私は高校生のころから同人活動をしていた。
同人活動? 何それ?
という方が多いと思われるので簡単に説明しておきたい。
同人活動とは同人誌を製作し、同人誌の即売会で自分達のつくった同人誌を販売したりすることである。同人誌とはいわゆる二次創作物である。
二次創作物とは・・・ドラえもんを例にとってみよう。ドラえもんは毎年映画をやっているが、中国が舞台になったのは「のび太のパラレル西遊記」だけである。自分はドラえもんが好きで、なおかつ中国史が好きである。そこで中国を舞台にしたドラえもんの話を自分でつくってみたい・・・ということで、「のび太の水滸伝」というタイトルでマンガ、もしくは小説で自分の考えたドラえもんの話をつくったとしよう。それを本にまとめたものが同人誌である。本来は「ドラえもん」というキャラクターの使用許可とかをとらないといけないのだが、流通経路にのって販売される商業誌でなく、個人レベルで楽しむ同人誌なので大目にみられているところがある。
つまりは自分が好きなアニメやゲーム、マンガのキャラクターを使って自由に話をつくり、表現したものということである。
一次創作というのは元のアニメやゲーム(ドラえもんとか)のことで、二次創作というのは一次創作物のアニメやゲームを題材にして作品を作るという意味である。元の作品の話をそのまま流用した複製品ではないのでパクリというわけではない。(キャラクターを使うのはパクリだろといわれればそれまでですが)作品の形態は同人誌の「誌」の字が本の意味であるということからも分かるように、マンガや小説が主流だが、中には動画やゲームで表現する人もいるから驚きだ。この場合は同人動画や同人ゲームという。
そして、同人誌即売会(コミケとかイベントと呼ばれる)に、自分達でつくった作品を持ちよって販売したりするのだ。即売会では事前に自分達の出店スペースを予約してそこに店をだす。フリーマーケットのような感じだと思っていただければいい。
出店スペースはだいたい同じジャンル(ドラえもんやガンダムといった具合に)でまとめられている(予約の時にジャンルをきかれるのだ)ので、来場した方は自分が好きな作品の同人誌を簡単に探すことができるというわけだ。
ちなみに、同人活動は個人でする場合もあるが、何人かで集まってグループを形成して活動することが多い。一冊の本をつくる際に、一人ではなかなかページがうまらないが、何人かいれば皆で原稿をもちよって一冊の本をつくるページ数を確保できる。また、出店の手続きや印刷所の手配など面倒な雑務が分担できたり、本以外にもラミネートカードや便箋などの商品もつくったりするので、人数が多いほうが商品の点数が増えて出店スペースが賑やかになるという利点もある。それに何より互いに励ましあったり、ハッパをかけあったり、他人の作品から刺激を与えられたりする。一人でやっていると原稿の締め切りなどあってないようなものだが、何人かいる場合、自分の原稿提出が遅くなれば本の発行ができなくなってしまったりして他の人間に迷惑をかけることがあるので、緊張感が生まれる。
この同人活動のグループのことをサークルと呼ぶ。大学のサークルと同じで同好会くらいの意味だ。ちなみに個人でやっている場合は個人サークルという。本来なら個人サークルという言い方はおかしいのだが、日本語は便利である。
前置きが長くなってしまった・・・。「デジヲ伝」の原付ライダーは実は私の同人誌サークルのメンバーだった男なので(だったというのは、現在このサークルは解散してしまっているのだ)、デジヲ伝のふしぶしに同人活動の話がでてくる。ゆえに予備知識として同人の話にふれておいたというわけである。
私は大学生になっても引き続いて同人活動をやっていた。
高校のころから一緒に同人活動をやっていた男・・・私は彼を敬意をこめて師匠と呼んでいたが、大学にはいってもう一度、水滸伝を読み直した時に、「ロシュンギ」という漢(おとこ)の渾名「玉麒麟(ぎょっきりん)」がえらく気に入ったので、彼のことを玉麒麟と呼んでいた。本人は嫌がっているそぶりをみせていたが、恐らく照れ隠しだろう。玉麒麟とは大学が一緒だったので同人活動とともにサークルも継続していた。
私は絵がたいして上手くなかった。
同人即売会というのは話の内容よりも絵という世界である。サークルは無数に出店していて、同人誌も無数にあるので自分の気に入ったものを探すというのは大変である。そこで、人々は本の表紙の絵をみて上手いか下手かをまず見る。上手いと思ったら手にとってみて中をみてみる。表紙だけ上手い人が描いているという場合もあるし、表紙だけ力がはいっているという場合もある、話の内容はどうだろうか・・・。そして購入するかどうかをきめる。
その為、表紙の絵が下手だとそれ以上の段階(手にとって内容をみてもらう)になかなか進んでくれないのだ(販売員に営業のセンスとかがあれば別だが)。
私は同人誌活動に興味があった・・・、それはマンガがかきたいという目的ではなく、金になると思っていたからである。しかし、絵が下手では・・・。そんな折、絵が上手い玉麒麟から同人サークルやろうぜという誘いが来た。私は彼と組めば彼のおこぼれにあずかれるだろうと思い、手を結んだ。非常に不純な動機である。高校生のころは金がなかったのである・・・。
そして、月日は流れ大学の二年生の頃か・・・「デ・ジ・キャラット」というアニメが好きな男とめぐりあうことになる。「デ・ジ・キャラット」の主人公は「デジコ」という少女なので、私は彼のことを「デジヲ(発音はでじお)」と呼ぶことがあった。彼は「デジヲ」と呼ばれると嫌がったが恐らくパフォーマンスだろう。
この男・・・後に私に原付の可能性を示してくれる男になる・・・。
この時点でそのことを知る由は私にはなかった・・・。