間に何本も来るので、非常に多いので便利です。 JR武蔵境駅より (所要時間約15分) 小田急バス 境91「狛江駅北口」/「狛江営業所」行き 武蔵境南口3番乗り場より乗車、『天文台前』下車。 京王線調布駅より (所要時間約15分) |