第五十話 危険予測ディスカッション

 二輪教習の第二段階も卒業検定まで数回を残すのみとなった。


 今日の教習は危険予測ディスカッションである。思い出せば自動車教習のときにも同名の教習があり、その時は一台の車に教官一人と教習生三人が乗り込み路上教習を行い、その後、自動車学校の講堂で運転の反省(安全面における)をした。



 しかし、バイクは二人しか乗れないし、そもそも、二人乗りは免許を取って一年以上経過しないと出来ないのだ。


 ということで、二輪教習における危険予測ディスカッションはシュミレーターを使って行われる。教官一人と教習生三人で行われ、一人がシュミレーターを使って運転しているのを残り二人が観察し、危険な運転ではないかと思われるところを指摘しあうのである。




 一番最初にシュミレーターに座ったのは私。一番年が若かったためだ。若者は失敗してもオッケーということらしい。


 シュミレーター教習は今回で三回目。シュミレーターの操作方法にも慣れ、少し調子に乗って運転をしていた。路肩にトラックが停車してある道に差し掛かり、ウインカーを出してトラックを追い越す。


 ん・・・。なんか、いやーんな予感が・・・。


 少しスピードを少し緩めて進むとトラックの前から人が飛び出してきた。私は急ブレーキ気味に停止。


(やっぱりか!)


 そう、これは今までの運転技術の向上を目的としたシュミレーターではなく、危険予測ディスカッションのシュミレーターなのだ。イヤらしいトラップ満載のシュミレーターなのである。




 なんとか事故をおこさずにシュミレーターをクリアすることの出来た私だったが、トラップに対応するために急ブレーキを何度か使ったのと、操作に慣れ、雑に運転していたため、他の教習生から指摘をうけるハメになってしまった・・・。勿論、後の二人は私のシュミレーションをみた後なので、難なくクリアしたのはいうまでもない。



 危険予測シュミレーションに続いて急ブレーキのシュミレーションも行った。


 最初はパイロンの横を通過したら急ブレーキをかけるという、いつも教習で行っている急ブレーキ、これは難なくクリア。次に障害物があったら止まるシュミレーションへうつる。



 林道をまっすぐバイクを走らせる。すると前方の木の間からトラックが道を塞ぐようにでてきた・・・。スピードを落として進むとトラックは道を横切っていったので、再加速して進む。何度か同じようにトラックがでてくるので、その都度速度を落として進む。



 しかし・・・、これが大きなトラップだったのだ・・・。


 木の間からトラックが出てきた。私はいつものように速度を落として対応・・・すると、前方を通り抜けるはずのトラックが目の前で停止してしまった! 通り抜けるだろうと思っていた私はまさかの事態に対応が遅れ、急ブレーキをかけたものの敢え無く激突! 障害物ってこのことだったのかーーッ!! 後の二人は先ほど同様に私のシュミレーションをみた後に全く同じパターンのものをやったので難なくクリアしていた。ちょっと釈然としない思いだった・・・。




 危険予測ディスカッションは自動車教習の危険予測ディスカッションと同じく二時間構成になっていて、二時間目は公道を運転をするときの危険について教習生と教官で話し合いをする。自動車教習の時は一時間、話をもたせないといけないので、どんどん話を膨らませてと教官が言って、一時間、公道での運転の注意点について話し合ったが、今回は危険な運転についての話は要点を話し合って早々に切り上げ、残りの時間は運転技術や卒業検定についての質問の時間となった。




 私も他の教習生も我先にとばかり質問を教官にぶつける。質問がでるというのはそれだけ主体的に教習に取り組んでいるということなのだろう。半分、イヤイヤで受けていた自動車教習との差異に心の中で苦笑いをした。


 しかし、人前で物怖じせずに質問できるようになったとは、私も変わったなあ・・・。





棒