考古学レポート4 草創期@土器の話
担当:大黒屋介左衛門
1.はじめに
土器です。この遺物は考古学の研究上とても重要な位置を占めています。
なぜならこの遺物は非常にさまざまな情報を内在しているからです。
2.土器編年について
これは、土器の持つ情報、そのもっとも端的なものは時代の指標です。土器はその胎土、紋様、製作技法、焼成温度、出土時の層位などからいつごろの製作なのかを示してくれます。
これらの蓄積されたデータを元に表されるのが土器編年です。
前回のレポートで考古学の基本は相対年代だと記述しました。この相対年代というのは、
・Aという型式の土器が上
・Bという型式の土器が下、という位置関係で出土したと仮定します。
ここでこの遺跡が後世の撹拌を受けていないとすればBの型式はAより古いと認識する、これが相対年代です。
実際にはこのほかにも土器の持つさまざまな情報を元に型式ひいては年代を決定していくのですが、基本的にはそういうことになります。この編年の研究には土器を型式分類していくことが基本となります。この型式分類というのは土器の研究のみならず、考古学研究すべての基本となりほかのすべての遺物、遺構ひいては遺跡においても型式分類というのは研究の基本であり非常に重要なものとなるのです。
この型式学的研究法はスウェーデンの考古学者H.ヒルデブラント、O.モンテリュウスによって1870年代に相前後して発表されたものです。日本の土器編年の研究は近代考古学のはじまりと同時に開始され、山内清男をはじめとする多くの研究者によって大枠が固まり、現在においてもなお研究が継続されております。
土器が編年の材料になっている理由はこの遺物が各地域に普遍的に存在し、かつ資料が多いためです。したがって土器の登場する以前の旧石器になりますと編年の指標となるのは石器となります。
3.絶対年代について
相対年代の話が出てきたのでその対照となる絶対年代について言及しておきます。
絶対年代というのは相対年代が型式の新旧関係のよって決定されるものであるのに対し 、暦年代など絶対的な時間的位置をしめす編年を言います。といってもここで話の本題になるのは暦年代ではなく理化学的年代測定法が本題です。
理化学的年代測定法は1950年以降より発達し考古学に大いに貢献します。ではいくつか類例を列挙します。
@地学的証拠に基づく年代測定法火山灰などを理化学的年代測定や、文献記録などにより堆積した年代を明らかにする。
ご存知のとおり日本は火山列島で広域に降灰した火山灰は時代の指標となりえます。理化学的測定に文献記録などを組み合わせると非常に有効です。
A放射性炭素年代測定法
ポピュラーな年代測定ですね。放射性炭素の半減期に基づいて年代を決定します。欠点は5〜6万年が限界、放射性炭素の減少がその年によってまちまちであるため誤差が大きい、遠い過去になると古い値が出やすいなどなど・・・。よく使われるだけにいろいろ欠点があります。
Bカリウム=アルゴン法
日本ではあまり使われません。したがってよくわかりません(無責任)。
Cフィッション・トラック法
50000年以上前にさかのぼる際にしばしば使われるようです。ウラニウムがどうとからしいのですがよくわかりません(無責任)
D年輪年代法
年輪の幅によって伐採された年代を測定します。樹種ごとに詳細に研究がなされ、たしか2000年くらいなら割と正確に出せたはずです。弥生時代と古墳時代の境、ちょうど卑弥呼の時代ではよく登場します。
ここから先は名前だけ詳細はよくわかりません。すいません。
E熱ルミネッセンス法
F黒曜石水和層測定法
まあ、いろいろ理化学的測定法があるわけなんですが、これらがあらわすのは確率統計 的年代なわけで暦年代のような絶対的年代とは異なる別物なわけです。また、それぞれ欠点と長所があり、用いるのに適性があるので絶対視は慎むべきものであります。でないとトンデモ科学の温床になっちゃいますからね、考古学。
またほかにも弊害がありまして、例えば現在確認されている最古の縄文土器(理化学的測定法による)は、青森県大平山元T遺跡出土の無文土器なんですが新聞の見出しでは測定値の最大値が発表されました。本来なら測定値の平均が出されるべきなんですが、こういうのはインパクトのある見出しが出がちですからねえ・・・。
長くなりましたがとにかくここでいいたいのは、繰り返しますが考古学の基本は相対年代だということ。理化学的測定による絶対年代はあくまで目安ということです。これは何も考古学者が自分の縄張りを死守するためではないですよ。
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